第6話 進学先の話その一

 家から逃げるか死ぬかを決める大事な二年間だ。

 二十歳になったら生きるか死ぬか決めようと思っていた。

 初めは生きる希望があまりなかったけど、二十代でメンタルのケアをして巻き返せるんじゃないかと思えてきて、家から逃げようと思った。

 そうしないと、命を繋いできた意味がないし、命があったらやりたかったことだってあった。ここで死ぬのはナンセンスだ。

 家から逃げようと思い、親にこぼしてみた。

「一人暮らしがしたい」

 すると母と祖母が一丸となって反撃してきた。

「「金がかかる!」」

 毒親は団結力が強いのか、思考回路が似ているからなのか、とにかく結びつきが強い。そして、二人ともお金のことしか頭にない。一周回って笑えてくるほどだ。

 二人とも自分が加害者で子どもを精神的に追いやり潰したことに対して自覚がなく、それどころかまともにちゃんと育てたと思っている。

 あれだけ子どもの精神を壊しておいて良く言えたものである。毒親はとんでもなく図太い精神の持ち主だ。

 この人たちの頭には『生活保護』や『障害年金』の文字がないのだろう。

 一度押さえ込まれてしまったが、私はめげなかった。めでけたまるか!

 押さえ込んでいた感情のプレートが我慢できなくなり、ついに大爆発を起こした。壁に穴を開ける少年の気持ちがわかった気がした。

 親に何と言ったか定かでないけど、

「いい加減人生をコントロールするな!」「お前の人生じゃない!」「ふざけるな!」

こんなことを言った気がする。

 火山の噴火のように、プレートを押さえ込みきれなくなった大地震のように、膨れ上がった爆弾が爆発した。

 

 逃げ場所は決めていた。社会保障が充実していそうなところは大都会の東京か、大阪あたりだろうと見当をつけていた。東京に住むイメージができなかったので、大阪にすることにした。問題は、大阪のどこに行けばいいのかだ。田舎に行っても社会保障があるとは限らない。なら、街中の方がいいのだろうかと思った。やりたい習い事もあったし、田舎過ぎないところにしようと思った。

 どこの不動産屋に行けばいいんだ? と壁にぶつかった時、運良く長らく会っていなかった父と連絡が取れることになった。

 不幸ながらに自分はついていると思う。そこに救われた。


 将来設計

 昔やっていた絵を描いたり、ポスターの簡単なデザインをやっていた。ビジュアルはお金になるんじゃないかと思っていたので、イラストを仕事にしようと思った。

 後でこの考えは違うと気づくが、それは数年後のお話。


 ストレス

 ストレスがかなり限界に達していた。

 胸のあたりの神経痛はさらにひどくなり、軽く抑えるだけで悲鳴を上げるほど痛かった。歯を食いしばってなんとか耐えられないことはない、それくらいの痛みだった。

 慢性的な鈍痛になっていて、痛みの範囲は拡大していた。

 何も対処せず、自己犠牲を重ねてきた結果がこれだ。

 ストレスは他にも影響を及ぼした。

 肌がひどく荒れて痛くてたまらない状態になったのだ。秋頃の乾燥してきた季節というのもあるけど、学校と家の両方のストレスのせいでもあるだろう。

 学校も、もともと行きたかったところではないし、人ともやっていけなかったので、ストレスがかなり溜まっていた。

 最初のうちはガーゼや市販薬を買ってどうにかしていたけど、一向に治る気がしない。それどころかどんどん悪化していく。腕全体、首回り、顔。主に上半身の皮膚が荒れていた。腕を曲げようとすると痛い。首を回そうとすると痛い。

 もう無理だと思い皮膚科に駆け込んだ。

 状態が酷かったので、治るまでに時間がかかったが、元通りに治った。

 ストレスで肌が荒れたことはあったけど、ここまで酷かったのは後にも先にもこの時だけだ。

 乾燥やストレスで肌が荒れることは今でもあって、皮膚科の先生にお世話になっている。


 

 



 

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