第3話

宝の地図に書かれていたことは本当ではあったが…これは、おかしい。

隠されている宝の規模を考えると、個人レベルを超え、国家資産レベルとも言えるだろう。

いや、もしかしたら…それをも超えるやもしれん…


どこから財宝を掻き集めたとかもあるが、なぜ使用せずに隠したんだ?

さらに宝の地図などを残す意味も分からん。


さらにだっ!宝の地図へはな、次の言葉が記されていたんだわ。

『一見宝とおぼしき物に惑わされるなかれ。

 真の宝は先にあると知れ』ってな。


いや、なに言っとんの?って、それ見た時に思ったもんよ。

だがな、この横穴へ入る前の本道は先へと続いている訳で…

絶対に誘導してるよな、これ。


絶対に罠だろ、これ…

イヤな予感がしたので、宝石数個と金貨数枚だけ手に入れて引き返すことに。


洞窟をしばらく引き返してたら行き止まりに。

おかしい、道を間違えた筈はないんだが?


引き返し別ルートへと。

やはり行き止まりだ。


やべっ!閉じ込められたかっ!

どうやら罠に嵌まったらしい。

だが、宝の地図なんぞでさ誘い出し罠に嵌める意味が分からん。


ここでの発見が知られてないっと言うことは、秘匿されていたか、それとも戻って来た者がいないのか…

恐らくは、後者であろう。


この手の罠は機械式ではく魔術式…いや、魔法式だらう。

ちなみにな、魔法と魔術は違うものらしい。


俺には違いが全く分からんが、お偉い魔術師様にとっては、一緒にするなど言語道断なんだとか。

以前に仕事で訪れた魔術学院にて、えらい説教受けたかんなぁ~

いや、素人の俺にはサッパリだわ。


その導師さまが仰るには、

「魔術は学問であり、技術である。

 ある程度の才能は必要ではあるが、万人に開かれた技と言えよう。


 それに対し魔法は才能ある一部の者にしか扱えぬ御業なり。

 世のことわりへ干渉し事象を捻じ曲げ奇跡を起こす…

 原理などなく、才能に左右されし御業にて、才なき者に操るは不可能。


 そして、魔術では成し得ぬ事象を引き起こす御業である」ってな。


正直、魔術と魔法の違いがなぁ…

でな、案内してくれた学生さんが、彼なりの解釈を教えてくれたんだわ。


魔術は決まった現象しか発生できないし、魔那を集め魔力へ転じて術を発生させる技術らしい。


でな、魔法は発動者の力量と発想力にて、法則に捕らわれなずに事象を発動すんだとさ。

魔術で不可能なことでもってたわ。


んでな、洞窟の形状を俺に覚られずに変形させるなど、魔術では不可能!

つまり、魔法が行使されたと考えるのが妥当だろう。


そして術者が見当たらないことから鑑みて、古の魔法文明期の技術だと思われる。


この地、ラウンドリムには、複数の先史文明が存在したと言われ、その遺跡が点在しているんだわ。


魔法、機械、陰陽の3大文明遺跡が有名だが、他にも多数の滅びたいにしえの文明があり、そんな遺跡も多々見付かっていた。


その中でも自然物を変形させる系の遺跡の種類は2つ、魔法系と精霊使役系だな。


精霊使役系は、植物由来の遺跡がおもなので、岩を変形させていることから、間違いなく魔法文明遺跡だ。


過去の者達が何を考えて、この遺跡を造ったのかは知らないが、ろくな理由ではあるまい。

まぁ、先へ進むしか手はない訳で…


しかたない、行くか。


俺は宝が置かれている横穴付近まで戻り、そこから先へと歩みを進める。

なにがあるか分からないため、より慎重にと。


今のところ、大蝙蝠以外に生き物は見掛けていない。

まぁ、草どころか苔さえ生えてなく、水気もない場所だ。

生き物が生きるには厳し過ぎる環境と言えよう。


宝の横穴付近より本道を進む。

道は下り坂であり、既に登った山よりも下ったのではないかと思われるが、まだ下るようだ。


むっ、水が流れる音がする。

地下水脈でもあるのだろうか?

すると、地下水が川のように流れている空間へ行き着いた。


広いてぇ語句では言い表せねぇ空間だ。

村…いや、町1つ…違う、ヘタしたら町3つは造れる広さだぞ、これ。


何本もの巨大石柱が洞窟空間を支えているが、あれが折れたら天井が崩れ落ちてくるだろう。

住むには、相当な胆力が必要だな。

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