第33話

隠密隊の説明もあり納得した部隊長へと、完了証明書を差し出す。

「サイン願います」ってな。


今回の依頼は領軍からではなく、国軍経由にて受けたものだ。

任務自体は領軍主体となるが、完遂報告先は国軍となるんだよ。


その報告に完了証明書が必要で、任務完了のサインを、現地責任者より貰わなければダメなんだ。


領軍野営地へ預けてあった荷物を、野営地に戻った際に引き取って来ている。

侵入任務の場合、余分な荷物の持ち込みは厳禁。

ゆえに野営地へ預ける訳だ。


むろん貴重品は亜空間倉庫内だぞ。

だが亜空間倉庫を知られるのは、色々と拙い。

今の所、教えているのはユンファだけだ。


そのため、カモフラージュ用のカバンを、野営地にて預けたという訳だ。

その荷物の中には、完了証明書が入った書類箱がな。

このような任務を行う場合、預けない者はいないんだから、しかたない。


この書類箱は魔道具でな、任務遂行者の魔那パターンを登録し、登録者以外が開けられないようにロックをな。


書類箱を抉じ開けたり破損させた者がいた場合、その魔那パターンが司法当局の魔道具へと送られる。

その場合、事件として即座に捜査されることになるんだと。


だからロックした書類箱を預けても安全って訳なんだ。


そんな書類箱のロックを外し、取り出した完了証明書を部隊長へとな。

賊の壊滅という絶大たる成果をあげたからには、サインを渋る筈もない。


すんなりとサインを貰えたので、完了証明書を書類箱へと収めロック。

後はマチルタ中尉へ提出すれば、任務完了だな。

帰ろうかと考えていると、隠密隊の隊長が俺へ書類をな。


「なんです、これ?」

不思議に思いながらも受け取り、内容を確認すると…


「これって…討伐した賊の詳細ですか?

 調べて下さったんですね。

 ありがとうございます」って、思わず礼をな。


したらな。

「うむ、破損が酷く判別し難い死体も多かったゆえ、完全とは行かんがな。

 しかし…マジックキャスターが、少なくとも2百名近くは居たと思われるな。

 騎士崩れや侍などの剣豪。

 斥候職もだが、忍などやアッサンシーもだ。


 あれだけの賊と闘い、良く生き残れたものだ」

そう関心してるな。


なになに、総勢5百名近い賊が居たと?

テイマーが使役していたモンスター多数で、変化へんげした巨大モンスターを確認かぁ。


あのモンスターは、ヤバかった…

倒したっうよりも、無理矢理自滅させたかんなぁ。

2度と、あのクラスのモンスターとは、相対などしたくないものだよ、うん。


隠密隊の隊長が、部隊長にも同様の資料を渡している。

まぁ、直属の上司だもんな。


そして受け取った部隊長なんだが…

「な、なんじゃぁっ!こりゃぁっ!」ってな。


そがぁに、大袈裟に驚かんでもよ。


「これって…本当のことなのか?」

震える声で確認している。


隠密隊隊長が、深く頷いてんな。

部隊長がフリーズ。


まぁなぁ。

俺が依頼を受けねば、いずれは領軍が討伐を強要されてただらうかんな。

領軍としての面子もあるため、強制的に突撃させられただろう。


そうなれば、絶対に領軍は壊滅していただろう。

なにせ、マジックキャスターの数がちげぇっ。

さらにテイマーが使役するモンスターの群体が襲い掛かる訳で…


うん、全滅する未来しかないな、これ。

なにせ軍隊として動くため、潜むことなどできないし、部隊で固まって動くんだから、術の良い的だ。

蹂躙されんだろ~なぁ~


そんな未来があったことを知り、部隊長真っ青。

倒れそうなのだが…大丈夫か?

うや、倒れた。


野菜畑の上へ倒れたから、畑の土がクッションにな。

怪我なくて良かったね。


そんな部隊長をチラリと見て、俺は告げる。


「さて、俺の用事は終わったから、帰るわ」ってな。


「いや、この状態でか?」っと、隠密隊隊長が困ったように。


部隊長以外の隊員達も、ショックでフラフラしてんな。

ライラやトトなどの女性陣が混ざってんなら一考するが、生憎なことに全員が男性。


トトは隠密隊の隊員に護衛して貰いながら、外で飛竜の世話だ。

ライラは野営地にて急病人の手当てしてたから、野郎聖術師が来てんだわ。


だから、もう一度言う。

野郎は、知らんってな!

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