第21話 漠然とした不安〜楽になってくるまで

 やりたい事がわからない、自分で自分が分からない、虚無、漠然とした不安に襲われる日々が続いた。

 過干渉・支配&無関心で育つと、親の機嫌をとって生きることが当たり前になるので、自分がなくなってしまう。人生の主導権は常に親にあり、親の機嫌を取れるかどうかが、戦場を生き延びるカギとなっていた。

 親の機嫌を取るということは、自己を犠牲にするということだ。

 自己を犠牲にすると、自分というものが消えてしまう。自分というものが育まれないのだ。

 真っ暗な洞窟をどこかも分からず歩いているように未来が見えず、どうしたらいいかも分からず、漠然とした不安に駆られていた。

 先行き不透明な真っ只中を彷徨っている、そんな状況だ。精神が不安定な時ほど、大きな不安に呑み込まれる。

 未来を描けないと、人生の先がないような気がして、なんでここまできたのかも分からなくなって、突然泣いてしまう。涙が溢れて溢れて止まらなくなる。

 しばらくこの状態が続いて苦しかった。

 回復していく中で思ったことは、焦せらなくていいということだ。鬱でしんどいなら休んでいていい。スマホが見れる状態なら、動画や映画をボーと見ていればいい。

 人には人のペースがあり、やりたいことがないなら片っ端からやっていけばいい。無料である程度のことができる時代だから、興味のあることはやっていけばいいし、結局分からないことはしらみつぶしにやらないと見えてこない。

 動ける時にできることを少しずつやっていった。

 何をやってきたかというと、ネットの簡単なビジネス、イラスト、マンガ、ピアノ、作詞&作曲、ストーリー作りと勉強に映画見るなどだ。

 最近になって、これは仕事ではないな、これはもしかしたら副業になるかも、これが本業なんじゃないか? といったことが見えてきた気がする。

 最終的に行き着いた先が、今までやってきたことが使えたり、趣味に繋がったりしている。

 海を泳いで、色んな島を点々としたらたどり着いていった、という具合である。

 海を泳いで数々の島を渡り歩いていけばいい。だんだん何が向いているのか、何が好きなのか、何が嫌いなのか、できないのかが見えてくる。

 ちなみに私は表現・創作が好きで、興味のない単純作業やビジネスライクすぎる空気が嫌いだった。アイデアを出せないものは苦手、少しでも楽しいと感じられないことも苦手、人と直接関わることは現時点ではできない、外に出る体力はない、動くのが苦手、役者は違う、など浮かんできたことがある。

 現時点のものに過ぎないが、だんだん傾向が分かってきた。

 今なら言える、自分は表現・クリエイティブが好きだと。何かを表現するのが好きだ。できれば外ではなく家の方が好きだ。自分のペースでできる方が体調の面からも助かる。

 もう一つ、楽になってきたこととして、周りの人は味方ではないけど敵でもないということがある。じゃあ他人はなんなのかというと、単なる人なのだ。それ以外の何者でもない。ただ単に自分のことをやっているだけのその辺の人なのだ。

 これが分かってくると、気持ちがだいぶ楽になる。

 世の中敵ばかりと思っていたけど、そうじゃなかった。

 生きるのがずいぶん楽になってきて、外の人が怖くなくなってきた。

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