第五章
第64話 お嬢様野生時代
「鹿行った、鹿行ったよ」
「よっし。足刈れ、足刈れ」
「ウホ」
フランソワが棍棒で鹿を転ばせる。私は
「しゃあオラァ」
ビッツィーがのしかかって、熱烈な
フランソワが鹿のお尻を乱打して勝ちどきを上げる。
私も両手を挙げて喜びを表現した。
「獲ったぞー」
街で買った物は、馬で逃げている間に失って仕舞っていた。
何の補充もできない
でもビッツィーには
そう思いながら山中を
醸造術は料理にもうってつけだ。
筋肉質で固い
「ウホウホ」
「肉、肉」
「鹿酒うめえですわ」
暗くなれば樹上に
夜明けと共に
「ウホウホ」
「肉、肉」
「熊酒うめえですわ」
何度目かに繭を突き破った所で、私は正気に戻った。
「ビッツィー、これから
「そうだった。キャンプが楽しくて忘れてたわね」
「これをキャンプって云う? サバイバルだよこれは」
私たちのキャンプは山中を移動し続けていた。
その事を話しながら朝食を
「ああ
ビッツィーが指を鳴らす。
ビッツィーは新しく作った香水を、私達に振りかけた。
その度トンボ野郎は対応して、すぐに新種の
「また場所を知られたって事だよね」
「すぐに追っ手が来るって訳じゃない」
そう云いながらも、ビッツィーは焼き魚の食べ残しを放って立ち上がった。山の獣がやって来た魚を咥えて行った。
私達は再び山中を歩いて移動し始めた。
馬はもう居ないし車の燃料は節約しなくてはならない。
ビッツィーは
山狩りとの遭遇はビッツィーと
警官隊は
「カルベリィ以降、ずっと開発してきたんでしょうね。それを実戦投入してきた」
「トンボ野郎も近くに来てる?」
「カンだけど来てない。動きたくないのか、動けないのか、コイツは神殿を通して魔術式を送ってくるだけ。やり口で分かる」
「ビッツィー、今、私たちは何をするべき?」
「OSのアップデートが最優先。それで追跡を振り切ることが出来る。他にも方法はあるけど、結局は
「OS?」
「
「分かった。OSのアップデート。次に車の燃料。時間はどれくらい?」
「安全な場所があれば、あと一週間で出来る。山中に居た
「アイ」
「あとオンブしてって」
「
ビッツィーは疲労している。
キャンプなどと云ってはいるが、実は一日中、追っ手とトンボ野郎に警戒し
ビッツィーは続けて云う。
「トンボ野郎は神殿を介して追跡術を送ってくる。同じように山狩りのヤツらも神殿を拠点に行動してる。だから私たちはこうして神殿から離れるよう動いてる」
「目的地はあるの?」
「ある」
とビッツィーは云う。そしてフランソワにおぶさりかかって、
「そもそもフラウ=ナ=ヴエルへ行ければ全部解決なんだけどね」
そう云った。未踏にして永遠の都フラウ=ナ=ヴエル。
「ノリコ、今日って満月よね」
歩き続ける間、ビッツィー何度かそう確認して来た。
やがて、足下に草にまみれたレールを見つけた。廃線になったトロッコのレールなのだと云う。
レールを辿って行くと、山中の採掘跡に到着した。
「ここだ」とビッツィーが呟いた。
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