第93話

現在、真夜中にて派手な忍術を試す訳にはいかない。

だが忍術ってぇのはだ、実に地味な術も多かったりする。


まぁ、元々が忍ぶのが本職だからな。

潜伏したり、辺りを伺う術などがメインだったりするんだわ。


ってもな、忍術にて発動する術の多くが、ディサピィルトーカー能力の劣化番なので意味がなかったりする。


だが、その中で有能なのが幾つかな。


1つは万華眼。

意識を向けた先を透視しつつ、遠距離を見る術らしい。

しかも複数を同時に、切り替えながらな。


だが、複数の視点を扱うのは至難の技らしい。

これが使えたら、遠方より安全に偵察可能となるため、是非とも修得したいものだ。


これに対をなす術が、遠多聞えんたもん の術だな。

安易な術名だが、名の通り遠くの音をも複数聞き取る術らしい。


万華眼と遠多聞の両術が扱えたら、大概の情報を、容易く得られるだらう。


次が影潜りって術だな。


これも名の通りに、影へと潜る術らしい。

らしいが…本当に、そんなことができるのか?


影関係では、影縛りに影操り、そして影斬りか…


どれもイメージができんのだが?


そして多重分身。

残像ではないぞ。

その程度なら俺でもできるからな。


己の肉体を別に創りだし、行動させるらしい。

しかも写し身たる分身には自我があり、独自に行動を。

ただし、離れていても意識すれば、分身から情報を得られるのだとか。


これらならば、真夜中の今でも修得を試みても迷惑にはなるまい。

修得できるかは、別としてだがな。


どれも修得できるとは、思えない術ばかりだが、この中なら万華眼だろうか?


印の図案を頼りに術を試みる。

みたが…まったく反応しないな。


絵図を頼りに印を結ぶだけでは、やはりダメか。

取り敢えず、説明文を読み直すかな。


麟を印にて眼に集めよ。

ただし、ゆるりと慎重に。

雑に行えば、即ち光を失うであろう。


才なき者は諦めよ。

光なき道を進むは愚かなり。


なぞなぞか?

っか、麟って何ってな。

まずは、これが分からんと、万華眼は修得不可能な訳ね。


なら、別の術を…

全ての術に、麟が関係してましたとさ。

修得できるかぁぁっ!


っと、待てよ?

簡単かつ不要って避けた術に、なにかしらの記載があるかも。


そう思い、壁立ちの術をな。


え~なになに。


チャクラにて燐を練り、麟とせよ。

その麟を印にて経絡を介し足裏へと導くのだ。

さすれば、術の兆しが現れよう。


兆し現れし時、麟にて足裏を壁へと吸着できれば、術へとなるであろう。


あー、もしもし?


チャクラって…なに?

っかさぁ、燐って、麟と違うリンが出てきたんですが?


どこかにチャクラのことと、燐について書かれてないかな?

しばらく探したが、無さそうだ。


どうも術を修得する前に身に付ける基礎らしい。

それができて、初めて忍術を覚えることが、できるのだろう。


今夜は、ここまでだな。

俺は、借りている客間へと。


瞬眠の指輪にて疲れは取れてはいる。

いるのだが…やはりベッドにて休む方が、気が休まるみたいでな。

まあ、娯楽のようなものやもな。


数時間ほど寝て目覚める。

うん、朝だな。


ベッドで寝ると目覚めも良い。

寝間着より着替え、朝の身支度を。


ミーシャちゃんが迎えにきたので、食堂へとな。


食堂へと入ると、ロンダルトさんが新聞を読んでいた。

っか、なんだか不機嫌なんだけど…なんかあったのかな?


「おはようございます」ったらな。

「うむ、おはよう」って返してくれる。


一応、挨拶を交わす程度は可能みたいだな。


「なにかあったんですか?」って、思わずな。

「なにか変かね」

いや、そう返されても…


「ダリル君、おはよう。

 この人ったら、自分が里長に選ばれたって、不機嫌なのよ。

 どう思う?」


いや、どう思うって問われてもなぁ~


「里長の仕事って、大変なんですか?」

不機嫌になるくらいだから、大変だとは思うが…前里長が務まった程度なんだから、ロンダルトさんなら楽勝だと思うんだけどな。


「いえ、普段はすることはないわよ」って、サマンサさんがな。


いや、することないって…どういうことよ、それ?


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