第5話

空洞内の状況は把握した…つもりだったのだがな、水辺の探索が、おろそかだったみたいだ。


空洞内は、あちこちへ発光苔が生えており、その苔が辺りを薄く照らしている。

ギャブは俺より暗視能力に劣るようで、暗闇に潜んでいる物には気付けないようなんだ。

そのため、ゲルに補食されてんぞ。


それが観察して分かったので、影から影へと潜みつつ進んだんだがな…

水辺にゲーターの姿が…

俗に言うワニやね。


まぁ、魔法強化ワニっと言えば良いだろうか。

通常のワニの3倍はデカイのに、通常種より素早いんだよ、こいつ。

普通は寝ており、食わなくとも数週間は生きれるそうな。

寝ている際には気配がなく、近寄れば…


ギャブが川辺にてゲーターに補食されて気付いたんだわ。

俺の潜んでいる場所の目と鼻の先な。

流石にビビったぜっ!


そんなゲーターの白骨が、川辺へ沈んでいるんだが?

こりゃぁ…ラニャンがいるんじゃぁ…


ラニャンは川の殺し屋と言われる魚でな、鋭い牙をゾロリと口内へ揃え、その牙にて獲物に食い付き食い破るんだ。

身体中を被う鱗は鋼鉄並みの強度を誇り、鋭さは研いたての鋭いナイフ以上なのだとか。


そんなのが群れで回遊しているのだから、恐ろしい。

群れにたかられたら、食い尽くされてな、残るは綺麗な白骨だけってな。

恐ろしや、恐ろしや。


それに…もしかしたらジェロムも居るかも…

殺人うなぎであるジェロムはな、生き物の穴から体内に入り込み内臓を食い荒らすそうな。


水浴びなんぞしてたら…

男も女も殺人レイプにて、あの世いきってな。

恐ろしい…


こやつらも、魔法文明期の産物らしいのだが…ろくな遺産を残さんやつらだ、全く。


これが分かったから、水辺へ近付くのは御法度ってな。

水筒へ水を補給しようと水辺へ行かなくて良かったぜっ!


水は水補の魔道具から得られるので、当分は大丈夫だ。

火口の魔道具と並び、野営に必須な魔道具と言えよう。


まぁ、薪の無いここでは、火口の魔道具は意味ない品だがな。

火操かそうの魔道具ならば火を操れるので、野外でも調理可能ではある。

あるが…お高いのよ、あれ。


まぁ、あってもなぁ…潜んでいる今、そんなの使ったら覚られて襲われるがな。


その点、水補の魔道具は便利だ。

温度も、ある程度は調整できるため、白湯を出して暖をとることもな。

粉末スープを白湯に溶かし、乾燥野菜と乾燥燻し肉に乾燥ショートパスタを入れれば、栄養十分な1食となる。


味も良いので、野営には重宝するのだが…臭い消しの粉を入れてるため、味っと言うか香りがなぁ…

香りが消滅した料理は、味気ないっうか不味いが…潜んでるから、しかたない。


まぁ、前史文明である魔導文明遺産である魔道具は、今の時代も普及してるから有り難いことではある。

遥か南方には、魔導文明期の辺境都市が残っており、前史文明の名残を伝えてるそうな。


魔導文明末期に、魔法文明遺跡や機械文明遺跡を国家プロジェクトとして探索させた国が多数存在したらしい。

そして遺跡にて暴発、暴走を誘発し、それにより文明が衰退したと…

滅んだ国が数多あまたって…阿呆か?


まぁ遺産たる魔道具は役に立っているが、地走る馬なし馬車に地走る鉄箱つならる蛇とか、空を舞う鉄鳥などが存在し、遠方と言葉を繋ぐ箱などなど、様々な魔道具が存在したんだとさ。

今は、南方魔導都市に僅か残るだけなんだわ。

遠過ぎて行けんけどな。


潜んでいる場所にて、一息吐いてから、次のポイントへと。

ゲーターにギャブが補食されたため、近辺にギャブの気配はない。

なので、一息入れられた訳だが…今が移動のチャンスでもある。


足音、気配を殺し、気配を探り探り、暗闇に身を潜めつつ移動を。

ようやく、ギャブが近寄らない建屋へと辿り着いた。


建屋内部の気配を探るが、生き物の気配はない。

俺は背負い袋から、以前に倒した大蝙蝠の肉を取り出し、建屋内へと放り込む。


臭い消しの粉を振り掛けてあるため、血臭などはしないが、肉食生物やゲルなどが潜んでいれば、反応するであろうよ。


投げ込んでから、しばらく様子をみて…慎重に内部へと。

ふぅぃっ…何もなし…か…

これで一息吐けるな。

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