第22話

「資料をお持ちしました」って、司令副官がな。

本当に、ここでかよっ!


まずは地図だな。

なにせラウンドリムには、無数の洞窟や遺跡が存在し、問題の洞窟付近にも、幾つかの洞窟がな。


くだんの洞窟内部が不明だが、洞窟内から先史文明の遺跡へと到る場合もあるんだ。

国軍いわく斥候喰らいの穴が、そのタイプだ。


なので、間違って違う洞窟へ行かないように、シッカリと確認が必要なんだわ。


「この地図は、頂けるので?」っと確認するとな。


「国軍推薦者へ配布予定の品ですから、お持ちいただいて結構ですよ」ってな。


まぁ、地図が有れば迷わんだろ。

さて詳しい話を…


「ない」

をい、司令ぃぃっ!


「しかたあるまい。

 賊の人数、構成が全て不明。

 探ろうと斥候を送り出したら、帰ってこん。

 下手に近寄れば、部隊が壊滅だ。


 被害がデカすぎて、探れんのだ」

かぁぁっ、厄介な相手だなぁっ!


イドラの蛇よりは、規模が劣ると推測されているが、厄介度は変わらんってか?


「しゃぁない、現地でなんとかする!

 今度、なにか奢れよ。

 貸しだかんな」って、席を立つ。


「いつ向かう?」って尋ねるからな、「明後日だな」ってな。


「ふむ、ユンファには告げて行け。

 ダズの二の舞はゴメンだからな」っとよ。


「いやいや、流石に司令をブッ飛ばさんだろ」ったらな、苦笑いして…


「前にブッ飛ばされたわっ!」ってな。

いやユンファ…おま、なにしとんの?


まぁ、ご領主様一族の末ではあるから、罰せられんのかね?

っても、平民あつかいなんだが…


「アヤツの祖父が、儂の友でな。

 幼いころから知っとるのよ。


 前にモンスター氾濫の調査依頼したろ?

 普通の斥候ならば、まずは生きて帰れん。

 ゆえに、貴様に頼んだのだが…

 死地に送ったとな。


 あれには、参ったわい」って、大笑い。

いや、笑い事か?


まぁ…ダズにしても、司令にしても、大男。

それをユンファのような小柄な女性が吹き飛ばせば、そら、痛快だろう。

しかもユンファ、修道服だし。


大男を宙に舞わすシスター…

酷い絵面だなっ、をいっ!


顔が引き攣るのが自分でも分かるが…

「分かった、伝えとくわ」ってな。


そう告げて、領軍基地を後に。

っか、門番詰め所は基地内になるのか?

門前払い扱いじゃあるまいなっ!


しかし…ユンファと恋人…いや、結婚などしたら…吹き飛ばされる未来しか…

一生尻に敷かれる?

なんだか…ズゥゥンっと、暗い気持ちになるんですが…ぐっすん。


時間的には、午後早い時間帯。

この時間帯なれば、色々と準備可能だろう。


食い物は、露天にて出来立てを色々と。

一応、調理前の食料もな。

食器や調理道具などの調達も。


それら、すべて亜空間倉庫へと。

鞄へ仕舞うように取り込んでっぞ。


お高いが、物を大量に仕舞える鞄は売ってるからな。

先史魔導文明で造られたタイプや、それには劣るが、南方魔導都市にて造られ続けられてもいる。


まぁ、滅多に世へ出ないが、魔法文明期に造られたタイプは、大量に仕舞えるうえに時も止まるらしい。

っか、俺が使ってるヤツな。


っても、指輪タイプは聞いたことがない。

知られれば、騒ぎになるだろう。

だから、鞄へ仕舞う振りをしてんだがな。


食料を買ったから、次は魔道具を買うところなんだが…

亜空間倉庫へ全属性スライム揃ってっから不要だったりする。


アクアスライムが水を出すから水補の魔道具は不要。

湯も氷でさえスライムが出してくれる。


火もだが、温風に冷風などをスライムがな。

スライム活用すれば、実に快適な暮らしが可能なのだよ。


しかも、普段は亜空間倉庫へ仕舞えるしな。

っても、自宅ではブロブを含め、全スライムを出している。


結構、頭が良いし、愛嬌があって可愛いんだぜ。

なにより、寝ている時に寄り添って来るんだが、そのためか体の調子が良いんだ。

肌艶や髪艶が増してな、ユンファに問い質されて参ったりな。


まぁスライムが、有能ってこったな。


マントや毛布などの野営具は、元々持っている。

テントや寝袋は、非常時で咄嗟の行動を疎外するため使用しない。

防水マントと防水シートがあれば、雨の日でも凌げるかんな。


良し準備は、こんなもんかね。

今日は帰って、明日にでもユンファに会うか。

そう考え、夕闇迫る道を自宅へ辿るのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る