第10話

ピファルダーは魔法生物で、スライムなどと同じように、魔法にて産み出された存在だ。

球体へ目を1つ付けたような存在で、宙を舞いつつ移動している。


その1つの目から電撃を放ち、敵対者を感電死させるのだとか。


このピファルダー、目視よりも魔那感知に長けており、生ける物の全てが保有する魔那を微量であろうと感知。

つまり、魔那遮断の指輪がなければ、絶対に見付かる訳だ。


そしてオーク。

ブタ顔の、その鼻は伊達ではなく、非常に臭いへ敏感であり、些細な臭いであろうと嗅ぎ分けることができるそうな。

やはり、臭い遮断の指輪がないと、詰むだろう。


そして、光降り注ぐ広場。

隠れる場所などなく、ピファルダーの目を誤魔化せるとはな。


オークとピファルダーを合わせると、数百を超える個体が徘徊している。

倒すなど不可能だ。


次の洞窟は目視可能だが…気配を消すだけでは、突破できないだろう。

ここは姿隠しの指輪を使用しないと無理だな。


姿隠しの指輪は使用すると30分ほど透明になれるらしい。

それが長いか短いかは分からんが…取り敢えず、姿を隠せるのは有り難い。


ただ、再使用には5分のクールタイムが必須であり、使用中に生き物へ接触すると、姿隠しが解けるらしい。


悠長に移動すれば、タイムオーバーする可能性も。

かといって、焦って移動すれば、オークやピファルダーへ接触し、姿隠しが解ける危険がな。


焦らず、慎重に、かつ、素早く移動せねばならない訳だ。

失敗は死。

賭け金は、己の命ってな。


俺は、なるべく光の当たらない場所を選び移動。

ギリギリ…正にギリギリの場所まで移動し、姿隠しの指輪を発動。


気配を消し、敵に接触しないように心掛け移動を。


って、巫山戯んなぁっ!

いきなり喧嘩を始めるオーク達。


ピファルダーも巻き込まれ、辺りに電撃を放つ。

移動する先を見極め、流れ電撃や、暴れるオーク達を避けつつ進む。


見付かれば、命はない。

かといって、悠長に避けつつ進めばタイムオーバー。

慈悲はない。


うぉっ!

目の前にオークが飛ばされて来た。

そのオークに電撃がっ!


オークが飛ばされて来なかったら、俺に電撃が直撃してたぞっ!


あと少し、もう少しだっ!

頑張れ、俺ぇっ!


やった、やったぞぉぉぅっ!

洞窟へと辿り着けたっ!


広場では乱戦中。

付き合いきれるかっ!アバヨっ!


洞窟へと入り一休み。

流石に辛かった。


数日前の俺へ言いたい。

そんな地図、受け取るなっと。


いや、受け取っても良いが、探しに出るなっとな。


過去は過去、今さら変えることなどできはしない。

現実逃避は止めて、先へと進むか…


次の指輪は、何ですかってな。


半ばヤケになりつつも、洞窟を移動する。

そして開けた場所へと。


建屋ではなく、屋敷、だな。

気配は1つ。

それも、かなりヤバイ気配だ。


そして…相手に気付かれてんぞ、これ。

あれ?詰んだ?


ここまで来て詰みって…理不尽すぎるだろっ!

そんなん思ってると、屋敷の玄関ドアが開き、人形ひとがた…男性が、現れた。


パッと見、貴族のように見えるが…気配は人の、それではない。


あれは…間違いなく、ゴライゾンだっ!

あっ、死んだな、俺。


そう思っていると、現れたゴライゾンが拍手しつつ、こちらへと。


「素晴らしい、実に、素晴らしい。

 今日は記念すべき日と言えよう。

 マスターが造られし、試練を全うする者が現れ、実にめでたい。


 戦には優秀な斥候が必要であり、究極な斥候を得るが至高。

 マスターの御言葉絶えて幾星霜、ようやく、試練を乗り越える者が現れた。


 これは、試練を乗り越えた証である。

 受け取るが良い」


現れたゴライゾンは、なぜか友好的だったが…指輪を俺へと。

これ…嵌めたら、死ぬんじゃね?


だが、嵌めないと、ゴライゾンに殺されそうだ。

確実な死より、不確実な死、だな。


受け取った指輪を、右手人指し指へと。

一瞬、クラクラっと立ち眩みが…

だが…生きてるぜぇっ!


再び、ゴライゾンが拍手を。


「その指輪は、亜空間倉庫となっておる。

 容量は、我輩にも計れぬゆえ、まぁ、幾らでも入るであろうな。

 おまけとして、全ての属性スライムとブロブを1体づつ入れてある。

 活用するが良い。


 そうそう、魔法生物は仕舞えるが、生き物は仕舞えぬので、気を付けるように。

 後、餌として置いておいた宝石および金貨と同量の物を入れてある。

 好きに使うが良い。


 では、あそこの転移陣にて、帰るが良い」


一気に告げると、ゴライゾンは屋敷へと戻ろうとする。

だから、俺は慌てて尋ねた。


「帰って良いのか?

 っと言うか…なんのため、こんなことを?」ってな。


「マスターの指示である。

 試練を乗り越えし者へ亜空間倉庫の指輪を授け帰すように承っておる。

 理由など知らぬ」

そう告げ、屋敷へと消えた。


しばらく唖然としてしまっていたのだが…相手は人外にて、これ以上の追求は無理だし、危険だろう。

生き残れただけで良しとし、帰りますかね。

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