第6話
建屋へと潜り込み、辺りを伺う。
念には念をだ。
罠もないし、生き物も、やはり居ない。
安全だろうとは思うのだが…
建屋の中央へ鎮座する台座付近に問題がな。
数体の白骨死体がなぁ…
何で死んだんだ、こいつら?
腐敗後、ミイラ状になったと思われる死体も混ざっている。
死体に襲われた痕跡がないことから、殺されたとは思えない。
思えないが…地面を掻き毟ったような跡が…
どういう状態なんだ、これ?
俺は慎重に台座へと忍び寄る。
台座には天井よりスポット的に明かりが降り注ぎ、台座の天版を照らしていた。
明かりに近寄らないようにしつつ、台座前へと。
台座に石板が置かれ、その石板へ文字が刻まれている。
近寄らなくても読めたので確認するとだ。
〔この先の集落を抜けるために、アイテムを用意した。
気配を消す法具である。
これを装備した者が気配を消すと、目の前に立てども気付く者なし。
光輝く地以外に見付かること、能わず。
ただし、適正無き者には死が待つのみであろう〕
そんなことが書かれており、石板へ設けられた窪みに指輪が1つ。
死体には、各々同じ指輪が嵌まっているな。
試しに死体から指輪を外そうとしたら…ポロっと砕け、
同時に白骨も砕け散り、塵へと…
……… ……… ………
この指輪が原因か…
正直、この先は集落の密集地帯であり、潜みつつの移動は困難だとは感じていた。
移動前は川を利用したルートを考えており、その方法ならば突破可能と判断したのだが…ダメだな。
そちらのルートは死地だ。
ゲーターにラニャンやジェロム、他にも危険生物が潜んでいる可能性がな。
っとなればだ、集落を潜んで抜けるしかないが…正直、厳しい。
7割以上でアウトだろうか?
では、指輪を嵌めての突破は?
石板には、過去の突破人数が刻まれており、15人の突破者が居るとなっていた。
0ではないのならば…っか、嵌めないと、突破不可能なんだろう。
しかたあるまい。
俺は台座上の石板窪みより指輪を取る。
だが…嵌めるには勇気がなぁ~
石板には左手の中指へ嵌めるよう指示がな。
薬指でないだけマシか…
何時までも躊躇っていてもしかたない。
深く深呼吸した後、覚悟を決めて左手の中指へと。
ええいっ!ままよっ!わんざくれっ!
目を瞑り、指輪を嵌め………な、なんとも…ない、な、うん。
大丈夫だ、ふぃ~っ。
指輪を嵌めて、藻掻き苦しんで死んだ死体に囲まれつつ、その原因っとなったと思われる指輪を嵌める…
生きた心地がしねぇってばよっ!
体に異常はないが…本当に、効果があるのだろうか?
試してみたいが、流石に限界だ。
しばし休まなければ持たないだろう。
一瞬のミスが命取りである現在、休める時に休まないと持たないだろう。
この建屋が安全だと仮定して、休むとしてもだ、油断して大丈夫だろうか?
まぁ、半覚醒状態で休むのには慣れてはいる。
いるが…それで最後まで持つかがな。
考えてもしかなたないため、半覚醒状態にて休んだのだが…4時間ほど経った頃、建屋入り口に何かの気配が…
ユマガカ!
俺は即座に起きると、気配を消しつつ建屋の隅へと。
ユマガカは、ギャブが良く飼う虫であり、ギャブが猟犬代わりに使役している。
コヤツらの幼虫は水棲であり、水辺付近に潜み生き物を襲う。
成虫間際のユマガカは飼い主であるギャブをも襲うほど獰猛なのだとか。
成虫のユマガカは4枚の薄羽にて飛翔し、生き物を捕らえ食らう。
その巨体を薄羽にて支えられるのが不思議だが、飛来するのだから、それが事実だ。
鎌状の前足は切れ味鋭く、高速飛来し生き物を切り裂く。
捕捉されたら、まず逃げれないだろう。
そんなユマガカが建屋へと入って来たので、生きた心地がしなかったぜっ!
だが…俺の間近まで迫ったからユマガカは、俺に気付かず通り過ぎ、やがて建屋から去って行った。
俺は崩れ落ちるように座り込んだよ。
まったく、なんて所だっ、ここはっ!
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