第9話 解放の日を求めて その1
その日。
コーサラ国王都の東西南北、それぞれを守備する大門にて。
解放軍の息のかかった民衆による、大規模なデモ活動が行われていた。
一つの門につき千人以上が集まった、今までにない規模で行われる超大規模活動。
これは解放軍が用意した作戦のうち、二つ目の動きを隠すための時間かせぎであった。
解放軍団長・スレイマンの立てた作戦の全容はこうである。
まずは、前述の通り一般市民たちによるデモ活動によって、憲兵や衛兵を釘付けにする。
いくら緊急事態といえ、非武装の一般市民だ。
鎮圧に武器を用いるわけにもいかない以上、どう対処するかを決めるのにもそれなりの時間を要するだろう。
そして、それが問題なく成功すれば次は第二段階。
停滞した現場を見かねて、”奴ら”は——警備隊は必ず出張ってくる。
そこを狙う。
「まったく、こんな日にデモとはなあ……わざわざ、俺たち警備隊が行かなくたってなあ」
「まあそう言うなって。この任務なら、かなりの点数稼ぎになりそ……う…」
「おっおい、どうし……ギャアアアッ!!」
民衆の中に紛れ込んだ解放軍の宿霊者たち、中でも実力的に劣る者たちが、応援に駆けつけた警備隊に向けて一斉に攻撃する。
もちろんいくら不意打ちとは言え、これで警備隊を一掃できる、などと甘い算段は立てていない。
そこからは、こちらの宿霊者たちと警備隊による、壮絶な市街戦が繰り広げられるだろう。
しかしあくまでこれは、計画を第三段階へと進めるための布石である。
第三段階。
ここまでの動きを見て、王国側はこう考えるはずだ。
これまで地方で騒動を起こし続けてきた解放軍が、ついに行動に出てきたと。
そこで奴らは、”市街地にて戦闘に当たっている敵宿霊者たち”がこちらの本体と考え、それに対して、あちらも主力を繰り出してくるはずだ。
すなわち——。
「でっ、出たぞお!各員、決して固まらずに行動しろお!!」
「オオオッ、作戦通りだ!奴らは我々第一班が引きつける!……ぐああッ!!」
そう、七十二柱である。
「フハハハっ、踊れ踊れえ!!蛮族どもが、我ら七十二柱をどうにかできると思うたか!」
彼らの強さは尋常ではない。解放軍として訓練を積んできた宿霊者たちでも、とても太刀打ちできないほどに——。
「黙って逝っとけぇぇ。…”炎熱爆雷”」
否。
太刀打ちは、できる。
解放軍が雌伏の4年間の中で、コーサラ国全土からかき集めた精鋭たちなら。
そして。
「なっ……パイモンがやられた…まさか、あの炎は……!」
元七十二柱にして、解放軍にて団長・スレイマンのもとで四年を過ごした彼なら。
「班長、すみません……我々ではやはり、七十二柱には…」
「…うるせえぇ、黙って治療受けに行けえぇ。…怪我ばっかしやがってバカどもがぁ。…後は、俺に任せろぉぉ」
「ハッ…ありがとうございます…!」
走り去る部下たちが見えなくなった後、くるりと振り返ったザザを待っていたのは、かつての同僚たちの怨嗟の瞳。
「その、炎。……貴様、死んだはずでは…裏切っていたのか、”豪炎”のザザ!」
「よおぉ、久しぶりだなぁ雑魚どもぉ。…てかよぉ、裏切ってなんかねえよおぉ」
「フンっ、裏切り者の戯言など聞くに耐えんな!貴様のその状態が、裏切りでなくなんだと言うのだ!」
「…ゴチャゴチャ抜かすなぁぁ。……ワケなんざ、てめえらが死んだら教えてやるよぉぉぉ」
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