第32話

納得いかないと騒ぐ部隊長を宥めながら、賊アジトへと。

いや、壊滅させたから、元賊アジトか?


ワイヤートラップの類いは既に除去すみ。

暗視が利く俺には灯りは必要ないが、部隊長達には必要だ。


隠密隊の面々も大丈夫だったのに面倒なことだ。

まぁ同行している魔術師が灯りを確保しているから、俺には関係ないのだが。


足場が悪い洞窟を、部隊長達は苦労しながら進む。

俺と隠密隊の皆には、この程度の足場なら普通の道と、なんら変わらない。

なのでな、スタスタと、何時ものように歩いてたら怒られたよ。


いや、配慮が足りんって…

そんなん知らんがなぁ。


んでな、洞窟を抜けて…


「なんで、洞窟内に畑が?」

部隊長達が唖然とな。


「この度の戦果です」っと告げたらな、意味が通じてないようで、胡乱げな目で見られてしまった。


なのでな。

「賊達が耕してた畑です。

 様々な野菜が収穫可能ですね。

 なんとっ!麦畑まで付いてきちゃいます。

 素晴らしい戦果でしょ!」って、胸を張ったらな。


「いや、畑が戦果と言われてもなぁ」って、不満気に。


だからさぁ。

「おや、お気に召さない?

 しかたないですねぇ。

 だったら鶏も付けちゃいましょう。

 さらに、今らな子豚も一緒に付いてきちゃいます。

 どうでしょうか、お得でしょ?」ったった。


「いやな、サイガ。

 新たに開墾することを考えると、確かに有意義な成果なんだろうが…

 賊のアジトを落とした成果が、これと言われてもなぁ」ってから、後ろ頭を掻いている。

なんか困ってるようだぞっと。


「なんか、お気に召さないようですけど、領軍が手出しできなかった賊を討伐したんですがね。


 それ以外は副産物でしょ?


 本来は、この畑に対する権利を有するのは、討伐した俺ですよね?

 持ち運べないから接収あつかいですが、なにか、ご不満でも?」


不満ったら、畑を引き渡す対価を求めちゃるけぇのっ!

余りごねても禍根となり、今後の仕事に影響するから譲歩してんだ。

それが慣例だって図に乗るならば、こちらにも考えがあるからな。


したらな、部隊長が慌てたように。

「いやいやいや。

 この素晴らしい畑に文句はない。

 文句はないぞ、うん。


 それでな。

 賊が宝を溜め込んでたのでは、ないかなぁ~なんてなぁ」


そんなん聞くからさ。

「ない」って言ってやったわい。


「いや、無いって?

 どう言うことだ、それ?」ってきくからさ。


「言った通りだが?

 探したけど、見当たらなかったんだよ。

 賊が3百人以上いたんだぞ。

 宝を持ち出して逃げた賊がいるんだろうよ」ったらな、疑わし気にな。


「おまえが隠してんじゃぁないだろうな?」ってさ。


「あんなぁ、どこに隠すんだよ。

 隠すために持ち出すなら、隠密隊に見付かるだろ?


 まぁ、隠密隊が知らなかった出入り口があったけどさ、隠密隊が知らないってことを俺は知らなかったからなっ!


 おそらく賊は、その出入り口で逃げたんだろう。

 だから、探しても宝なんざぁ無いっ!

 隠密隊とも一緒に探した結果だから、後は隠密隊に確認してくれ」


だいたい、俺の任務は賊アジトの偵察であり、可能ならば討伐ってヤツだ。

お宝確保なんぞ任務に含まれてはいないかんなっ!


「部隊長殿。

 サイガ殿が告げているのに、間違いはあをません。

 サイガ殿が帰投後、再度、我らにて探索しておりますが、それらしき物はありませなんだ。

 それに、外へと運び出した痕跡が隠蔽されておりましたゆえ、やはり賊が運び出したのかと」


おしっ!ナイスフォローっ!

それを聞き部隊長も納得したのか、残念そうに肩を落としてんな。


まぁ、討伐隊の派遣にも金が掛かるもの。

特に今回は、賊に壊滅させられた部隊も出ており、見舞金などを考えると、賊の宝にて補填したいところだろう。


あちらの都合も分からんことはないが、実際に手柄を立てたのは、俺1人であり、その戦果を当たり前のように横取りしようとされてもなぁ…

納得できるかっ!


以前は亜空間倉庫もマジックバックも無かったため、大半を接収されてたからな。

たとえ俺1人の戦果だとしてもだっ!

今までの仕返しではないが、俺が得た物は渡さんよっ!

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