第18話
町へ帰って来た翌日、借り屋である安アパートから這いずり出た俺は、朝食を摂りに近くの喫茶店へと。
カラン、カランっとカウベルが出迎えてくれる。
「お早うさん」って、マスターへな。
「おぅ、昨日、帰って来たってな。
おまえさんの死亡説が流れるわ、ダズがユンファにブッ飛ばされるわで、話題には事欠かんかったぞっ」ってなことをな。
「まあ、今回は本気でヤバかったがな。
あっと、何時もので」
「あいよ、何時ものな。
ちょっと待ちな。
そうそう、おまえさん名指しでの依頼が来てっぞ」
マスターがモーニングを用意しつつ、そんなことをな。
「んっ?
遺跡探索の斥候かい?
それとも、なにか狩って来るってか?」
そう尋ねたらな。
「いや、盗賊討伐だとさ」っうことをな。
「いやいや、討伐って…
俺、斥候なんだが?」
前衛的肉体労働は、苦手です、はい。
「それがな、洞窟を拠点に潜んでるらしいんだわ。
内部は入り組んでてな、下手に人数を送ると返り討ちに会うそうな。
なので、身軽でヤツらを討伐可能な者ってことで、あんたが候補にな」
う~ん…暗がりからの不意討ち系、暗殺型討伐ってことかな?
それならば、俺向きではあるが…
「エリちゃん、運んでやって」っとマスター。
給仕のエリちゃんに、モーニングを俺へ配膳するようにな。
そして、スープとトーストにハムエッグ、カリカリベーコンとソーセージ3本、それにサラダと珈琲だな。
こいつが、ここで俺が頼む定番朝食だ。
ここは借り屋から近いし飯が美味い。
特に珈琲が絶品でな。
さらに仕事の仲介もしてくれるから、重宝するんだわ。
俺は美味い朝飯を味わいながら、マスターへ尋ねる。
「それで依頼者は警備隊?
それとも領主軍かい?」
そしたらな。
「国軍らしいな」ってな。
いやいや、ちょっと待て。
国軍依頼てぇのは、穏やかじゃぁねぇっ!
国軍依頼ってぇことはだ、国軍が討伐を試みて失敗したってぇことだろ。
しかも地方の賊は、その地方の領主軍が討伐するのが慣例となっている筈。
それを国軍が行ったてぇことは、領主軍の手にを得なかったてぇことだ。
そんなんを、俺に振るのか?
「それって…お断りは?」ったらな。
「直接、相手へ御願いします」ってマスターにっこり。
ですよ、ねぇ…
美味い飯を渋い顔で片付け、勘定を済ませて喫茶店を後に。
向かうは、ここら辺では一流のホテルだ。
国軍のお偉いさんが来ているらしい。
しばし歩きホテルへと。
以前よりも歩む速度が上がったので、移動には、さほど時間は掛かってない。
なので、結構早い時間なのだが…相手方の準備は、大丈夫だろうか?
ホテルへと入り、フロントへと。
「国軍のマチルタ中尉という方が、ここへ泊まっておられる筈だ。
俺はサイガと言って、中尉から呼び出しを受けた者でな。
面会したいので、連絡を頼みたいのだが」っと頼むとな。
「かしこまりました。
サイガ様ですね。
マチルタ様より承っております。
3階の椿の間へお向かいください。
これより係りの者が、案内いたしますので」
そうフロントの者が告げると、壁際に控えていた者が俺へと近付いて来た。
「ご案内いたします」
そう告げ、俺をエスコート。
魔道エレベータにて3階へ。
魔道エレベータって…結構な値がする筈だぞ、流石は一流ホテル。
そして椿の間とやらへ。
ホテル従業員がドアをノック。
応えを受け、ドアを開けて俺を通してくれた。
いた競りつく競りってヤツだな、うん。
俺が室内へ入ると、ホテルマンはドアを閉めて去って行ったよ。
室内へは、軍服を纏った女性と、彼女の副官と思われる女性が居た。
2人だけみたいだな。
「はじめまして、サイガと申します。
本日は私のような者へご依頼いただけるそうで、ありがとうございます」
そう告げ、一礼を。
したらな、にっこり笑ったマチルタ中尉が…
「これは、これは、ご丁寧に。
私がマチルタ、こちらが副官のフウラルです。
本日は、足を運んでくださり、ありがとう。
早速ですが、詳細を…」
いきなり本題をかよっ!
「待ってください。
まずは、なぜ私が指名されたのかを、お教え願います。
それに、対価についてもお尋ねしたい」
仕事なんだからな、当然のことさね。
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