第64話

来る時に排除したモンスターを渡したのが、礼代わりとされた訳だが、なんだか申し訳ないな。

そう感じてしまうため、罪悪感も。


なにせ昨夜から、凄いご馳走に最高の風呂をいただき、寝心地最高のベッドで休むと言う、最上級ホテルでも味わえない経験をしている訳だ。


王都でも経験できない贅沢が、あの対価で本当に良いのだろうか?


そんなことを思っているとロンダルトさんがな。


「そうそう、教えて欲しいのだがね」ってな。


貰いすぎと考えている今、俺が応えられることならば、応じるべきだろう。


「なんでしょう?」って促すとな。


「使節団の目的なんだがね。


 まずは、先王ウォルフ殿。


 国の使者であり、我らフォリゾン・エルフへ自治領認可を下知されに来られたわけだ。

 その際に、我らが国の保護下とされたことを、あわせて伝えられたらしいよ。

 さらに我らを無為に扱えば、国賊とする法が認可されたのだとか。


 ここまでは良いのだが、先の約束では、マユガカの巣より卵を持ち出せる者を派遣するとあったのだよ。

 そのことに対しての返答がない。


 それと、教会から派遣された2人の情報だね。

 教皇と枢機卿と言う教会トップが、なぜ、このような場所まで来たのかが分からないのだ。


 普通は精霊新聞に記事が載るんだけど、そこら辺の情報がなくてねぇ。

 なにか知らないかね?」っとさ。


あまり期待はしてないみたいだけど、俺が宿泊の礼とされた対価を気にしてると気付いたみたいでさ、ならばってな。


けど…思いっきり知ってますです、はい。


「まず、教会から来た2人はですが、里長と、その息子さんの呪いを解くためですね。

 対価は里との交易権利を得て、薬を購入したいからです。


 教会とはいえ聖術師の数は限られますし、その聖術師も保有魔那は限られています。

 ゆえに薬に頼らねばならないケースが出てくる訳なんですよ。


 そんな理由から効能高い薬は、是が非にでも手に入れたい訳ですね」ったらな、ロンダルトさんがさ。


「なんで、そこまで知ってるんだ?」って、訝しげにね。


「いやね、なぜか教皇様に気に入られてしまったようでして…

 妻との結婚を認可していただきましたしねぇ。

 なんで気に入られてるんでしょ、俺?」ったらね。


「そんなことを、私に訊かれてもだねぇ」って呆れられたよ。


「ですよねぇ…

 自分もわからないんですが、そういえば…」


「なにか思い当たるのかね?」

「関係ないと思いますが、私に複数の加護が与えられているそうなんです。

 遺跡の神意物を、私の守護霊が解放していたらしく、その影響らしいですね。


 っても、私には自覚がないため、加護と言われても、ピンときませんが」ったら、ロンダルトさんが呆れたようにさ。


「いや、明らかに、それだろ。

 聖職者が、神より加護を得た者を遇せぬはずあるまいに」ってね。


そんなもんかなぁ~

俺って信心深い方ではないから、正直な。


「呆れたヤツだな、おまえさんは。


 まぁ、教皇達が来た理由は分かった。


 新聞に載らなかったのは、聖職者の纏う聖威に精霊が弾かれたからだろう。

 力強い者の情報は、元々集まり難いからなぁ。


 精霊新聞の欠点って言うか限界だろう」てなこと言ってるけどさ、自宅に居ながら様々な事柄を知れるんだから十分だと思うんだが…


「ああ、そうそう。

 マユガカの卵を取りにも行くことになってるの、俺だから」って言ったらさ、茶をのんでたロンダルトさんが噎せたよ。


どったの?


「げほ、げほげほっ!

 おまえなぁ…って言うか、冗談では無く?」

「ああ、マジだぜ。

 国からの指定でな。


 まぁ、それだけだったら、嫁さん連れて逃げるんだが…

 先王様っうか爺さんが、嫁と結婚できるように取り計らってくたんだわ。


 実は前払い報酬あつかいだったりすんだよなぁ」


「なんなんだ、それは?

 だいたい先王を爺さんあつかいして、不敬罪とか大丈夫なのか?」


心配そうにな。

ほんにえ人やぁ。


「大丈夫、大丈夫。

 嫁の実の祖父だから、俺にとっても義理ではあるが祖父になるからさ」


「はぁ?

 意味が分からんのだが?」


そんなん言うから説明しましたよ。

結局、質問にも応えてたら昼にな。

昼飯まで、ご馳走になってしまった。


しかし…使節団から誰も迎えに来ないんだが、そろそろ、こちらから行った方が良いかなぁ?

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