三景

三景


暗闇の中

LINEの着信音


五十嵐 あぁ。今から向かうよ。うん。琳はぐっすり寝ている。この子は一度寝ると朝まで起きない。うん。待ってて。いつもの場所で。


ゆっくり明転

夜の公園

五十嵐と玉村がベンチに座っている


玉村 ずっとあいたかった。

五十嵐 何故また帰ってきた。

玉村 貴方と逢いたかったから。

五十嵐 自分が何をしたのか忘れたのか。

玉村 許してなんていわない。私は貴方といたいの。

五十嵐 難しい。僕は今琳と一緒に暮らしている。

玉村 構わない。

五十嵐 僕が難しいのだ。

玉村 なら。どうして。逢ってくれるの。

五十嵐 話さなければ気が済まないのだ。

玉村 相変わらず厄介な生き方しているのね。

五十嵐 こうでしかいられなくてな。

玉村 かわいそう。


玉村、抱きしめようとするが拒否される


玉村 受け止めてくれないのね。あのときみたいに。

五十嵐 君があのとき僕を裏切っていなければ良かったのだ。君は僕とのイノセンスに傷をつけた。

玉村 作品は全く書けていないの?

五十嵐 当たり前だ。僕の詩人としての生命は君に裏切られてこときれた。


玉村、泣き始める


玉村 ごめんなさい。私、とんでもないことを。

五十嵐 今更慰められたところでどうにもならん。全ては終わったことなのだ。

玉村 私、貴方のことが好き。あなたの作品も好き。なのに、傷つけてしまった。

五十嵐 愛と傷は切り離せない。わかっている。しかし認め難いことはある。

玉村 やり直せないのかしら。

五十嵐 無理だ。

玉村 やり直したい。

五十嵐 不可能だ。

玉村 あなたを抱きしめたい。

五十嵐 必要ない。僕はもう君を愛せない。

玉村 構わない。ただ一緒にいて。ただ抱き締めて。

五十嵐 しつこいなぁ。うざってぇよ。

玉村 何をいわれてもいい。あなたのことが好き。大好き。

五十嵐 琳から君のことを聴いて驚いたよ。運命を呪った。いつかこうなることは分かっていた。だから俺は揺らがない。ずっと考えてきたから。

玉村 私も琳姉さんから話を聴いて驚いた。貴方とは離れることはできないことを知ってしまった。

五十嵐 諦めなさい。此れが人生だ。自分で創成した壁に苦しみなさい。僕が君に裏切られて苦しんでいるように、君も僕に遠ざけられることで苦しむのだ。

玉村 なんとかできませんか。

五十嵐 諦めなさい。話はこれまでだ。もう二度とこのような話はしない。僕たちはこれからは初めて出逢ったように話をするのだ。

玉村 そんなの嫌だ。悲しい。

五十嵐 君が琳と僕の関係に水を差すならば、僕は君を赦さない。

玉村 なぜ。なぜ。

五十嵐 君の罪、罰だ。考え続けなさい。独りで。


五十嵐、退場


暗転

スクリーンにLINE


文字 姉さん。話があるの。

文字 なに?

文字 大切なお話。

文字 怖いな。

文字 直接逢ってお話ししたい。

文字 いいよ。

文字 明日逢える?

文字 うん。

文字 ありがとう


スクリーン暗転

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