第15話
村人達が帰って来て、チーズ加工場も操業を始めた。
ミルクも引き渡したし、報酬も貰い、さらに購入もな。
村長から「いつでも買いに来るが
これで、村でやることは無くなったので、町へ帰ることに。
馬車へは乗らない。
村から出て森へと。
町の方向は感覚的に分かる。
なぜ分かるのかは疑問だが、分かるのだからしかたない。
木の枝へと跳び乗り、木の枝から木の枝へと走るように跳び移る。
風が非常に心地良い。
しばらく走っていると…薄汚いなりをした男達が、森の一角へ屯していた。
カタギでは、ない、な。
俺は男達の傍らへと忍び寄り、ヤツらの話に聞き耳を。
「で、頭。
その村を襲って、本当に、金になるんで?」って、確認している者がな。
したらな、頭と呼ばれている男が…
「おめぇはぁ…何度言っても分からんヤツだなぁ。
いいか、あの村には香辛料が有る。
香辛料っていやぁ、大枚叩いて買う輩も居る
だから、そんなお宝を奪えば、俺達も大金持ちっう、寸法よ」
そんなことをな。
いや、この頭…バカだろ。
香辛料なんて代物は、誰でも買える物ではない。
代替え品が安価に出回っており、庶民は、それを香辛料っと思い込んでいるんだわ。
だが…本物の香辛料は高く、庶民の手にはな。
だが、代替え品が塵屑と言える味と香りを誇り、本物の味を知ると、代替え品なんぞは、なぁ…
そんな香辛料だからこそ、売り捌くには、販売ルートが必要。
無ければ、売れるものではない。
しかもだ、あの村は国から委託生産あつかいにて、香辛料を生産している。
つまり、あの村を襲うと言うことは、国に喧嘩を売るに等しい訳だ。
そんなことを考えているとな、頭へ尋ねていた子分がな。
「あのでやすね、販売ルートとか、あるんでやすか?」ってな。
コヤツ、分かってんじゃん。
したらな、頭がポッカァ~ンっとした後。
「販売ルート?
なんでぇい、それ?」って…いや、おバカさん?
「それに香辛料ですぜ。
国とか絡んで来たら、えらいことなんでやすが?」
「だからぁっ!
なんで辺境の村が襲われた程度で、国がでしゃばる!
有り得んだろがっ!」
有り得んのは、おまえの頭だっ!
「頭、考え直しません?
今迄、悪事に手を染めずに頑張って来たじゃねぇっすか。
なんで、急に盗賊の真似事なんぞを?」
どうやら、まだ落ちてはいないらしい。
踏み留まれば、良いんだが…
「うっせいっ!
従えないなら、出てけぇっ!」
そう頭が怒鳴ると…
告げていた手下を併せて3人が立ち上がり…
「世話になりやした」ってな。
頭は、本当に去るとは思ってなかったらしく茫然と。
そして、ハッっと気付いたようにな。
「てぇめぇらぁっ!
裏切りやがったなぁっ!
おめぇらっ、こやつら、斬っちまえっ!」
いや、滅茶苦茶だろ、呆れるわ。
3人もだが、他の者も動揺してオロオロと。
したらな、頭が剣を抜いたので…思わず後ろから眠り薬を染み込ませた布を頭の口元へとな。
急に倒れる、頭。
事態について行けず、オロオロしている子分共。
完全な悪人なれば、斬って棄てるところだが…未遂状態だし…どうするかねぇ。
取り敢えずは隠密を解き、彼らの前に姿を現す。
仰天する子分達。
「いきなり現れた…
化性の類いかっ!」
そう告げて、斬り掛かるのは止めてください。
ってもな、遅すぎるんですが。
軽く手で払うと、剣が子分の手から弾かれ宙を舞う。
「落ち着け。
俺はフリーランサーで斥候や狩人として働いている者だ。
気配を消すのは職業柄でな、許せ。
それでな、お前達が襲おうとしている村から町へ帰る途中なんだわ。
なにやら物騒なことを話してたが…国から香辛料栽培を委託されている村を襲うなんてぇ、凄い蛮勇だなぁ~
国と喧嘩すんの?
あっ、ちなみに、あの村は隠密が複数人忍びながら警護してるからな。
下手に押し入ると、無条件にて討伐されっから。
死にたく無ければ、無謀なことは止めるんだな」
そう告げると、ヘナヘナヘナっと崩れ落ちる子分が数人。
3人がな。
「ほれみたことか。
俺は死にたくないからな、抜けさせて貰うぞ」って去って行く。
その後、頭以外の者が立ち去る。
頭独りとなったため、気付け薬にて起こす。
まだ朦朧としているようだが…これ以上は付き合いきれん。
さて、帰るかね。
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