五景

ベンチで泣き崩れている五十嵐

やってくる玉村

玉村頭を撫でる

払い除ける五十嵐


五十嵐 貴様はとんでもないことをしてくれた。

玉村 ごめんなさい。

五十嵐 貴様は何をしたいのだ。

玉村 貴方と一緒にいたい。

五十嵐 俺は何もない。絶望だ。

玉村 死なないで。生きてください。

五十嵐 どの面を下げて言うのだ。俺は辛い。全て貴様のせいだ。

玉村 ごめんなさい。

五十嵐 謝って傷つけられた関係が修復するとでも。許されることも慰められることもない。地獄から救ってくれ。

 

玉村、再度頭を撫でようとする

五十嵐、払い除ける


五十嵐 近づくなこのゴミめ。お前なんか死んじまえ。

玉村 いずれ死にます。今はあなたを慰めたい。

五十嵐 悪魔め。外道め。なんなのだ。これは。全部夢か。そう信じたい。

玉村 かわいそうに。あなたの悲しみが少しでも慰められたなら。

五十嵐 笑わせる!

玉村 私はもう二度と貴方に近づけないの。

五十嵐 当たり前だろ。

玉村 ごめんなさい。私はそれでも近くにいたい。

五十嵐 ゴミめ。


五十嵐、震えが止まらない

しばらく間

玉村、ダンテライオンを歌う


五十嵐 穢らわしい歌だ。


玉村、歌い終わってから


玉村 穢らわしいかもしれないけれど、それでも私は歌います。汚れても生きます。それが私。

五十嵐 そりゃあよかった。お好きに生きてください。僕は存じ上げませんので。


玉村泣く


五十嵐 うるさい。泣くならここから離れろ。目障りだ。

玉村 どうしてこうなるの。

五十嵐 俺が聴きたいんだ。それを。

玉村 生きているのが辛いならせめて慰めあいましょうよ。

五十嵐 そりゃあいい。貴様以外の誰かと慰め合うこととする。


暗転

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