81
「お? うーん……こりゃあ、参った。参りました」
「えっ? でもここに桂馬とか置いたらさ」
「おー? いやあ、それは思いつかんだ。その時点で私の負けだ」
「じぃちゃん……」
「強くなったな
「……ありがとう。僕も毎週こうやってじぃちゃんに鍛えられてるからね」
「ふ、言うようになったな。どれ、晩飯、食ってくか? おい、ばーさん――」
「いいよ、別に。昼、遅かったし、ウチで食べるから」
「そうか? おーい、さっきのは気にしないでくれ」
「すいません」
「透、本当はな、私は学生の頃、麻雀がやりたかったんだ」
「前も聞いたよ」
「ああ、何度でも言う。でも、麻雀は四人でやらんと楽しくないだろう? 三人ではだめだ。四人じゃないと」
「それで将棋?」
「そうだ。二人から始められるし、麻雀と違って運も絡まん。実力の世界だ」
「オセロやチェスとかは?」
「そんなもの私が学生だった頃には無かったよ。少し後でオセロは流行りはしたが、当時は将棋か麻雀の二択だった」
「へぇ」
「たまに麻雀をやる機会があったんだが、一人だけずば抜けて強い奴がいてな。あいつにだけは一度も勝てんかった。名前は……なんて言ったかな」
「
「そう! 薮谷だ! 悔しかったよ、どれだけ勉強しても……勝てなかった」
「勉強って、麻雀の?」
「当たり前だ」
「あまり誇るもんじゃないと思うけど、学生の頃でしょ?」
「誇って何が悪い。麻雀だって立派な頭の体操だ。待てよ、
「……分かってるよ。じゃあ、僕はそろそろ帰るよ。あとコレ、置いてくね」
「秀治? また優勝したのか。強くなったな」
「……ありがとう。じゃ、また来るね、じぃちゃん」
「あら、秀治さん。もうお帰りですか?」
「はい。まだ昼ですけど、今日はこれで」
「またいらしてくださいね。秀治さんと会った日はいい表情してるんですよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます