第57話

「なっ!

 本当にエルフの方々が?

 騙りではなかったのか?」


お~っしぃ! おっさん!

じぃ~っくり、お話ししようか?


脳筋騎士の発言は、流石に頭にきたかんな。

おっさんの元へとな。


「お、おおぅ…

 どうした?」

なぜ弱気?


ドサドサドサッって、おっさんの前に、ここへ来るまでに倒したモンスターをな。


「ぬわっ!

 いきなり、なにをっ!」


「ここへ来るまでに排除したモンスターだ。

 騙りって…なに、か、なぁ~」


自分の額に青筋浮いてる自覚があるぞっと。


「は、ははっ…

 じょ、冗談、そう冗談に、決まっておるではないかね、きみぃ」


凄い愛想笑いですね、毒気も抜かれるわ…

処世術ですかね?

苦労が滲み出て、哀愁まで感じてしまいますが?


もっ、良いや。

おっさんも、こんな所へ派遣されるてぇババ引いてる訳だしな。

揉めて良いことも無いし。


そんなん思ってるとな、後ろから声が…

「その獲物は、貴方が狩られたのですかな?」ってエルフさんがね。


「はぁ、狩ったって言うより、移動に邪魔だから駆除しましたけど?」


獲物って、狩って活用するかのような、言い回しだよね?

要らんぞ、こんなもん。

特にゴブリンなんぞ、活用方法が肥料にするしかないかんな。


いや、確かに農家なら需要はあるそうなんだが、買い取ってまでっうほどではな。

浅い森でも、はぐれの1匹や2匹は現れるからな。

農民でも倒せるから、肥料には、それで十分だし。


つまり、ごみでしかない訳だ。


「もしかして…ご不要とか?」


「いや、要らんでしょ、こんな物。

 活用価値もないし。

 放置すれば、他のモンスターを呼び寄せることになるから、収納してただけですので」ったらな。


「それで、それらは?」って確認してきたから、取り扱いについてだと判断してな。


「むろん、邪魔にならない場所へ破棄しますが?」

そしたらな、食い付くように。


「そんなっ!もったいない‼」って。

いや、もったいないって、アータ…


「マユガカの餌に最適なのですぞっ!

 是非とも交易を!」


い、いや…その交渉は、あちらの代表の方々とですねぇ。

えっ?

あちらは、あちら、こちらは、こちら?


別口ですか、さいですか。

いやいや、代表の方々が集落の入り口で交渉中に、俺だけ集落へ入るには…


えっ?


あれだけ狩れる勇者ゆうじゃは英雄?

ゆえに歓待するが当然と?


いや、俺、あちらの一行に所属してましてね、勝手な行動は…


「俺の話を、聞けぇっ!」ったく。


「先王様と教皇様も、なんとかいってくださいやぁっ!」


「なんとか」

爺ぃ、クチ殺すぞ、われぇっ!


「エレシス」

「はあ?」

「エレシスじゃ」

「いや、なにを?」

「だから教皇と呼ぶでない!

 エレシスじゃ!」


はぁっ!?


「いま大事なのって、そこ?

 そこなの?

 っか、代表より随行員が優遇されんのって、不味くないんっかぁ!

 つか、随行員に敬称なしに名前を呼ばそうとすんじゃねぇっ!」


「うむ、その突っ込み、天晴れじゃっ!」


もーいやっ!


HAHAHAHAHAっ。

 なかなかに愉快な方々だ。

 是非とも歓迎しようではありませんか」


「いや、そのね。

 代表が交渉して入れなかったねに…

 面白いから入れるのかよっ!」

意味分からんわっ!


「そこ、大事ですよ」

「どこがじゃぁっ!」

もー本当にぃ嫌っ!


んでな、先王様と教皇様が交渉しても応じなかった癖に、スンナリと集落の中へと。


って、集落?

小洒落た感じの町なんですけど?


壁が蔓で編んだようになっとるし、変わった素材が使用されてるけど、シッカリとした建物が整然と建っている。

2階建てや3階建ての建物も見えるな。


ここへ移住して、さほど時間が経ってない筈だよな。

どうなってんだ、これ?


俺が不思議に思ってたらな、教皇様がな。


「ふむ、素晴らしい魔術じゃ。

 植物を操り家を建てるとはのぅ」ってな。


そうか…精霊魔術が使えれば、こんなことも出来るんだなぁ…


「建材は、マジックバックへ入れて来ましたのでね。

 まぁ、移築したようなものですよ」ってる。


人には出来んことだけどね。

しかし建材って?

何やら見たことない素材が…んっ?見たことない?


どこかで見たような…

あっ!

ま、まさか…


「これって…マユガカの甲殻かぁっ!」

「おや?

 良くお分かりで」


マジかぁぁっ!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る