第21話

中尉との話でな、イドラの蛇へ挑む前に腕試しをすることに。

強敵であるヤツらのアジトへ忍び込む前に、己が現在、どのくらいの力量であるかを把握するためだな。


相手が相手だけに、念には念を入れねばなるまい。


領軍が把握している盗賊団の内、イドラの蛇下部組織と思わしき賊がな。


ここ南東部地方の西側で暴れてあるらしい。

商隊の幾つかが襲われ壊滅し、討伐隊を送ったのだが、アジトとしている洞窟内に立て込もり、手が出せないのだとか。


煙りにて燻したりと、色々試したらしいのだがな、マジックキャスターに邪魔されてダメだったと…


領軍の被害も甚大で、討伐困難らしい。

迷惑なヤツらだ、まったく。


この町から5日の距離へ、そのアジトがあるらしい。


ラウンドリムに限らず、先史文明遺跡やモンスターが掘った洞窟が散在しており、盗賊が根城にする場所は、枚挙に暇がない。

ヤツらも、そんな場所を流用しているんだと。


出入り口は3つ。

まぁ、確認できているのが、だが…

一応は、領軍が見張っているらしい。


俺は詳しい情報を得るため、領軍基地へとな。

まぁ、その前に腹拵えだな。


ホテルから領軍基地へ向かう途中に、スープパスタの店がある。

位置的に都合が良いため、ここで遅い昼飯を。


細麺パスタをフォークで巻き、口へ入れた後でスープを飲む。

このパスタを巻き込む際に、具を一緒に巻き込むのを忘れてはならない。


具も細切りにされており、パスタと共に巻き込み易くなっているんだ。

薄切り卵焼きに千切りベーコン。

複数の千切り野菜もな。


手早く食べれ、安くて美味い。

庶民の味方さね。


腹も満たされたことだし、行きますかね。


領軍からの依頼は、過去に何度か受けている。

斥候としての一時雇いが主だが、従軍中の食料確保を行うためとし、猟師として雇われたりな。


だから知り合いも多い訳で…


「おっ、サイガ?

 死んだと聞いてたが、生きてたんだな。

 まさか、アンデッドではあるまいな」


基地へ顔を出すと、いきなりな。


「アンデッドちゃうわっ!

 生きとるわい!

 っか、勝手に殺すなやっ!」


「おおぅ、突っ込むねぇ…

 間違いなく、サイガだな」


「いやな、確認のしかた、すなっ!」

疲れるわいっ!


「まぁ、生きておったのなら良い。

 だが…10日以上も音信不通なのは、いただけんな。

 依頼があるが、頼めんではないか」っと。


「いやいや、基地司令のアンタが、なんで入り口詰め所に居んねんやっ!

 っか、門兵とチェスしとってえんかいっ!

 仕事はどうした、仕事はっ!」

なんで、こんな所にいるんだよっ!


「朝方忙しくてな、今、昼休み中だ。

 コヤツも門番交代にて休息中でな。

 コヤツがな、チェスが強いのが悪いのだ。

 なんど、やっても勝てんでな」


そんなことを司令が言ってるとな。

「また、ここに居るんですかっ!

 国軍経由にて依頼を受けた方が来られますので、司令室へ戻ってください!」


ほらみろ、副官が呼びに来たろうがっ!


「むっ!今すぐか?

 今、良いとこなのだが…」

知らんがなぁ~っか、仕事しろっ!


「西の洞窟へ立て込もった賊の案件を引き受けてくれる方が見付かったそうなのですよ」


んっ?それって…


「なら、帰って貰え、サイガへ依頼するから不要だ」

そう司令が告げるとな。


「だから、サイガさんは、死んだってことでしょっ!

 死人に依頼するんですか?」

いやいや。


「俺、ここに居ますが」ったらな。

「アンデッド?」って…


「生きとるわい!

 勝手に殺すなっ!

 っか、この下りは、さっきやったわっ!」

「ああ、この突っ込み…間違いなく、サイガさんですね」

「それを、判断基準にすなやっ!

 っか、国軍経由で依頼受けたのは俺じゃっ!

 たったと情報寄越さんかいっ!」ったらな。


「ああ、サイガさんが受けたんですね。

 なら対応は、ここでも良いですな。

 今、資料を、取って参ります」って、詰め所から出てった。


「っか、雑ぅっ!

 俺の扱い、雑すぎね?

 俺、国軍から依頼受けて来たんだけど?」

理不尽やん。


「あほう、どこから依頼を受けようが、身内なら態度は変えんわい」って、司令がな。

何気に嬉しいが、油断したらダメだ。

身内価格って扱き使おうとするからな。


油断なんねぇっ!

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