第19話

「なっ!貴様!マチルタ様のお話を遮るなど、無礼であろう!」って、フウラル副官が激昂。


いや、知らんがな。

受けるのが当然てぇ態度が気に入らん。


「確かに依頼いただきましたが、お受けするとは、一言も申しておりません。

 なのに、なぜ仕事の内容を、お話になるので?」

告げるとな。


「貴様、無礼にも程があろう。

 仮にも国軍からの依頼ぞ。

 断れるとでも?」

見下したようにな。


こりゃ、ダメだな。

席も勧められず、こちらは立った侭だ。

挨拶と同時に受けるのが当然か?

呆れて帰ろうかと思ったのだが…


「フウラル、止めよ」ってマチルタ中尉がな。


「ですがっ!」

「止めよと言った」

ギロリっと、フウラル副官を睨め付けてな。


「ぐっ!

 イエス、マム」って、敬礼。

軍隊だねぇ…


「失礼した、立った侭ですまなかったね。

 どうぞ、座ってくれたまえ」ってから、にっこりと。

このマチルタ中尉って、食わせものやもな。

わざとだぞ、さっきの態度…


おそらくだが、こちらの出方を伺ったな。

中尉やフウラルの態度に激昂し、直ちに態度へ出れば失格。

中尉の強引な態度に、良いように操れるなら、その程度と。

そして、意思を貫き態度に示そうとしたら合格か?


交渉相手として認められたらしい。


「さて、話を始める前に…フウラル」

「ハッ!」

「席を外せ!」

「へっ?いや、しかし…」

「もう1度だけ言う、命令である。

 席を外せ!」

穏やかに、しかし意思の強さが伺える声でな。


「ぐっ。

 イエス、マム!」って、敬礼後に退出。

まぁ、俺を睨んでからだが。


俺が、なにしたよ?


「失礼した。

 では、話を始めさせて貰おう」ったのでな。


「あの副官…わざとだろ?」

「なんのことかな?」って、にっこり。

この女狐めっ!


激昂し易い未熟者を副官として同席させたのだろう。

それで、俺の態度をはかったと。


俺が交渉に足ると判断したため、邪魔な副官をな。

まっ、そんなとこか。


「まずは、そちらの質問に答えよう。

 なぜ貴兄を指名したかだが…貴兄が斥候喰らいの穴から生還したからだな」


んっ?ちょっと待て。

まさか…

「あんたら…あの洞窟のこと、知ってたのか?」って尋ねたらな。

「国軍内では、割りと有名な話だからな」ってな。


話を聞くと、過去に大規模な探索隊が組まれ、洞窟探索が行われたそうだ。

当時、斥候隊のエースも送り出されていたのだが、誰も戻らなかったのだとか。


「貴兄を呼んだ理由の1つに、洞窟の正体の聞き取りもある。

 機密事項ゆえ、フウラルを退席させた訳だ。

 して、あの洞窟で、なにがあったのだね?」


尋問ではないが…有無を言わせぬ感じか。

こりゃ軍務にて引けない感じだな。

まぁ、話しても良かろう。


「あそこはな、魔法文明期の遺跡でな…」って感じで、なにがあったのかをな。


「まさか…モンスターの巣であるとは…

 ギャブやソムラムだけなら、まだしも…ゴライゾンだと?


 ゲータにラニャンとジェロム…

 大蛇はグゥーヴァ、大蜘蛛はバズか?

 ラットやオークは兎も角、ピファルターだと?


 貴兄、話を盛っとらんか?」

失敬な。


「あんなぁ、戦って勝ったなら兎も角、こっちは潜んで、やり過ごしただけだ。

 まぁ…生きた心地はしなかったがな。

 それでもな、指輪を嵌めざるを得ない時の絶望感よりは、マシだ」

なにせ、前例が目の前に転がってんだからなっ!


「そ、そうか…良く生き残ったものだ」

「自分でも奇跡だと思ってるよ。

 2度目は無理だから、2度とごめんだがな」


無理矢理命じるならば、国外逃亡も辞さん!


「了解した、上へ上申しておこう」

顔を若干引き攣らせた中尉が請け負う。

っか、探索させる気だったな?


「こほん、まぁ…貴兄を選んだ理由は、分かって貰えただろう。

 それで報酬なのだがな…」

「いや、これ…良すぎないか?

 っうことは、相手が最悪ってことになるんだが…俺で可能なのか?」


正直、報酬の桁が違った。

この額をやるから死ねったら、家族のためって死ぬヤツが現れてもおかしく無いったら分かるか?


「イドラの蛇だ」

最悪極まる!


「それ、世界的テロリスト集団だからねっ!

 魔術師や精霊魔術師に聖術師などのマジックキャスターが居るって話じゃないか。

 腕が立つ騎士崩れに侍や忍者が雇われていて、陰陽師や鬼族が加担しているって、噂を聞いたんだが…」


「まぁ…事実、だろうな。

 国軍の中隊が全滅したのでな」


はぁ?そんな相手を、俺1人で?


「見付かった時点で、こちらは殺られるレベルなのだよ。

 だから見付かってダメなのだ」


なんだよ、その無理難題はっ!

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