試行回数の化け物


「カエンか……」


カエン。それは試行回数の暴力である。大概のキャラを一目で使えるようになる器用貧乏であり、そこから試行し続け研磨する男だ。アレに勝てる時と言うのは初見キャラを使っている時に自分の持ちキャラでメチャクチャ序盤有利に戦ってギリ倒せるか倒せないか程度には強い。


「……あいつ絶対鋼の星見てるな?」


それにしても今回に関しては絶対あいつ知ってる使い方だろ……原作再現とかしない奴だぞあいつ。と言うより全然版権キャラ使わない奴ではあるんだが……。にしてもあの強さ、チートでも対応出来るかどうか……。


「なぁさっきからじろじろ見ないでくれる?」


「おっと済まない」


カエンに怒られてしまった……。いかんいかん。すぐ相手に興味を持ってしまうのが私の悪い癖なのかもしれない。ともかく今は謝っておこう。


「つい癖でな……」


「まー世界一位の実力を見たいってのは分かるけどね!むしろそんなところで見ないでもうちょっと近くで見て良いんだぞ?」


これだ。すぐこれなのだ。この男は自分が世界一位であると言う事を確信しているし、それが出来るほどの実力がある。故に傲慢であり、その強さを身をもって証明している。全く恐ろしい男である。


「と言うかあんた……。今度戦う事になってる奴じゃん?」


「……なんだ、知っていたのか」


「うん。確かリーダーの人でしょ?」


そう言えばあの社長が言っていたな、今度カエンと戦うと……。しかしあの戦いを見ていると、我々が勝てる見込みは1%を切るだろう。それこそチートでも使わない限りは確実にだ。


「……そうだ」


「やっぱり?まぁ今度戦う時には全力でぶっ潰してやるからよろしくな!」


この男は本当に傲慢極まりない男である。一応言っておくと、次の戦いと言うのが我々五人とカエン一人の五対一という奴なのである。だと言うのにこの男は負けると言う事を一つも考えていない。


「……」


「どうした?」


「いや。なんでもない」


ハッキリ言って今回の大会で勝てるなどとは微塵も思っていない。……それに、どうせ奴らはチートを使おうとするだろうからな。仮にそれで勝てると言うのなら苦労はしないのだが。


「流石にこれ以上やってると手の内が完璧にバレそうだから帰るわ」


「そうか……」


しかし毎日何時間戦っているのだろうかこの男は……。少なくとも一日二時間以上は戦っているんだろう。……でなけりゃあんな強さが出せるわけがない。


「……奴は狂っている」


それが、俺があいつに対して出した結論である。

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