第12話 閑話休題
どこに行っても親子関係が良好な人が優遇される。もしくは、何かしらのスキルを身につけることが幸いにもできた人、これらの人がいい扱い、声かけをされる。万国共通だ。
明らかな愛され育ちはやはり周囲の待遇がいい。見ていて差を実感する。
担任の発言等に傷ついて、一年目は自殺してやろうかと思っていた。
世間体が大事な人だったし、学校は所詮一般のルートで生きてこれた人用に作られている。
初めから一般のルートから大きく脱線している人に未来はないのだと実感したからだ。
普通の人より大幅に制限があるとはいえ、実際は理解のある人もいるし、普通に生きてていい。だけど、狭い世界では教師の存在が自然と大きくなるので「命なんか繋ぐんじゃなかった」「生きようなんて思うんじゃなかった」戦場を凌いできたことをすさまじく後悔した。
ある実習の帰りの新幹線でのこと。
人が飛び降りて、新幹線がストップしてしまった。
無事に新幹線に乗れた後、案内が流れ、その日中に帰れないことが確定した。
すると、周囲の生徒がその日中に帰れないことが確定して吹っ切れた。
「はい、帰れないの確定」
「カラオケで時間潰そうや」
「コンビニ空いとるかなー」
うろ覚えだが、こんな内容だった。
当人たちは、単純に帰れるまでどうやって時間を潰そうか考え、気楽に言ったのだろう。
それに怒りを覚え、しばらく窓の外を見ていた。
飛び降りた人への弔いもないどころか、飛び降りた人を迷惑呼ばわりしていた。
そりゃ次に自分たちがどうしたらいいかを考えるのは当然だ。
けど、意を決して飛び降りを選択した人をもう少し考えたっていいのではないか? 思えば思うほど、周囲の生徒たちへのイライラが募った。
窓の外を見ながら、頭の中でamazarashiの曲が流れていて、ボーカルの秋田さんが飛び降りた人への弔いの曲を歌っていた。
担任が言った、以前のある生徒への「トラウマなんてすぐ忘れたらいいのにね」と同様、とてつもなく腹が立った。
教師も生徒も大っ嫌いだった。
せっかく家から逃げてストレスから解放されたのに、またストレスにやられる日々が続いて疲れた。
収まっていた神経痛が再び痛み出したから嫌になる。
何のために家から逃げたんだろう。
そう思っていた。
度重なる教師の発言や態度なら腹が立ち、担任の先生を頭の中でナイフで何度も何度も刺して血まみれにして、顔面を蹴り飛ばした。
イラストの先生は鈍器で頭を数回殴って殺した。
この妄想が日々繰り返された。
暴力には暴力だと学んだ。
人を本気で殺しかけた。
学校の世界が全てになると、街にいる人に対しても「どうせお前も敵なんだろ」「愛され育ちばっかいい人生送りやがって」などと思うようになり、世界を終わらせたいと思った。
駅の中で、電車の中でカッターナイフでも握って斬りつけてやろうかと本気で思った。今までの我慢の反動で振り切って血まみれにしてやろうかと思った。
考えがどうにかしていたと今でこそ思えるけど、当時はそんなことばかりが頭を巡っていた。
思い出した話。
そういえば昔、学校でいじめられていた子が「包丁持ってきて」と言ったらしい。
当時は、いじめられ続けるとそりゃそうなるよな、くらいにしか思っていなかった。
今ならその人のことが多少理解できる気がした。
先生に包丁を突き付けようかと思ったくらいだ。殺すわけではなく、苦しさをわかって欲しいから、その意味を込めてナイフを持ち出したかった。
殺して良いなら殺したかった。少年院に行かないポリシーは投げ捨てても良いくらいに思っていた。
メンタルの保ち方。
闇すぎて安定したメンタルも何もなかったのだが、言語化して吐き出すことは意味があるのではないかと思っていたので、作詞の練習ついでに作詞にして苦しさを吐き出していた。
初期の頃のはしないかもしれないが、音源にして完成させたいと思っている。
読み返してみると、とてつもなく苦しかったことがよく分かる内容だった。
人生なんてそんなもんだ。
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