第三章

第31話 ビッツィーの弁明


「私はね、ノリコ、フランソワ。カルベリィに対して害意がいいがあった訳ではないの」

 デッキチェアに寝そべり、通りすがりのおじさんにビーチパラソルを持たせた状態でビッツィーはそう云った。

「私の生活と云うのはとても簡単でね。良いと思った土地へ留まり、良いと思った事を学び、良いと思うものをって、良い方法できっする。私は上質な生活を心がけているだけ」

 私はこの世界に来てまだ間もない。

 なのでビッツィーの身に着ける際どい水着が、一般的に見てどういう物なのかも知らない。この世界ではこれくらい普通なのだろうか。しかし私が指摘したいのはそういう事ではない。

 ビッツィーは水着の位置を直してから続ける。

「カルベリィの人だって、私から離れれば頭のチャックふさがるし、お酒に変えたのだって頭の一部分だけ。脳には修復能力があるから、飲んだ分は修復させるよう最初から処置してあるわ」

 ビッツィーは足を組み直した。

 風が吹いて、パラソルがバタバタ揺れた。魚のうろこがキラキラ舞って、ビッツィーのむき出しのおへそに貼りついた。

「ビッツィー、ここ漁港だよ」

 私は云い、

「アイ」

 とフランソワも云った。

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