第8話

建屋から出て、先へ進むことに。

川や水路を辿ることができるならば、複数ルートが候補になるだろう。

だが、川や水路は死地にて使用できない。

そうなると、辿れるルートは1つだけなんだわ。


迷うことなく、先へと進むとな、空洞から狭い洞窟へと。

ここから迷路か?などと思ったのだが…すぐに広場へと。


擂り鉢状の空間でな、底には大蛇が…

ヤベっ!俺、蛇に覚られずに移動できたことがない!

詰んだ…か、もっ…


いや、待てよ…先ほど手に入れた熱源探知遮断の指輪…あれ、もしかしたら…

ここは、指輪を信じて進むしかあるまい。


気配を消しつつ、慎重に進む。

だがな、気を付けても、足場の砂が少々滑り落ちるのは防げない。


大蛇がピクリと反応し、鎌首をもたげる。

辺りを睥睨へいげいするが…気付かれた気配はない。

しかし…中央の底以外にも、周囲の石柱へ巻き付く大蛇の姿もな。


底の大蛇ほどではないが、俺を1飲みする程度にはデカイぞ。

底の大蛇のみならば、討伐を考えても…いや、ダメか。

絶対にギャブ達が気付いて襲い掛かって来るだろう。

助からんわな。


底の大蛇が睥睨を止め、再び大人しくなる。

今の内だっ、慎重に、慎重にぃっ…


なんとか、蛇の巣を抜けられた。

そうか…蛇は熱源探知とやらができたんだな。

今迄忍んでも、この指輪なしではなぁ…そら、見付かるわさ。


だが、これからは、熱源探知を行う生き物のにも見付からず行動できるということか。

良い品を手に入れられたが…己の命がチップの賭けに勝てねば死ぬことに…

対価がなぁ…


擂り鉢状広場を抜けると、また建屋がな。

ここまで来て死にたくないため、慎重に内部を探る。

大丈夫…だな。


建屋へ入ると、やはり中央へ台座が…

3人の死体。

数は減っているのだが、ここへ辿り着けた者が少ないからとも、考えられる。


台座に石板、そして指輪。


指輪は1つで効果は…消音および振動無効化。


気配を消す効果では、賄えないのか?

だが…先ほどの、砂が落ちて蛇に覚られそうになったことを鑑みるに、不要とも言い難い。


つまり…この指輪を着けねば、この先で、詰むと?

恐らくは、そういうことなのだろう。


これで4つ目。

リスクは指輪を着ける度に上がるらしい…

南無三!


……… ……… ………


ふぃっ!生きてるぜぇっ!


脂汗がな。

背負い袋から布を取り出し汗を拭う。

ついでに臭い消しも体に振り掛けたよ。


しばし休息っても、意識して瞬きにて終わるがな。

これで疲れが取れるから助かる。


さて…次は何だろうな?

振動無効化が必要って、良いイメージが浮かばないんだが…


覚悟を決めて建屋を出る。

洞窟通路を抜けると…底が見えない縦穴がな。


その縦穴を塞ぐように無数の蜘蛛の巣がっ!

巨大蜘蛛が、あちこちにっ!

き、キモいっ!


蜘蛛は正直、苦手だ。

小さい蜘蛛でもダメだが、この巨大蜘蛛には怖気おぞけがな。


蜘蛛の巣を伝い、蜘蛛に見付からないように、あそこに見える洞窟へと辿り着けと?

無茶苦茶だろっ!


だが…やらなければ詰む訳で…

ちくしょおぉぉっがぁっ!


粘着力のある横糸を避け、歩ける縦糸に乗り進む。

道のように太い訳ではない。

大蜘蛛が乗るため、滅茶苦茶細くもないが、それでもロープ程度の太さだ。


足を踏み外せば奈落の底へと真っ逆さまか、大蜘蛛の餌食に。

大蜘蛛に気取られてもアウトだろう。


気配を消し、大蜘蛛達に覚られないルートを選びつつ、気配を消して進む。

緊張の連続。

瞬き睡眠が瞬即休息を。

それが無ければ、流石に詰む。


瞬眠の指輪を手に入れていて良かったといえよう。


時々、大蜘蛛が巣を移動する。

間近に迫った時にゃぁ詰んだかと。


近場へギャブが落ちて来て巣に嵌まると、大蜘蛛が群がり捕食を。

見付かると、俺も、ああなる訳だ…


緊張の連続にて生きた心地がしないんだが…


ようやく、本当にぃっ、ようやく洞窟へと。


そして、また建屋。

絶対に、殺しに来てっだろ、これ。

だが…進むしかない訳で…地獄だ。



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