第54話

ユンファを見送った後、先王様と共に教会入り口へと。

ユンファが向かったのが裏口としたら、表口…玄関になるのだろうか?


中では既にミサが始まっているが、俺はミサに参加する訳ではない。


入り口付近に待機していた僧侶に、教皇様への取り次ぎをな。


「ダリル様でございますね。

 貴賓の間へお連れするよう、申し使っております」

そう告げ、恭しく一礼を。


彼の案内にて貴賓の間へと。


入ると、教皇様と枢機卿様が待っておられたよ。

それと、同行する騎士達だな。


ユリアーナ様の姿はない。

昨日に発生した騒動の後始末をガリアン様とされておられるとのこと。


フォリゾン・エルフの元へは、お2人と共に向かうこととなりそうだ。


「よう来たのぅ。

 改めて名乗ろうわぇ。

 我が名はエレシスである。


 教皇などを行っておるな。


 隣に座るはレンドレンじゃ。

 枢機卿である」

いきなり自己紹介かよっ!


「これは、こちらから行わねばならぬところ、誠に汗顔のいたり。


 我が名は…」


「ふむ、サイガと名乗れまい。

 いずれ周りの者達も、お主をサイガと呼べなくなるでな。

 神託にて承った神意である。

 いい加減に諦めるのじゃな」


マジかよっ!

「マジじゃっ!」

守護霊様ぁぁっ!


「ふぅ、畏まりました。

 我が名はダリル。

 斥候職のフリーランサーであります」

そう、観念して告げる。


そしたらな、なにかが体から剥がれたような…


「うむうむ、サイガよ、逝くかえ。

 もうダリルは大丈夫じゃよ。


 しかし、おぬしも律儀よな。

 危険な戦場にて穴を掘り、墓としてくれた恩かえ?


 なになに、悔やみの言葉をもろうたからかぇ。

 ほんに律儀よ」

などと…


いや、サイガ?


「名はしゅにて縛るものじゃ。

 サイガはのぅ、お主に名を語られ縛られたのよ。


 普通は怨まれ祟られるところじゃ。

 それが守護霊じゃぞ。


 の守りなくば、危うい場もあったであろうて。

 神意物を解いておったのもサイガよ。

 感謝するのじゃぞ」


ああ、だからサイガを名乗るなと…

まさか縛っていたとは、なぁ。


「色々とお力添えいただき、感謝いたします」

そう告げるとな。


「カカカカッ。

 善きかな、善きかな。

 さて、行こうわえ」

そう言われて席を立たれるのだが…


「ですが教皇様」

「エレシスじゃ」

「いや、流石に呼び捨ては…」

「エレシスじゃぞ」

「あの~」

「だから、エレシスと呼ぶのじゃ!

 これは教皇よりの勅命じゃっ!」


そんな、無茶苦茶なぁ…


「護衛として、私を同行させるとのことでしたが、騎士様が同行されますよね。

 私の同行は、必要でしょうか?」


護衛は騎士がいれば良いよな。

俺は単独の方が動き易いし、遠慮したいのだが。


「必要じゃな、主の探査能力は有能であるし、なによりもじゃ、同行させよとの神託があったでな」


なんだよ、その神託はっ!


「なにか起こるのでしょうか?」って尋ねたらな。


「分からぬ。

 じゃが、用心した方が良いであろうの。

 しかし…普通はの、このように頻繁なご神託は下らぬものじゃ。

 主の多量な加護のせいか、はたまた他に要因があるのか…

 なにが起こるのかのぅ」


教皇様が不安だと、俺達も不安なんだけど…


兎に角、出掛けるということで、教会から外へな。

既に馬車が回されており、教皇様と枢機卿様、先王様が乗り込んだ。


俺の馬か馬車は?って思ってたらな。


「なにをしておる。

 早く乗るのじゃ」って、教皇様がな。


って!この馬車へ乗るんかいっ!


一瞬、走って行くか?ってのも頭に過ったが…俺、フォリゾン・エルフ集落の場所を教えて貰ってねぇっ!


単独で辿り着くのも厳しいし、あちらとの面識もない。

それに例の神託の件もな。


しかたなく馬車へと。

なんだぁ、この馬車?

外は質素だが、内装はシッカリしている。


豪華ではなく、シッカリだ。

頑丈な椅子は革張りだが、綿か何か入っているのか膨らんでいる。


中央には備え付けのテーブルが。

孔が空いているが、そこへは飲み物が入った瓶が刺さり、他の孔には空のカップがな。


席は3人掛けが前後に設けられており、後ろ側に教皇様と枢機卿様が、進行方向を背に先王様が収まっていた。


むろん、俺は先王様の方へ…


「どこへ行くつもりやえ?

 そなたの席は、ここであるや」っと教皇様が指し示したのは、教皇様と枢機卿様との間。

両手に花ってか?


枢機卿様も、にっこり頷かないでいただきたい。


「お戯れを」っと告げ、先王様の隣へと。


「連れないのぅ」って笑いながら言われてもですねっ!

ふぅ、疲れる馬車の旅となりそうだ。

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