#2 集会
顔を洗う。
髪を整えて歯をみがく。
お気に入りの服を着る。
先輩がくれた香水をちょっとだけつける。
オースティンは鏡のなかの自分をのぞきこんだ。
このあと、不良が集まる集会のような、パーティのようなものがある。本来はどこかのお金持ちの企業同士の立食パーティらしいが、その地下駐車場で酒や煙草の密売が行われるのだ。
オースティンそこに行ってチームの仲間の分を買ってくることになっていた。
ガタン、とバイクを止めてビルの裏へ周って非常階段を降りて地下駐車場へと向かった。
地下2階の駐車場は封鎖されていて、現在使われていない。だから誰にもバレることはないのだ。
オースティンが地下につくと、すでに人が集まってガヤガヤとしている。
麻薬の匂い、金のチェーンのネックレス、奇抜な髪色。いかにもな不良だらけだ。
覚悟を決めると、酔った者同士の喧嘩、賭け事をしている人だかりなどを通り抜けてずんずんと進んでいった。
「よぉ、またお前か」
煙草と酒を売りさばき不良の間で名を轟かせる男、ブライアンだ。
「まだお前あいつらのパシりやってんのかよ?」
「はい。まぁ……」
ブライアンの息は酒の匂いがした。
「用意しておいたぞ。ほらよ」
黒い袋を二つわたされた。ひとつの袋のなかに煙草の箱がつまっている。もうひとつは酒の瓶だ。オースティンは数を確認するとリュックにつめ、金を差し出した。
「ありがとうございます。」
「商売成立ってわけだな。あ、そうだ。お前らにこれやるよ。」
白い粉をわたされた。オースティンの背筋が凍った。分かりやすくクスリだ。
「これ、もしかしてクスリ……」
「びびってんのか?クスリを知らずに不良なんて言わせねぇよ。」
ブライアンはでかい声で笑った。
「いろいろあってな、試作品のクスリがまわってきてんだよ。実験台の代わりにタダで。たしか上の階でパーティーやってる会社の奴だったけな。」
そのクスリはクスリの効果が極端に短く、ものの30分程でシラフに戻ってこれるらしい。恐らくブライアンは本当に効くのか誰かに毒味をさせたいのだろう。
振り返るとブライアンの仲間に囲まれていた。もう逃げられないことを悟ったオースティンはクスリの実験体となってしまった。
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どのくらい時間が経ったのだろう。オースティンは快楽の天国から一気に地獄へ落とされた気分だった。注射を射ってすぐの気分は本当に夢のようだったのに。
吐き気がする。頭が割れるように痛い。喉がカラカラだ。オースティンは苦痛から無意識的に非常階段を体を引きずるようにして登っていた。
突然誰かの足が視界に入ってきた。
「た、助けて…」
苦痛に脳を支配されているオースティンは先のことを考えず相手が誰かも知らずに、本能のままに動いた。
「これあげるよ」
差し出された水を受け取り、一気に流し込む。すると多少楽になって体を起こした。
「ありが…え、は、なんでここにお前が」
微笑みながらオースティンに水を差し出したのはフラヴィアだったのだ。
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