第38話 飛燕

領主たちはダンジョンから戻ると、街にようやく引き返していった。

と思ったら、二・三日で戻ってきた。

この山小屋の周りに拠点を作り出したのだ!

そのおかげもあり、俺達の山小屋も立派なログハウスになり、

風呂も数倍デカくなったんだけど・・・。

森での静かな暮らしというのとは違ってきたな・・・。

石鹸作りも兵達でやってくれるようになり、小間使いの様に働いてくれる。

俺は先生と呼ばれて、色々兵達の質問に答えている。

ある者は医療に興味があり、

ある者は魔法のイメージでうまく行かないと相談されたりした。


あの時、梅毒から救われた命はそれぞれに成長していた。

しかし、

最近から俺につきっきりで一緒に居るのが、

領主の息子、アルベルト・ミラーだ。

どうも同い年らしく、修行して来いとロバートに言われて、

ここに兵達と一緒にやってきたのだった。

まあ同い年ともあって、仲良くはなっている。

アルベルトは次男のため、地力をつけて独り立ちするんだとか・・・。

ある程度の知識を教えて、体力もつけてやれば後は勝手にやるだろう。


兵達は毎日ケガをしてくる。

シロとポーションで大体は回復してやれるが、

大けがだとそうもいかない。

大手術になることもあるが、器具が揃ってきているため、

簡単には死なせない。

兵士たちに新しく、治療小屋を建てさせて、そこで治療を行うようになった。

医療に興味のある兵士がいつも手伝ってくれて、

いずれこの兵士さんも、手術できるようになるだろう。


ある時

爺ちゃんは虫垂炎になり、手術することになった。

雷で体を麻痺させれば、後は簡単な手術で終了だ。


「レインワシが死んでも強く生きるのだぞ!」ポール


と爺ちゃんは弱気になっていたのだが、しかたないのだ!

そもそも、

この世界では虫垂炎というのは致死率の高い病気だったからだ。

爺ちゃんのアソコをみて、デカイ・・・凄い・・とか、

後ろでつぶやいているが、医療兵達もしっかり手術を見学している。

医療を学んで要る兵を医療兵と呼ぶことにしたのだ。


始めは恥ずかしがっていた爺ちゃんだったが、

死ぬかもしれないと直ぐに不安な顔になった。

安心させながら、手術を始めると、結果30分程で治ってしまった。

前世よりもこっちの世界には魔力があるため、器具や薬剤が揃えば、

こっちの世界の方が致死率は低くなるのでないかと思う。

医療専門になった兵達は凄い凄いと、メモをとりながら覚えてくれたかな?

今度は魔法無しで、麻酔を使ってやってみようと思っている。


ガルシアさんにも薬の開発を是非頑張ってもらいたい。


俺はヨツムンガルドに会いに行っていた。

「ところで、なんで爺ちゃんは若返ったと思う」俺


「正直なところ分かりかねます。

食べ物か、光魔法の影響なのか・・・あなた様の体液か・・・」ヨツムンガルド


「光魔法にそんな効果があるの?俺のは関係なくないか?」俺


「いえ、分かりません。

しかし、私との戦闘の時以降に若返りが促進されたとすれば、

考えられるのはあの時の光魔法か、

このダンジョンと、

食べ物と色んな要因が重なった結果かもしれませんし・・・。

奇跡としかいいようがないでしょう。

やはり一番はあなたの体液かと・・・チョットいただけますか?」ヨツムンガルド


「は!?急に出せと!?ヤダよ!」俺


「いえ、指先から血液を・・・!」ヨツムンガルド


「ちょっとだけだぞ!」俺


「はい。」ヨツムンガルド

チクッ。チュウ・・・チュウ・・・・チュウ・・・。


「オイ!吸い過ぎじゃないかい?」俺


「おお!美味しい・・・。これは若返るのもうなずけます。」ヨツムンガルド


「で?俺が原因なの?」俺


「そうかもしれませんね。血液ではハッキリしませんね・・・。

お爺様にかけた物を、ここで出せます?」ヨツムンガルド


「ヤダよ!」俺


「そうですよね・・・。

それよりも、その魔剣を抜いてやってますか?」ヨツムンガルド


「ああそう言えば鞘から刀身を抜いたこともなかった!」俺


「ひどい。きっと悲しんでいますよ」ヨツムンガルド


「え?」俺


「ぬいてあげてください」ヨツムンガルド


カチッ。ス――――ッ・・・!

刀身は片刃の日本刀のようなカトラスのような美しい剣だった。


「おお!綺麗だ!」俺


「この魔剣は珍しい聖属性を持った剣の様ですな!

使えば使うほど成長しますから、大事に使ってくださいね」ヨツムンガルド


「ほえ?成長?剣が?」俺


「はい。それが魔剣ですから。

どのように成長していくかはわかりません」ヨツムンガルド


「うへ・・・。」俺


「さしあたり名前でも付けてあげてくださいね!」ヨツムンガルド


「名前か・・・魔剣:飛燕(ヒエン)が良いかな!」俺


「おお良いですね!刀身も燕の翼の様にも見えますし」ヨツムンガルド


魔剣飛燕を使ってみたのだが、始めはとてもっ切れ味の悪い剣だった!

しかし、魔物を殺していくたびに切れ味が良くなっていった。

面白い。

成長ってこういう事なのか・・・!

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