第16話
木々の枝を伝うように、樹上を疾走。
慣れると楽だし、移動も速い。
地上を走るのなんて、考えられんね。
馬車移動など、タルくて無理だわい。
1時間も掛からず町へと。
盗賊もどきを見付けたが、村から5分も掛からない位置だから、村まで1時間以内に行けるということだな。
馬車で3日掛かる所をかぁ…以前の俺では、考えられんな。
町前に着き門へと。
門番が検閲しているが、入門許可書を持つ者は、見せるだけで通される。
まぁ、不審者が入り込まないかを確認しているだけだからな、顔見知りなんざぁフリーパスっとね。
今の時間は人通りも絶えており、並ばなくとも門番前へと。
したらな。
「んっ?サイガじゃねぇか。
おまえ…生きてたんだ」ってか?
「いやいや、勝手に殺すなやっ!
なんで死んだことになってんだよっ!」ったらな。
「そらぁ、おまえ、10日以上音信不通だぞ。
しかも、祭りが大好きな、おまえの姿が祭り時期に見えねえ。
なにかあったって騒ぎになってからな」
あちゃぁっ!
そんな騒ぎに…
どうせ騒いでんのは、ユンファだろうなぁ~
下手したら、ダズが締め上げられてっかも…
「ユンファが泣き叫んで、ダズをノックアウトしてたぞ。
良い酒の肴あつかいで、酒場が盛り上がったそうだがな」って、ニヤリと。
こらぁ、ユンファに会いに行かねぇとダメだな。
「そんな騒ぎになってんだな。
取り敢えず、ユンファんとこへ顔だすわ」
そう告げてから門を潜る。
門から教会まで移動しているとだ、顔見知りと出会う度に…
「うぉ、サイガ!?
生きてたのか!?」っとか。
「あら、サイガさん?
幽霊でなく?」などと…
死んでないからなっ!
教会へと辿り着き入ると、御神体の前で呆けたように座り込むシスターが1人。
うん、ユンファだな。
俺がサイガとして、この町へと辿り着いた時からの知り合いだ。
明るく、お節介焼きで、おっちょこちょい。
軽いドジッ子属性まで付いてます。
こう見えても、高位の癒し手でな。
エクソシストとしての能力も高い。
町酒場にて情報得た仕事を請け負いに行った先で出逢ったのが、付き合いの切っ掛けでな。
以来、ダズを含め、何人かと組んで仕事をさ。
特に癒し手であるユンファは引く手数多ってヤツでな、いわゆる売れっ子ってぇヤツだ。
そして、手前味噌ではあるが、斥候である俺も一目置かれる存在でな。
まぁ、2人して引き合いが多く、その分依頼元が重なる訳で…
良く一緒の依頼をな。
まぁ、ダズもなんだが…
そんなんで仲も良くなったんだが、最初の頃は反りが合わずに喧嘩ばかりしてたもんだ。
なんどかユンファの危機を救ったら、妙に懐かれてな、今度は色々と世話焼きってな。
野菜食え、夜更かしするな、飲み過ぎるな…
おまえは、俺のお袋かってぇのっ!
まぁ…好意を向けられているらしいことは、なっ。
だがなぁ…あいつは教会の侍祭さま。
俺は、しがないフリーランサーの斥候さね。
釣り合いがなぁ…
そんなん思ってっと…ユンファが俺に気付いたようでな。
「サイガ?本当に?
幻覚でなく?」
いや、幻覚って…
「ただいま。
ちと、遅くなっちまったわ。
だけどよぉ、皆酷いんだぜ。
会うヤツ、会うヤツ、皆が俺が死んだと思ってやがんだわ。
有り得ねぇってな」
肩を竦めて告げると…
「バカ…帰って来るのが遅いのよっ!
でも…無事で良かった…
お帰り、サイガ」
「おぅ、ただいま」
俺の胸に顔を押し付けて泣いてんだが…扱いに困る。
まぁ、しばらくは、この侭でな。
ようやく落ち着いたユンファがな、ハニカミながら…
「マーフィ様の御神託と異なっていて良かった…
サイガが試練にて死地に陥り、死の危機に陥るであろう。
そんな、御神託が下ったのよ。
御神託だからサイガが死んじゃうって思って…
でも…生きて帰って来たもの…」
おいおい、マーフィ様?
出掛ける前に警告として、御神託いただけませんかねぇ。
「あんな、その御神託なんだが…合ってっぞ」ったらな、何言ってんの?って顔にな。
だからな、あの地での試練についてな。
っかな、話していると…良く生き残ったな、俺…
染々、そう思ったよ。
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