第2話
洞窟内での足場は悪い。
入り口付近は、外からの日が入るため明るいのだが、坂を下って行くと薄暗くなってきた。
まぁ暗視が利く俺には問題はないのだが…
俺の先祖に闇へ適応した種族でもいたのだろう。
先祖返りなどと呼ばれる現象だな。
後、気配を消し易く身軽に動け、さらに気配にも敏感でな、辺りを探りながら獲物を得るなどお手の物なのさ。
親父達は普通の農民で、このような技量はない。
なのに俺は、物心ついた頃にぁ既に村の狩人を超える腕前だったんだぜ。
それを知った狩人の
まぁ、狩りの技について学べたのは、良い経験だったがな。
実は、この爺さま、若い頃に徴兵され斥候兵として従軍したことがな。
その時に身に付けた斥候の技能なども教えて貰ったよ。
幼い頃の良い思い出だ。
そのような技能を身に付けた俺にとり、この程度の闇や足場の悪さは問題にならない。
それよりも、戦闘になった際が問題だ。
短刀や投げナイフ、短弓が、俺の得物だ。
隠密からの一撃が俺のスタイルであり、敵に見付かってからの攻防を苦手としている。
ゆえに、相手に見付からずぬ間に相手を捕捉せねばならない。
「風が…止んだか…」
俺は速やかに臭い消しの粉を腰の革袋より取り出し、体へと振り掛けた。
臭いを察知する生き物がいた場合、これをせねば覚られるのでな。
これで蛇など以外に覚られ難くなったであろう。
そう思いつつも慎重に足を進める。
しばらく進むと…前方に何かの気配が。
動物?虫だろうか?
正直、虫は遠慮したいところだが…
っと、大蝙蝠かっ!
正直、こやつらは苦手だ。
目で見てないのか、潜んでいても見付けやがる。
音を押さえた場合は、狼どもにも見付からない実積を持つのだが…なぜか蝙蝠には見付かるのだ。
原因が分からない。
さいわいなことに、1匹のみで気付かれてはいない。
この距離だと投げナイフは厳しい、
当たっても倒せんだろう。
俺は背負い袋に引っ掛けていた短弓を外し、矢筒より矢を引き抜く。
弓へと番え、キリキリと引き絞る。
狙いを定め…矢を放つ!
特注複合素材にて造られた短弓は強弓であり、引き絞るにはコツと力がいる。
だが放たれた矢の威力はヘタな長弓など目ではない。
シッカリと蝙蝠の頭を射抜いた矢は、洞窟の壁へと突き刺さっていた。
大蝙蝠を倒したが、警戒を解かずに歩みを進める。
矢が足りれば良いが…っと、そんなことが脳裏を。
俺にとって弓はメインウェポンであるため、矢が尽きるのは厳しいのだ。
大蝙蝠を射抜いた矢の再利用は厳しいであろう。
取り敢えずは矢羽だけでも回収を。
鏃は壁に減り込んでいるし、
これらは諦めるしかあるまい。
蝙蝠は群れることが多いので、単独だったのはツイていると言えよう。
だが、近くに他の蝙蝠が潜んでいる可能性もある。
ここは慎重に動くべきだな。
しばらく進んだ先に横穴が。
天井に近い箇所であるが、そこから複数の気配がな。
感じとして、さきほどの大蝙蝠に似ているゆえ、大蝙蝠の群れであろう。
気付かれないように、慎重に通り過ぎることに。
結構坂を下ったのだが、終わりが見えない。
途中の横穴から風が吹き込んでいるため、小さな横穴が外へ通じていると思われた。
何ヵ所かの曲がり角と分かれ道がな。
行き止まりへと行き着き戻る羽目になったこと数回。
いい加減に疲れてきたぞ、まったく…
そろそろ引き返すか…
そう思った頃に見付けた横穴。
そこへ複数の革袋が、無造作に積まれていた。
古いのか、革袋はボロボロで穴が空いている物もな。
その穴から幾つかが、こぼれ落ちているのだが…
宝石や金貨だ…これらの革袋へ詰まっているのだとしたら…1財産どころの騒ぎじゃねぇ!
手に入れても絶対に襲われるレベルだな。
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