大賢者の記憶を継承したはずが、なんだいや明らかに様子がおかしい?
マスターメガネ
第1話 私は大賢者フリーダ・・・になる!
私の名前はフリーダ。私は特別な人間だ!・・・というよりも今から特別な人間になるのだ。
特別とは自分以外の記憶を持っているのだ。その私ではない記憶は寝る毎に私の中へ入ってきて段々と記憶が引き継がれていった。そして12歳の誕生日である来週には全ての記憶の継承が終わる。そう、私は大賢者になれるのだ!
・・・
「おはよう。今日も早いねー。」
「おはようございます。」
「はい、新聞。」
「いつもありがとうございます。」
私の朝は早い。まだ完全に太陽が昇らないうちに外へ出て体をほぐすのだ。もちろんこれも大賢者の記憶から学んだ事である。新聞を受け取るとそれをもって両親の経営する冒険者向けの雑貨屋に入った。中では両親が在庫チェックや商品の陳列の作業をしていて新聞をカウンターに置く私も作業に参加する。
日が昇るころには店を開け、両親は交代で朝食をとる。なぜこんなに朝早く店を開けるのかというと冒険者の朝は早いからだ。冒険者というのは主に町の外で魔物を倒したり、ダンジョンに入り価値のある物を探してくる者たちの総称である。
・・・
本日の朝食はソーセージを挟んだパンに、野菜スープだった。いつも変わらないメニューだけどママの焼いたパンはふわふわでおいしい。
「フリーダももう12歳になるのね。洗礼式に学校。・・・はぁ稼がなくちゃ」
「ママ?そんなに大変なら私学校いかなくてもいいよ。お店のお仕事はもう大体覚えちゃったし。」
「ダメよ。ママの子供の頃なんて学校はお貴族様のだけのもので苦労したのよ、それにこの先学校を出ていないなんて良い職業につけないわよ。」
「うへ~。いいよ。私は冒険者になるから・・・」
「ちょっと!なんでそんなこと言うの!!・・・・」
うへー。私はすでに大賢者のほどんどの記憶を持っているのだ。やろうと思えばきっと超絶大大魔法も唱えられるし神具級の超便利魔法具だって作れるはずだ。こんな子供の勉強なんてはっきり言ってつまらないし、やりたくないのだ。
「もーその顔やめて!!そろそろパパと交代するから食べ終わったら洗っておいて。」
「は~い。」
あまりに顔に出ていたようで怒られてしまった。交代で椅子に座ったパパはいつも新聞を読みながら朝ご飯を食べる。この新聞には、どこにどんな魔物が出現したか英雄と呼ばれる上級冒険者達がどんなものを好んでいるかなどが記事にされているので、その情報を元に仕入れをするのだ。パパはもともと冒険者という事もあり、ニーズを読み取れるのかこのお店は結構な繁盛を見せている。
「戦争で敗走した兵士が強盗だってさ、うちも気をつけなきゃな。」
「パパなら強盗なんて倒せちゃうのでしょ?」
「はは、そうだな、一線を退いたと言っても元戦士だ。一発で倒してやるさ!なんってな!」
・・・
朝食の跡片付けが終わると少し暇な時間が訪れる、私はその時間を使って魔法の練習をしていた。人差し指立ててそこに火を、次は中指に氷だ、続いて薬指には風を、小指には雷を、最後に親指には光というように指ごとに別々の属性の魔法を使いウォーミングアップだ。それが終わると体を浮かしたり、力を強化したりの自分に作用したり草花を成長させたり動かしたりと自分以外のものに作用する魔法と魔法の範囲を広げていくのだ。
もちろんはじめからこんな事が出来たわけではないのだかが6歳頃から記憶を元にいろいろな修行を隠れて行ってきたのだ。隠れてやってきた理由は洗礼式で大賢者デビューして・・・えへへ。
・・・
この練習は店番の時間か近所に住むミサキちゃんが遊ぼうと迎えに来るまで行う。これが私の普段の一日のはずだったが、今日は今日はいつもと違った。
私とミサキちゃんがお花畑から戻ると店の前を何人もの青年団が取り囲んでいて、野次馬の1人が私を見つけるとすごい駆け寄ってきた。
「フリーダちゃん、大変よ。お店に強盗が入ったのよ。」
「そ、そんな!!パパとママは?」
「犯人とまだ中みたいなのよ!でもきっと大丈夫よ。青年団の方もいるから・・・。」
私はいてもたってもいられなくなり、野次馬のおばちゃんとミサキちゃんを振り切って家の裏地まで走った。そこで誰にも見られないか周囲を確認すると体全体に透明化の魔法を掛けると、大きな赤い宝石が頭についた黄金の杖を呼び出すと勝手口から自宅へと入る。
店の中では数人の叫び声とそれをなだめるようなパパとママの声が聞こえる。私は両親の無事に安堵し悟られぬようにゆっくりと声の方へと歩きだした。
強盗と思われる人数は4人で同じ皮の鎧に灰色のマスクだ。今朝の新聞に載っていた惨敗兵の強盗がまさかうちの店に来るなんて・・・。
両親は縛られていて強盗の1人が両親に剣を向けている、残りの3人はすごい形相で店の商品を袋に詰めていた。
あまりのショッキングな光景に私の体が熱くなった。気を抜くと今にも魔力が暴走しそうになるが力で押さえつけて、絶対に許さないとやつらに杖を向けた。「チェーンバインド」を唱えると強盗達は鎖捉えられて動けなくなった。よかったこれで安心だと一息ついたつもりだったが、私の体は記憶の奥底では使い慣れた魔法を連続で唱え始めたのだ。「武装解除魔法すぽぽーん」「重力魔法プレス」「ブレインブレイク」「人体破壊魔法ブラッディーカーニバル」。魔法の鎖にまかれた盗賊から防具や武器がはぎとられると地面に押し付けられ、脳みそを破壊され、最後には体がねじられ曲げ盛大に血をまき散らした。あまりの惨劇に耐えられなくなった私はその場で気を失って倒れてしまった。
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