第51話

モンスター牧場の触れ合い広場にて、小型モンスターと戯れるユンファ。

非常に楽しそうであり、癒されているな。


そんなユンファを見て、俺も癒される。

っか、広場で胡座を掻いて座ってんだがな、小型モンスター達が集まって来て俺を登って来るんですが…

君達、俺は遊具じゃないからね?


「あははははっ。

 サイガが、小型モンスターで埋まっちゃった」


ユンファさん?

笑い事ではないんですが?


擦り寄るわ、舐めるわ、甘噛するわ。

なんなんでしょうね、これ?


「ここまで懐かれる方は珍しいですね。

 テイマーの方でも無理ですよ。

 しかし…あれだけの、もふもふへと埋まると、気持ち良いでしょうなぁ。

 ちょっとばかし、羨ましく思えますよ」


飼育員が、そんなことを。

いや、できるなら替わって欲しいんですが。

これだけ群がられると、身動きもできんわっ!


で、なっ。

気配を消してみたら、触れているにもかかわらず俺を見失って離れて行ったよ。

っか、俺を探して彷徨いてんだが…


どんだけやねんなっ!


気配絶ちは、ユンファと飼育員が見てない瞬間を狙ってな。

だから2人は、俺の気配が消えたことに気付いてないぞっとな。


さて、そろそろ良い時間だな。

明日はフォリゾン・エルフの元へ向かわねばならない。

あまり遅くなるのも困るから、ここら辺で…


「あら?

 ユンファじゃん。

 なんでアンタ、こんな所に居んの?」っう声がな。


この声は…ランラ!?

どうして、ここにっ!?


「あらぁ~

 ユンファちゃんだぁ~

 おひさぁ~

 その子達と触れ合えてぇ、良いなぁ~」


この、ゆんるぅ~い話し方は、トトか。

身を潜めた侭も拙いか。


そう思った時もありましたっ!

気配絶ちを解いたとたん、俺を見付けた小型モンスターの波が…


即座に埋まる、俺。

小型モンスター…もふもふ山の出来上がりである。


なんだ、これ?


「なんかさぁ…もふもふの山が出来てるんだけど?」

「ホントだぁ~ねぇ。

 い~なぁ~」

「えっ!?

 良いの、あれが?」

「良いとぉ思うよぉ~」

「まぁ、アンタが良いと思うんなら良いけど…

 結局、あれって…なんな訳?」


「んっ?

 マイダーリンね」


「もふもふの山が?」


「埋もれてるのがよ」


埋もれてるから、何も見えん!

声だけ聞こえるんだが…誰かなんとかしようとは、思わん訳?


その後、飼育員さんが小型モンスター達を厩舎へと。

これは助けてくれた訳ではなく、触れ合い広場の閉園に合わせて、小型モンスターを回収しただけだ。

てめぇ~


しかし…俺に、しがみ付いて離れない小型モンスターもな。

っか、1頭、2頭ではないのだけれど…どんだけやねん!


「大人気ですのぉ~」

いや、トトさん?


「そう、私の旦那様だからねっ!」っと胸を張るユンファ。

いや、それは関係ないかと…ちと嬉しかったりしたけどさ。


「あら?

 結婚もしてないのに、旦那様あつかいなの?」ってランラが言うとな。


「ふふん、したもんねぇ~」ってさ。

そのドや顔も可愛いです!


「えっ!

 何時よっ!」って驚くランラと…

「わぁ~おめでと~」祝うトト。


う~ん…カオスだ。


「そかぁ、なら…お祝いしないとね。

 ラルテのキングパフェなんて、どう?」


ここで、そのカードを切るのかっ!

断れんだろが!

あっ、だからかぁっ!


「え~っ、僕ぅ、タワーパフェの方がぁ良いなぁ~」

戦慄が走る。


喫茶ウイユ・ドゥ・シャのマスターが悪のりした客の要望に応え、作り出したと言う伝説のパフェ。


5人客で食べて、なんとか完食したと言う、あのパフェかぁっ!


値段もキングパフェの3倍はする。

だが…妥協しないマスターが、チェーン店ではなし得ないクオリティにて作り出せし逸品。


それを躊躇いもなく、口に出すとは…トト、恐ろしい、子っ!


「トト…流石に、それをサイガに奢って貰うのは…」

ランラも戦慄。


しかし…

「あれぇ~?

 2人を祝うんだからぁ~払うのはぁ、私とランラちゃんよぉ~」ってな。

ああ、確かに…


トトは商家のお嬢さんであり、テイマーとしての稼ぎも良い。

金には困っておらず…っか裕福だな。

金銭感覚が庶民と違う程度には。


ランラは一般庶民だから、金銭感覚は普通。

まぁ、派遣されたりする実力から、通常のシスターよりは高給取りではある。


だが…タワーパフェを2人で割り勘するのを、楽々に…無理だな。



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