第56話

集落を目指して3日目。

これと言った問題もなく、くだんの森へと辿り着く。


ここからは馬車を降りて歩きとなるようだ。

数人の騎士が馬車と馬を守ため、従者と御付きと共に残るらしいな。


明らかに、ホッとした顔を隠さないのは、如何なものかと。


まぁ、気持ちは分からんこともない。

奥地へ棲息してるとはいえ、マユガカの棲息地だ。

しかもモンスターも徘徊しているのだからな、入らない方が良いに決まっている。


騎士と従者の方々は剣術や槍術に長けてはいる。

ただ、森の中での戦いには慣れてないだろうな。


御付きの方々は護身ていどだから、戦力として考えない方が良いだろう。


教皇様と枢機卿様は聖術で癒し系だ。

攻撃の術もあるそうだが、効率は良くなく、後々影響するため基本的に攻撃に参加しないと。


そして先王様…

「あのですね、槍に替えてください。

 っか、借りて貰えます?

 森中の空間は狭いんです、分かります?」


「う~むぅ…愛剣なのじゃがのぅ…

 ダメかのぅ?」

「ダメです」

「しかしな」

「そんな大剣持って森に入ろうとしないでくださいやぁっ!

 歩くだけで、あちこちに引っ掛かって、移動も困るでしょっ!

 いい加減に聞き入れてくださいやぁ!」


先王様…もう爺さんで良いや、この爺さんが出掛けに我が儘を言って困ってんだよ。


ロングソードなら良い、グレートソードは厳しいが…グレーターソードは、ないわぁ…


俺なら持ち上げることも出来んぞ。

いやな専用の保管箱に入れて、荷馬車へ積んでたらしい。


その箱は軽量化の魔道具らしく、保管物の重量を軽減するそうな。

そんな箱へ入れないと、重すぎて馬車が動かせないらしい。


そして異様にデカイ。

中型以上や大型のモンスターを狩るから有用だろう。

だが、ここのような森を進むには邪魔だ。


っか、なんで、そんな武器持って来るし?


擦った揉んだの遣り取りの後、ようやく出発。

森へ入る前から疲れてますが…なにか?


俺を先頭に森を進む。

道など無いし、目印もない。

分かるのは方向だけだ。


案内役を雇おうとしたらしいが、行き先を告げたら、ことごとく断られたらしい。

だから案内役なしで向かう予定だったらしいな。


森…舐めてる?


素人が迂闊に、このクラスの森へと分け入れば、絶対に迷う。


しかもモンスターが徘徊する森だぞ。

ベテランの狩人でも…いや、ベテランだこそ、絶対に近寄らないだろう。


まぁ、エルフならば問題なく移動できるだろうが…

エルフはエルフで、マユガカを蛇蝎のごとく嫌っているため、マユガカが住まう森なんぞには、絶対に近寄らないかんな。


そんな森を素人さんがピクニック。

自殺なの?


時々隊列を止め、俺だけ先行して偵察を。

例の不思議感覚にて、集落位置は判明しているため迷うことはない。

ぶっちゃけ俺1人ならば、即座に到着するんだがな。


素人さんを引率するのが、こんなに大変だとは…


先行してモンスターが居たら狩る。

最初は迂回してたんだが、埒が明かないため止めたんだ。

思った以上にモンスターが多いぞ、ここ。

群がられたら詰むな。


こんな場所へ居を構えるなんて、正気か、フォリゾン・エルフ。

徘徊するゴブリンを、大型蜘蛛が捕食しとります。


迂回しても蜘蛛の索敵範囲内より逃れませんね。

弓を連射し、急所を射抜く。

討伐と同時に亜空間倉庫へと。


放置すれば、モンスターが死体へ群がってくるからな。

しかし…何処かで破棄せんとなぁ~


モンスターの素材を使用した武具もあるそうだが、蜘蛛素材の武具なんて需用があんのかねぇ?


最短距離を移動しつつ、なんとか川が流れる音が聞こえる場所へとな。


しかし…

「皆さん、止まってください」

「またかね?

 なんども止まっているから、なかなか進まんではないか」っと騎士さん。


いや、危険だから止まって貰い、危険を排除してから進んでんですが?

告げたら戦わせろって五月蝿いから言わんけど。


そんな脳筋騎士を無視し、俺は前方へと告げる。


「突然来訪しお騒がせ申し訳ありません。

 こちら、国からの使者様と教会からの使者様を伴っております。

 代表の方へお取り次ぎ願えますでしょうか?」


そう告げたら、後方の騎士さんがね。


「誰も居ない場所へ、何を告げとるのだ?

 そもそも、わしを無視するでないっ!」って怒ってるんだが…相手してられるかっ!


「ほぅ、我らが包囲する前に気付かれるとは…人としては規格外ですか…

 まぁ客人と思われるゆえ、相手致しましょう」ってぇ声がね。


なかなか話が分かる人物のようだ。

後の交渉は他の方に任せますかね。

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