第84話

「危険でもあるが、扱い難いのも問題でな、湿気たら使えないらしい。

 特殊加工をほどこさねば、雨の日どころか、霧が出ても使えないらしいな」


天候に場所が限定される訳ね。


「さらに火の粉が舞うような場所では、爆発の危険があるそうな」


「いやいや、軍の野営地なんかは、かがり火を焚いてるからな。

 火の粉なんぞ、バンバン飛んでるからね。

 爆死確定なのかよっ!」


使えねぇ~


「それらを解消したのが焙烙玉と言う物らしい」

「なんだ、使える品もあるんじゃんか」ったらさ、ロンダルトさんが左右に首をな。


「火薬を包むようにする形で、器2つを合わせるらしい。

 これへ和紙を被せるように糊付けし、器より伸ばした導火線とやらに火を点けて使用するらしいのだが…」


なんか、いやな予感が…


「これを持って激しく動くと、火薬が内部で擦れてな。

 摩擦熱にて誤爆するのだと」


「使えんわっ!

 自爆玉抱えて行動なんぞ、ごめんだからなっ!」


まったく、トンでもない忍具を使ってやがるわいっ!


「それでも忍術が使えぬ忍びにとっては有能な忍具らしい。

 まぁ、誤爆死する者が後を絶たんらしいがな」


「そんな自殺忍具を使うなぁっ!」

まったく、忍者ってヤツらは…


「まぁ、使えそうな忍具もあったでな。

 そちらは開発中だ。

 それよりも、明日は正式な忍術が使えるかを試して欲しい。


 一般的なのから皆伝、奥伝、奥義、秘奥義に秘術や家伝などなど、選り取り見取りだからな」


ちょっ!


「なんで皆伝以上の秘密である忍術が、会得対象やねんなっ!」ったらな。


「うむ、精霊が張り切ったようでな、色々と仕入れてきたみたいだ。

 どうもダリルは精霊に、異様なほど好かれておるみたいだな。

 ダリルが会得する忍術と言うことで、無理もしたみたいだぞ」


いや、好かれる意味が分からんのですが?


「なんで、そんなに好かれてるんですかね?」

本当に、訳わからん。


「それは、流石に私も分からんな。

 っと、これ以上は逆上せそうだな」

「確かに、そろそろ出ますか?」


そう言うことで脱衣所へと。

今日はメロン牛乳らしいな。


いつものスタイルにて、いただく。


んぐんぐぐっんぐっ。


「美味い、ビール、プリーズ!」

「ほれ、今日は大ジョッキだ!」

「これが噂のキングサイズかぁ!

 いざ、挑まん!」


ぐびっぐびびっ、ぐびぃっ!

ゴキュッゴゴキュゴゴゴキュキュ!

プゥッフゥワァァッ!


「美味い!

 満足です!」


「これを一気とは…

 若さゆえか?

 いや、若い者に遅れを取るものかっ!」


そう言うと、半分残ったビールを一気に!

やるねぇ。


「ちなみにだ」

んっ?

「カイザーサイズと言うのもある」って、空のジョッキを見せてくれるが…


「ロンダルトさん?

 一般的に、それはピッチャーって言うんですが?」

飲めるかぁっ!


そんな俺達へサマンサさんがね。

「いつまで入ってるんですかっ!

 いい加減に出なさい!」って苦言を。


「いや、サマンサさん?

 男風呂ですよ?」ったらな。


「旦那と息子の裸を気にする妻ゃや母がいますかっ!」って…

いやいや、親代わりって言ってたけどさ、流石に…


したらロンダルトさんがね。

「ダリルよ。

 絶対的な、我が家の家訓を知っておきなさい」っと、真剣な顔で…


思わず、ゴクリっと生唾を飲む、俺。

そんな俺へと、ロンダルトが神妙に告げる。


「サマンサに逆らってはならない。

 良いね」って…ドンだけやねんなっ!


って…背筋がザワワワッっと。

あ~っ、サマンサさん?

逆らいませんよ?


うん、真理を覚った気になりましたとさ。


そそくさと、脱衣所から出て、客室へと移動。

さて、寝ますかね。


相変わらず、素晴らしい寝心地のベッドだ。

実に気持ち良い睡魔に身をまかせ…すゃ~


ハッ!

んのヤロぉ~!


せっかく気持ち良く寝てたのにぃっ!

斥候職の性ってヤツでな、怪しい気配には、即座に反応する訳よ。


ロンダルト邸の敷地内へと、何者かが忍び込んでんぞ。

誰だっ!

俺の睡眠の邪魔するヤツぁ!


何人たりとも、俺の睡眠をぉっ、妨げさせねぇぞっ!

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