第83話

文献について言及しても意味はないので、話題を変えるとしてだ。

っと思ってたらな。


「それはそうと、マユガカの現状なんだがね」


ロンダルトさんから話題を変えてきたわい。


「思った以上に、森中に棲息圏が広がっていましたね。

 いたるところからマユガカが現れるので参りましたよ。

 共食いを誘発させたことで、だいぶん数を減らせたとは思いますが…何体残っているのかは、想像もできないです」


「そこまでかね」

「そこまでですね」


ロンダルトさんが困ったように溜め息を。


「国軍へ報告したら、間違いなく森を焼き払いますね。

 この里のことを知らなければ、俺だって、そうします。

 マユガカ卵を得る依頼でしたが…あれってマユガカを棲息させた侭が前提だったんですよねぇ」


「確かに、そう依頼したが?」

「やはり、ロンダルトさんが、でしたか…

 けど、ギャブが飼育しないマユガカが、今回の原因だとしたら…

 絶対に再度発生しますよね?」


ギャブやソムラムを連れてくるなんて、とんでもないし、ましてやゴライゾンはなぁ~


最近、他国で売り出されたギャブを誘引する魔道具にて、ギャブが大々的に討伐されている筈だ。


ここのギャブも、それで駆除したと聞いてるんだが…

マユガカが大氾濫した森ってさ、ここ以外にもあるんじゃね?


一瞬背中がゾワっとしたぜっ!

おれの予想をロンダルトさんに告げるが…


「今慌てても、対処はできまい。

 先王様たちには、明日にでも帰っていただき、このことを国へ知らせて貰うことにしたい。


 森を抜けるまでは、うちの戦士団より護衛をだそう」


確かに、夜中である今騒いでもしかたないな。

夜の森を、非戦闘員を連れての移動は危険だ。

少なくとも、夜が明けてから動いた方が良かろう。


「ダリルには里に残って貰いたい」

「まぁマユガカ退治がありますからね」


そう告げるとな。

「それもあるが、忍術を身に付けて貰いたいのだよ」っと、そんなことをな。


っか、はぁ?

意味が分からん。


「里に忍者っていましたけ?」

エルフ忍者…ある意味新しい。


「いや、おらんが?」

ダメやん。


「いやいや、教える人がいないのに、覚えるってのは、無理じゃね?」


そうだよね?

したらな。


「術については、精霊新聞にて調べたゆえ大丈夫だ。

 弓や小太刀では、殲滅範囲が狭く苦労しておろう?

 なれば、忍術が取得可能か試すのも良かろう」


そう告げてきたのだが…なんだか怪しい。


「本当に、そんな理由で調べたのか?

 なら、なんで俺が討伐へ向かう時に、精霊新聞で調べることを教えてくれなかったのかなぁ~」ったらな。


バツが悪そうに、そっぽをな。

実に素直で分かりやすい反応ありがとう。

俺なら別の言い訳を告げるが、すれてないと言うか何と言うか…


「違うようだよなぁ~」ったさ、ロンダルトが真っ赤に。


いやな、オヤジさんの恥ずかしがった赤ら顔には、需要はないと思うんですが。


「いや、そのだな。

 ディサピィルトーカーの鎧が忍び装束だろ?

 なら、忍具や忍術はいるのではないかとな」


少年の心を失わない人やねぇ。

ピュアなの?ねぇ、ピュアなの?

そんなん言いたくなりました。

まぁ言わんけど。


「まぁ、あの装束には忍術って思うのは分かりますし、単独にて混戦状態で使用するのは、忍術が最適でしょう。

 ですけど、俺に修得可能ですかねぇ?」


適正なき者には、術はあつかえないからな。


「おそらくは大丈夫だろう。

 精霊が群がるほどの魔那保有量だからな。

 それに精霊にあれだけ好かれるならば、精霊魔術も行使可能だろう」


自信満々にな。

そんな物かねぇ?


「まぁ、忍具を使った火炎や爆炎の術は、止めた方が良いだろう」

「それは、どうして?」

意味が分からん。


「いやな、非常に燃えやすい油を使ったり、火薬と言う激しく燃え盛る薬を使うそうなのだが…

 油と火薬の扱いが難しいらしい」


「油は、なんとなく分かりますね。

 下手したら、使い手が火傷する落ちでしょ?」ったら、ヤッパリ頷いた。


その手の油を使う者を見たことがあるからなぁ。

敵対者でな、油が入った陶器へ布を突っ込み、布端へ火を点けて投げようとしてたんだわ。


俺が陶器を矢で粉砕したら、燃え盛ってたわ。

あれが本当の燃える男だな。


「けど、火薬てぇのは初めて聞くんだけど?」

なんだろね?

「アレは、本当に危険な代物だ」って肩を竦めるんだが…


本当に、なんだ?

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