第60話

サマンサさんの説教は3時間にもおよんだ。

足が非常に痛くキツかったのが、下半身の感覚が途絶え、サマンサさんの声だけが頭へと響く。

なんの修行だ、これ?


ようやく解放されたのだが、足の感覚がなく起き上がれない。

っと思っていたら…足がぁぁっ!


痛い?痒い?ジンジンするんですが!?


「これ、ミーシャ!

 止めなさい!

 ダメ!今はダメっ!


 痺れてるからぁ!

 足ぃ触っぁらめぇっ!」


良い歳したオヤジのラメぇ、入りましたぁ!

きめいなぁ、をい。

あっ、ピクピクしてんな。

逝ったか?


しかし…これが痺れてるって感覚かぁ。

始めてだが、キツいなぁ。


って、んっ?

ミーシャちゃん?

その棒で、何をするのかな?


い、いや、そのな。

「ミーシャちゃん。

 話せば分かる。

 まずは、その棒を置こうか。


 いや、なんで棒を持った侭で近寄るのかな?

 い゛っ!

 そのねえっわ!つんつん、しないで!

 うわっ!

 いや、ダメ、ダメだからぁっ!

 ってぇらめぇぇっ!」


ピーっ……… ……… ……… しばらくお待ちください。


酷い目にあったぜよ。

あの後、ロンダルトさんと和解。

っか選択肢は有りませんから。


2度と正座説教は、ごめんです。


その後、ロンダルトさんにマユガカ素材の鎧を見せて貰う。

っか、見せられたっうのが本当か。


細部のディテールまで拘った美しい鎧でな、言われなければマユガカ素材で造られたなど解らないだろう。


しかも、異様な程に軽いんだわ。

ロンダルトさんいわく。

「強度が凄いんだよ。


 オリハリコン製のグレートソード、アダンマンタイト製の斧、ミスリル製のロングソードに日緋色金製の刀。

 これらを達人が使用して傷1つ付かないんだ。


 実際に過去の戦いで実証されているとの伝承が残っているからね。


 しかも魔術レベルなら弾くんだよ、これ。


 しかも柔軟性に優れてるから間接部を薄くする必要もない。

 良く鎧の間接部を狙えって話があるけどさ、この鎧には通用しないからね。


 断熱断冷に優れておるのに、通気性も良いため蒸れることもないのだ。


 矛盾することにな、気密性も優れており、兜の面を下ろしフルフェイスにすれば、水に潜っても濡れぬのだよ。

 空気循環の法具とやらが組み込まれており、完全に鎧で覆っても窒息もしないのだ!


 どうだ!

 素晴らしいとは思わないかね?


 はっHAはっHAはっHAはぁHAっ!」


長い語りだなっ、をいっ!

これを最後まで聞き終えたんだが、正直キツかった。


サマンサさんの説教と言う恐怖がなければ、途中でキレてたぞ、をいっ!


マユガカ鎧が優れていることは認めよう。

だが、俺には不要な代物だな。


いくら軽く柔軟性に優れていると言っても、戦士や剣士などの前衛職向けの鎧だ。

こんなに動きを阻害する代物を纏うなど斥候職である俺からしたら、邪魔でしかないからな。


まぁ告げることはないがね。


「ダリルさん、家の人が済みません。

 もう良い時間ですから、今日は家に泊まっていってくださいね。

 食事の用意も整いましたから、どうぞ食べてくださいな」


そうサマンサさんに告げられ食堂へと。

ご馳走になっちゃうか?


使節団の随行員っても、別に正式な一員っていう訳でもない。

それにロンダルトさんに捕まってる時に放置されたし、いまさらだろ。


「では、お言葉に甘えて」


っうことで、ご馳走にな。


野菜や香辛料などの植物由来の食材は新鮮。

魚は獲れたてで、肉は熟成済み。


ミルクと生クリームにバターが植物由来なのには驚いたが、味は濃厚なのにサッパリしてんだが?


品種改良した植物で、本物の牛乳成分と変わらない品質のミルクが採れるらしい。

チーズだって造れちゃうんだと。


特長は動物臭くなく、脂っこさが皆無らしいぞ。

俺は牛乳製品より美味いと思うが、人によっては物足りなく思うやもしれん。


だってな、肉や魚介類も類似品を植物より産み出せるらしいのだが、ロンダルトさんは本物の方が好きらしい。


ちなみにサマンサさんとミーシャちゃんは、植物製の魚介を使用したパスタを食べてます。


俺は植物製肉のステーキとランディングボア肉のステーキを、それぞれ1枚づつがメインですよ。

これにサラダにスープとパンが付いてました。


ステーキの食べ比べだが…ロンダルトさんには悪いのだがね、植物製肉のステーキに軍配が上がるかな?


まぁ、ランディングボアのステーキも美味かったけどね。

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