第27話

俺の方はスライムが魔那濃度を調整してくれるから、魔那酔いにはなってない。

特にホワイトとブラックの2体は、体内の魔那濃度をも制御してくれるため、魔那枯渇や魔那酔いになる恐れがないんだよ。


これは魔法生物の特徴でもあるが、特にスライムは魔那制御に長けているみたいだな。


魔術学院の導師様が仰るには、魔那は万物の基らしい。


魔術的には、魔那より魔素が生まれ、魔素から魔力に至りて術となるらしい。


だが、物質は素粒子と言われる物で構成されると、先史機械文明期に書かれた文献に記されているらしい。


それに対し、魔法文明期に素粒子などの物質構成素子は、魔那と言う霊的因子にて成り、全ては魔那にて生まれていると、されているそうな。


うん、意味分からん。


だが、魔那が増えすぎても、減りすぎても拙いらしいことは、学生さんが教えてくれた。


っか、あの導師様は俺に会う度に、ご高説を述べられるのだが、分からんてぇのっ!


だが、無駄知識も、役立つことがあるようだ。

高濃度魔那に曝されたモンスターが変化へんげし始めてな、その原因が予測できたからなぁ。


だからな、スライム達に、できるだけ魔那濃度を下げて貰ったんだが…生き残ったマジックキャスター達が、変化しているモンスター達へ術を!

俺が移動した場所では、魔那濃度が下がっているんだが、そこへモンスターが引き寄せられるように。


一定濃度に落ち着いた空間へと逃げ込んだのだろうが、マジックキャスター共が放った術にて、高濃度魔那が濃度の低い場所へと。


渦を巻くかの如く、魔那が薄めた筈の場所へ。

逃げ込んだ筈の場所へ、魔那が雪崩込み、モンスターの変化が加速する。


これは、ヤバイっ!

体がボコボコと膨れあがり、皮膚が弾ける度に肉が盛り上がる。


体毛が鋼の針へと変わったかのように。

数メートル級の巨体となった体は、いびつゆがんでいるな。


巨体に似合わない素早さで、賊達を薙ぎ倒し始めた。

口内がチラリと見えたが、舌さえも針のような物で覆われ、口内が牙と言うか、針が無数に生えていた。


手に指が複数。

いや、指っと言うよりも爪か?


理性を失い暴れ回ってんだが…アレの討伐は、無理だぞ。


最後の賊が食い殺される。

最後は自滅だな。


巨大化したモンスターは、その巨体ゆえに洞窟より出れそうにない。

その点は安心だが、誰かが迷い込んだら危険だ。


いや、それよりも…領軍が現場検証を行うはずだから、領軍に犠牲者が出るだろう。


この侭だと拙いな。

さて、どうするか…


俺の攻撃では、傷1つ負わせることができないであろう。

つまり、攻撃による討伐は無理ってことだな。


なら、魔那濃度を下げてみたら?

たぶんダメだろうな。

既に体内へ取り込まれた魔那は、周囲の魔那濃度を下げても抜けることはないらしい。


だが、魔那濃度を上げると、体内へ取り込む魔那が増えるらしいわ。

そうなれば体内魔那が増え、最後には制御不能になった魔那にて暴走するはず。


スライム頼りとなるが、他に手はない。

原型が不明となったモンスターが、殺した賊を漁っている。

賊の死体へ魔那を押し込めさせ、モンスターの側へと。


直接モンスターの体内魔那を、スライムに操らせたいのだが、それにはスライムがモンスターを触れる必要がある。

流石に危険すぎるため、死体へ魔那を込めてモンスター付近へ置くことにな。


何体の遺体を使用しただろうか?

ようやく、モンスターの体が崩壊し始めた。

藻掻き苦しみ暴れるモンスター。

危なすぎるため、離れて様子を伺う。


そして、ようやく崩壊しつくし崩れ去った。

終わったか…


洞窟内の魔那濃度も落ち着いている。

洞窟内や室内などで、魔那を用いた高威力術を行使すると、魔那濃度が上昇するとはな。


そのような術は開けた場所にて放つのが常識であり、このような場所で行使されることは稀。

しかも数多の術師が多量の術を、しかも同時期に同じ場所…それが屋内とは、前代未聞であろう。


過去にマジックキャスターを伴う大規模な戦争があり、大規模な術の撃ち合いがあったらしい。

そんな戦場跡には魔那溜まりが発生しており、野生生物の凶暴化およびモンスター化を招いていると聞く。


つまり、その規模の現象が発生していた訳だ。

ちなみに魔那溜まりにてのモンスター化やモンスターの変化は、長い時間を掛けて成される。

この度のような短時間で効果が発生したのは初めてではないだろうか?


俺、良く生き残れたなぁ…

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