第十三話 ~最強の正統後継者エドガー・ワイマーク~
大きな森、目に映るものは全て木。
森の奥にはきっと光が届かない、木が折り重なりすぎて太陽は届かない。
広大な森の右手には、中央付近から縦に両断された山が見えた。
森の手前で騎竜と、幾人かの騎士、兵士が立っている。
「エドガー様、申し訳ございません」
一人の騎士が、立派な鎧の大男に声をかけた。
「状況はどうだ」
赤い髪は天へ向かい、眉間にはしわが寄る。
人の足ほどの太さをした腕には、大きな直剣が持たれている。
クレイモア、二メートルの大剣、エドガーはそれを体と直角に、片手で支えていた。
「奴らは元々この森に陣を敷いていたようです」
「トラップとゲリラ戦術で、進むことが出来ておりません」
「小細工だな、つまらん」
エドガーは、クレイモアを肩に担ぐようにして、そのまま森へ近づいていく。
「森に入った奴はいるのか」
「先行部隊が入りましたが、罠にはめられました」
「あまり減らす気は無かったが、弱い兵隊は必要ない」
エドガーの、クレイモアを持つ手に力がこもる。
次の光景で、森が両断された。
木が両断されたは適切な表現では無かった、全てが両断されたのだ。
森にある全ての木、先行していた兵士、森に潜むカザル兵。
偶然前に立っていた騎竜の首は飛び、報告していた騎士は素早く察知して身をかがめていた。
エドガーの腰より上にあったもの、エドガーの腰より下にあったものは元々一つだった。
不幸にも、エドガーの腰より上にあったものたちは、抵抗できずにエドガーの腰より下へ落ちた。
森は、横に両断されたのだ、エドガーの振るったクレイモアによって。
「おい、後は残党狩りだ」
「は、はひいい・・・、そのエドガー様は・・・」
運と自身の危機感知能力により、生きていた騎士は怯えながらエドガーに答えた。
「剣が使い物にならなくなった、こいつを作らせる」
エドガーは、柄だけになったクレイモアを握っていた。
名工の作り上げた大剣クレイモア、常人では振り回す事さえできないそれ。
作り上げた本人では折る方法など思いつかなかったもの。
それはエドガーの一振りに耐える事が出来ず、根元から折れていた。
折れた先はどこへ行ったのかわからない、人に当たっていれば絶命しているだろう。
「ジェロニアに戻る、後は好きにしろ」
エドガーは柄を投げ捨て、今日まで森と呼ばれていた伐採跡に背を向けた。
「エドガー様、第五周遊隊オルカー、帰還致しました」
「ああ、ご苦労」
ジェロニア王宮、王座に座るエドガーへ、オルカーが帰還を伝えていた。
「それなりに、見込みがありそうな奴らが見つかったようだな」
カール、そしてエリオノールは、オルカーの遥か後方、騎士と兵士の中にまぎれている。
「貴様らは、使える可能性がある」
「もしオルカーやトーレスを打ち負かすような奴が現れたなら、俺が鍛えてやろう」
エドガーは、王座に肘をつきながら笑う。
その光景をオルカーは黙って見つめていた。
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