第7話
思わぬ事態にて指輪の性能が間違いないことが分かった。
指輪を嵌める前の俺なれば、気配をいくら消してもユマガカに気取られただろう。
あれだけユマガカが接近したにも関わらず、ヤツに気取られなかったと言うことは、ギャブ集落を抜けれると言うことだ。
なにせギャブはユマガカよりも気配察知能力に劣る。
ユマガカが徘徊していても、先ほどのことを考えれば、覚られるとは思えない。
だが…今は、しばし休もう。
やはり、完全な安全地帯とは言えないが…外よりはマシだろうさ。
そして6時間ほど休み、白湯へ溶かした粉末スープと乾燥具を掻き込む。
無論、臭い消し入りだぞ。
メニューは同じだが、携帯食たる乾燥バーよりはマシだ。
あれは壊滅的に不味い。
栄養はあるが、豚の餌より酷いとの評価を受けており、俺も同感だと感じているよ。
食事を終えた俺は、気配を消しつつ移動を。
影から影へと、影がない場所でも、死角となり易い場所を選び、密やかに素早く移動。
道を塞ぐようにギャブが立っている場所が…
姿を隠す場所がない。
待っても移動する気配がないため、ギャブを排除するか、指輪を信じて近場を潜みつつ進むか…
排除は…無理か。
倒せば、生死に関係なく集落のギャブ達に覚られるだろう。
そうなれば、他の集落にも伝播するがか如く覚られる。
ダメだな、これは…
指輪を信じるしかあるまい。
気配を消しつつ、道を塞ぐギャブへと近付く。
数は5体。
それらが見える範囲に数体のギャブがな。
辺りに覚られずに、5体倒すのも困難であるが、倒した後、絶対に騒ぎとなるだろう。
絶対に覚られてはならない。
端から端、気配を消しつつ、見付からないように…
もう少し…端のギャブ横へと。
っ!
こちらを向いたっ!
覚られたかっ!
いや、大口開けて欠伸を。
覚られて…ない、のか?
気付いてないな、脅かしやがる。
動転しかけたが、なんとか落ち着いてギャブ横を擦り抜けた。
生きた心地がしなかったぜっ!
そんな窮地を数度擦り抜け、集落密集地を抜けた。
その先には建屋がな。
安全地帯?
先ほどの件もあるゆえ、油断はな。
内部を探り、生き物の気配がないことを確認。
そぉ~っと、忍び込む。
建屋内の中央へ台座。
その周りに数体の死体が…またか…
台座へと忍び寄ると、やはり石板が乗っていた。
文面は、ほぼ同じ、同じだが…幾つかの相違がな。
1つ目、与えられる指輪の数が違った。
2つだな。
そして2つ目。
指輪の効果がな。
1つ目は、瞬眠の指輪。
これは瞬時に深い眠りへと
この一瞬の深い眠りにて、8時間寝たよりも疲労が回復するらしいな。
この指輪は装備しなくても良いらしい。
適正無ければ死ぬのは、同じか…
だが…疲労が溜まり、この侭では、いずれ力尽きるだろう。
着けなくても死地、着けても死地ならば…生き残れる可能性がある方だな。
こいつは、左手小指か…いざっ!
ふぃっ…生きて、る、な。
心臓には確実に悪いわいっ!
次は熱源探知遮断か…
指輪は、着けると着けるだけ死ぬ確率が上がるらしい。
3つ目かぁ…死体の中には、3つ指輪を着けた物もな。
恐すぎるぜっ!
だが…ここへは、最初の指輪が無ければ、辿り着けなかっただろう。
それを考えると、着けずに進めば詰むということだ。
進まなければ、いずれは食料が尽きて死ぬだろう。
餓えたら判断力も落ち、余計に助からない。
そうならないためには、時間を掛けるのは愚策だろうな。
死にたくないが…死なないために…いざっ!
ふぃっ!セーフぅっ…
生き残れたぜっ!
右手中指へと指輪がな。
これで3つ目、後、いくつの指輪を着けさせられるのだろうか?
成金みたいで嫌なのだが…
まぁ、生き残れたからには、仏さん達には悪いが…俺は先に進ませて貰うわ。
その前に、腹拵えと睡眠だな。
何時もの代わり映えしない食事を。
後、5食分かぁ…尽きる前には脱出しなければな。
瞬眠の指輪が有能過ぎる。
瞬時の睡眠…瞬きをする間に深い眠りへ落ち、目を開けると同時に目覚める。
疲れが、ゆっくり眠ったかの如く消え去った。
瞬きの間に睡眠って…この時間が貴重である今、非常に助かる。
疲れも取れ体調も万全だ。
さてっと…行くかね。
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