第14話

食事を終えた俺は出掛けることに。


いやな、昼食に出たホワイトシチューがなぁ。

そら格別だった訳で…


村で朝搾られたミルク、それから取れた生クリームにバター。

村で取れた様々な野菜に、産まれて直ぐに死んでしまった子牛の肉。


ハーブや香辛料も、村で賄っているらしい。

魔法文明期の菜園が生きており、そこから収穫するんだとさ。


っか、代々管理している一族が存在し、彼らが村へ卸してるらしい。

っか、村長一族だってよ。


ラウンドリムでハーブや香辛料が得られるのは、ここだけ。

菜園管理法具は一族の血のみに反応するため、血統が絶えたら菜園も自動的に絶えるらしい。


過去に滅びた施設もあり、国から彼らへと託される形にて運営されているそうな。


でぇ、輸入のそれらより、遥かに品質も良い良品らしいが、村で消費する以外は国が買い上げるってな。

道理で知らない筈だわ。


村人からの紹介があれば、例外的に購入可能っと。


ミルクの大半はチーズ造りへと回されるのだが、村人の半数近くが町へ出掛けたため、チーズ造りは休業。


だがな、生き物である牛は毎日、乳を出す訳で…

腐る前に破棄を考えないとってさ。


そんな…もったいない。


なので、交渉にな。

おかみさんが、同行してくれてますです、はい。


取り敢えず、村人達が帰って来るまでの間、俺が亜空間倉庫へ破棄予定ミルクを保管。

村人が帰って来たら、保管していたミルクを返し、チーズ造りを。


最高の歩留まりですね。

まずは村長宅へと向かい、許可を得ることから。


「それは…確かに我らは助かりますが…

 して、何をお望みで?」

村長が探るようにな。


「簡単ですよ。

 報酬として村の特産品を、そちらが可能な限りいただければと。


 ハーブや香辛料もですが、ミルクに生クリーム、バターやチーズなどなど。

 魅力的な品が様々あると聞きまして。

 買わせていただきたいのですが、金銭報酬をいただいても、その金で購入するなら現物でいただいた方が良いと考えました。


 可能ならば、さらに購入したいところですね」ったらな、疑わしそうにな。


「それで…村の特産品を得て、どうなさるおつもりで?」ってな。


なんで、そんなことを訊くんだろうな?


「むろん、食いますが?」ったらな、キョトンっと。


「いや、売られるのでは?」そんなことを言うんだわ。

ちゃうわいっ!


「売るなんて、とんでもないっ!

 自分と仲間内で消費しますよ。


 金なんて依頼を受ければ、幾らでも稼げますが、このような品々を手に入れることは困難。

 そんな、もったいないことなど、できませんよっ!」ったらな…

村長とおかみさんが顔を見合わせ…吹き出した。


んだぁ?


「うわっはははっ!

 久々に笑わせて貰いましたわい。

 昨今、特産品を買い付け転売する者が増えておりましてな。

 ちと、疑った訳ですわ」ってことを。


「そやつらは、味の分からぬ者達なんですねぇ。

 金なんて、幾らでも稼ぐ方法はありますが、これだけの品を手に入れるのは至難。


 転売なんぞしてバレたら、2度と購入など不可能でしょうに…

 まぁ、宿の食堂で食べれはするでしょうが、購入不可など、私には耐えられませんからねぇ」って、呆れて告げたらな、また爆笑された。


酷くね?


それから、おかみさんの案内にて厩舎を巡り、冷凍保存中のミルクを回収。

畑で収穫済み野菜も、併せて亜空間倉庫へと。


馬車が運休中であるため、出荷ができずに腐る前に破棄を考えていた品らしい。


亜空間倉庫内は時間が止まるゆえ、保管しておけば傷まないからな。


こうして、町へ出掛けた村人が戻るまで、ミルクと野菜を亜空間倉庫へと保管し続けたんだわ。

彼らが帰って来たので、ミルクをチーズ加工場へと。

フル操業にてチーズへと加工されるそうだが、ミルクを受け渡したから後はな。


馬車も来て商人も野菜を仕入れにな。

祭り後は野菜がダブつくため買い叩けると、強気で来た商人達もいたが、村人が怒って販売拒否をな。


そら、そうだ。

棄てる予定の作物すべてを、俺が通常価格で買い取っているからな。


ってもな、市価の半額だぞっ!

亜空間倉庫へ入れておけば傷まないのだから、そら買うわさ。


まともに交渉した商人達だけが野菜を仕入れられ、舐めた真似をした者達は、空荷で帰ることに…

商人として破産しないと、~ねぇ。

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