第20話

「ヤツらの斥候が優秀でな。

 こちらが送った者達は全て見付かっておるのだよ。


 しかも、保有魔那を測るように察知する者が居り、命絶え絶え帰投した者が「甚振られ見逃された…」っと告げつつ齎した情報だ。


 告げた後、亡くなったらしい…


 つまり、我が軍の者では忍び込むことも不可能なのだよ。

 見付かれば、助からぬのだ…


 そこで、斥候喰らいの穴より生きて帰った貴兄なれば、殲滅は無理でも情報を得られるのではないかと。


 ヤツらが、何を企んでラウンドリムへ潜んでおるのかも不明なのだ。

 上が不安がってね」


それで、この報酬…ちなみに前金だとさ。

成功報酬は別。


成果で報酬が上がるのだとか。

確かに報酬としては美味しいが…

依頼内容は最悪だ。


見付かれば助からないが…


「俺は魔那探知されないから、その点は大丈夫だな。

 気配を消せば、ユマガカでさえ、助からぬ目の前に居る俺に気付かないだろうし」


「それは、大袈裟ではないか?

 ユマガカは別名、死神との言われるモンスターであり、ハンターだぞ。

 ヤツらの近くへ潜んで見付からないなど、有り得ん。

 それが本当ならば、人が気配を捉えるなど不可能なのだがね」って、呆れたように。


「いや、実際に目の前まで来たからな。

 まぁ、指輪の力ではあるのだが…」

そう告げ、俺は気配を消す。


「なっ!バカなっ!

 姿が消えた!?

 移動した痕跡もなく、魔那も感じられなくなった…

 まさか…瞬間移動かっ!」


なんで、そうなる?


「俺は、魔術も魔法も使えんわっ!」って、潜むのを止める。


「ぬわっ!

 どこから現れたっ!」って仰天してんな。


「どこへも行っとらんわっ!

 ここに座った侭、気配を消しただけだ!」ったらな、細目をひん剥いてんぞ。


まん丸な、お目目が新しい。


「うそでしょっ!

 完全に消えてたわよ、あなた!」

いや、素が出てますよ?


「命掛けで手に入れた指輪の力ですよ。

 まぁ、私と同化して外せなくなってますけどね。


 もし外せたとしても、外したら塵と化しますね。

 これは、死体から指輪を外して検証済みですので」

外したら、ついでに俺も塵と化すだろうが…不利になることを言う必要無かろう。


「凄まじい力ね。

 でも、手に入れるには、斥候喰らいの穴へ挑み、生還するしかないと…

 手に入れるのは、不可能ね」

まぁ、無理だろう。

俺から徴収しようとして失えば、その損失は莫大だ。


国としても、看過できまい。

強硬し失敗して知られたら、下手したら死刑だろう。


まぁ、過去に遺物を得た者より強制徴収を行い、遺物を損失させたバカが居るらしい。

その時代での刑罰だが…親族全て打ち首だとさ。

幼子、老人を含む全てな。


今は昔ほどではないが…1等親親族は縛り首だろう。


「ゆえに、貴兄から奪う者は現れない。

 狙ったことがバレた場合、流島となるゆえな」

口調を戻した中尉が、そのように教えてくれた訳だ。


取り敢えず、指輪の強制徴収が発生しないことが分かり、一安心だな。


しかし…イドラの蛇かぁ…


今の能力で覚られずに忍び込めるかは分からない。

分からないが…試金石にはなるだろう。

チップは、己の命だが。


中尉が言うには、イドラの蛇が潜んだ場合、国家転覆の恐れがあるらしい。

良くて内乱か騒乱な。


国内が乱れ、国が滅びなくとも国力は落ちるだろう。

それに乗じて他国が介入って言う侵略を。


世界のあちこちで、実際に起こった話なんだよ。


非常に迷惑なヤツらだが、実力高く討伐困難っか、不可能。

総員数は不明。

調べれた者なし。


多くのマジックキャスターが在籍していると思われるが、何人か、その職種はなにか、全て不明。


つまり、何も分からないと?


「だから手の打ちようもないのだよ。

 情報だけでも良いのだ。

 この侭、手を拱いていては、有事に備えることも、侭ならん」


まぁ、放っておいたら、俺達も巻き込まれる可能性がある案件だ。

受けざるを得んか…


「分かりました、受けますよ」っと、渋々な。


それから、色々と打ち合わせ…終わったら2時頃だったよ。

流石に疲れたぜっ!

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