第13話 意外と良い先生もいる&学んだこと

 マイナス面が目立つのは仕方がない。百の良いことより一の嫌なことの方が残るものだ。

 全ての先生が嫌な人間だったわけではない。あまり関わりはなかったが、マンガの方の先生はアシスタントさんを育てることをやってきているからか、人間性のある人が多かった。

 授業で「難しい」「できない」「浮かばない」などといった生徒の発言に喝を入れるかのように「訓練だから」と言っていた先生がいた。

 この先生は良い先生だ! と直感した。


 他には、クオリティー重視ではあるけど、初心を忘れないで作品の良いところを見つけて褒めたり、傷つかない言い方ができる先生がいた。


 この先生は当たりだ! そう思えた先生がいた。その先生は、上達して欲しいと熱心に分かるまで教えてくれる人だった。その先生の持っていたアシスタントさんはデビューしていったそうだ。納得できる人柄だった。

 むしろ、こういう人が教える人として最適で、こういう人ばかりだったら良いのにと思った。

 そういう人はかなり稀なのがこの世だ。

 この人がいたのは相当大きい。

 もちろん、作品作りに関して熱意がすごいのであって、親子関係の辛さなどは分かってはくれないが、非常勤の方だしそこは仕方がない。


 このように、とても良い先生に出会えたことは大きい。

 世の中悪くないと思えるからだ。

 生徒のことを考えられる、素晴らしい人もいた。

 あまり関わらない科目の先生だったので、あまり会えなかったのが辛かった。高校の時も、いいなと思える先生ほどあまり関わることがなかった。

 こんな人がいるんだということをきっと忘れないだろう。



 外の世界を知ることで学んだことがある。

 その一、家で必須だった戦闘本能は必要ないので、捨てる必要がある。捨てなければ、邪魔になり、足枷となる。

 家のように自分の意見を言わねば食われる! 思ったことは言わなきゃ! 相手にコントロールされる前にこっちから言わねば! という精神はいらないということだ。

 当たり前だが、外の人は別に他人を潰そうとしているわけではない(例外はあり)。

 先生は、必要な時に一人ひとりの意見を聞いてくれるし、意外と各生徒それぞれを満遍なくみている。

 人材を育てる立場として当たり前と言われればそうなのだが、高校までで『教師は敵である』という認識が強かった。

 特に二年目になると、各それぞれを見ていることがよくわかった。

 しかし、性格のねじ曲がっていた私は最後まで懐疑的で睨みつけていた。どうしても心の奥底で他人を信用したり、心を開くことができないのだ。つくづく損をしていると思った。もっと警戒心を解いていればと思ったが、その時はガードが堅く不可能だった。



 その二、外で武装はしなくていい。

 人間不信で生きていると、どうせお前も敵なんだろ! 状態に陥る。一度この武装が染み付くと、簡単に落ちてはくれない。十年以上の積み重ねは恐ろしいと思う。


 その三、積み重ねたことは表面化してくる。

 積み上げというものは、良くも悪くも出てくるもので、悪い方に見事に出ていた。

 被害者意識が強く、攻撃的な態度で不都合なことを正当化していた。そして爆発するたびにリセットする癖がついてしまっていた。何度か爆発を繰り返すと、またリセットすればいっかという感覚になってきてしまっていた。これのまずいところは、爆発したことを省みることをせず、同じことを繰り返してしまうところだ。癖がつくと、私の場合はますます精神は荒れ、他責になり、人間関係をぶち壊し、被害者意識はますます強くなる。悪循環を止めることができなくなってしまう。

 正当化してしまっていたのは、おそらく高校までの、できる自分以外許されない、できる自分でなければならない、といった部分があったからだ。 

 できない自分を見せるのは恥で、それをどうにかしようとカバーしていた。カバーしてはいけなかったのだ。カバーしようとすればするほど破綻していった。

 悲劇を抱え込んだまま無茶するなということだ。

 気づいた時には失っているものが多くなり過ぎていた。(特にお金)

 精神も荒れに荒れて、良くない方にねじ曲がっていた。


 その四、子どもは親をコピーする。

 知らず知らずのうちに母親をコピーしていて、自分で驚いた。

親の口調を真似ていたのだ。何がなんでもこんな奴にはならない、とあれだけ反面教師にしていたのに、親そっくりになっていた。

狭い世界に閉じ込められ、親と同じ思考に見事にはまっていた。

 家という、狭い世界に閉じ込められることは本当に恐ろしい。


 その五、理解がないからこそ理解がある。

 防御として攻撃的な態度をとってしまったけど、先生達は寛容的だったり、ナイフを向ける人って繊細なんだろうね、など意外と核心をつくことを言っていた。

 色んな人がいるのをある程度把握しているからだろう。

 心に余裕があるから、こういう人はこうなんだろうねと想像できるのだろう。

 想像力の豊かさというのは心の豊かさなのかもしれないと思った。


 総括。

 二年間、悲劇をこじらせてかなりイタイ奴だったと思う。

 悪い方にこじれにこじれていた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る