第3話 小学校
私は学校が大の苦手だ。とにかく相性が悪い。集団がどうも苦手なのだ。そして人が怖い。
確実にあの時(絵を描いていた時)、母親に冷たい態度を取られ、それ以降親と信頼関係が築けなかったことが原因だろう。
完全に人間不信で人間恐怖症だった。ついでに『一般』も苦手だった。
小学一年生の時は気分が悪いことを理由に学校をよく休んでいた。学校への連絡は母がしてくれていたため、母はもしかしたら味方なんじゃないか、本当はいい人なんじゃないかと勘違いしていた。完全にバカである。
よく休むようになると、うるさくなってくるのは祖父母だ。何を言っていたか覚えてはいないけど『学校に行かない子はダメな子だ』というような内容だった。
祖父母の時代(戦時中あたり)は学校に行けることが貴重だっただろうし、学校で学べることはとても大きかったのだと思う。学校に行けて、進学できた人は就職できて、生活が安定したのだと思う。だから学校に行かないなんて、ありえないことだったのかもしれない。
それが聞こえてくるのがしんどかった。学校は居場所じゃない。家も居場所じゃない。どこにも居場所はなかった。
余談だが、人が怖すぎて体育館前での物販に行けず、母が注文したものが来ていないと連絡したらしく、後で先生に詰め寄られたのが怖かった。
小学二年生になると、家にいたくないから学校に行くようになった。自殺行為の始まりである。
幸い、仲良くしてくれる友人に巡り会うことができて救われたのが不幸中の幸いだ。二年生はまだ楽しかった。
とはいえ学校は苦痛だし、着替えるのが苦痛なので制服のまま寝たりしていた。翌朝の着替えるハードルがなくなるので、精神的にだいぶ楽になるからだ。
さて、ここから地獄が始まる。
小学三年生になると、精神が半分壊れた状態になった。生きているような、死んでいるようなそんな感覚だった。
この頃から幼少期に心を閉ざし、頭の中に閉じこもったことが悪い方へと出始める。
そろばんを使った算数の授業で、そろばんを使うのが苦手で、おそらく一人だけ出来なくて泣いた覚えがある。先生の「あーあー、いじけたー」というようなセリフがよけいに辛かったのを覚えている。
脳機能に明らかに障害が出始めていた。検査などはしていないけど、きっと脳は変形したり、萎縮しているんだと思う。今でも人より内容の理解が三倍以上は遅いと思っている。体調もあるだろうけど、すぐに理解することが困難なことが多い。なかなか入ってこないのだ。
家族に対してのストレスが強くなってきて、半ば本気で自殺に見せかけた他殺の方法を、ドラマなどを見て探していた。もちろんドラマの内容が上手くいくかは分からないけど、殺せるのなら全員殺したかった。殺し方を簡単なイラスト描いてノートにメモしていた。
四〜五年生
精神はだいぶ壊れていた。卒業までがとてつもなく長く感じて早く卒業式が来ないかと思っていた。
六年生
今までのストレスがようやく体に現れる。眠れない毎日が続き、とうとう不眠症になって一週間ほど学校を休んだ。
本当はカウンセリングか精神科に行きたかったけど、精神科はハードルを感じて行けず、カウンセリングは、相手を外すと終わりだと思うと怖くて行けなかった。結局通ったのは最寄りの内科。
病院の先生には言い出せなかった。『家が辛い』と。極度の人間不信からと、なんと母が診察室までついてきたのだ。とてもじゃないけど言えなかった。
今思えば、それを逆手にとって暴露してしまうという手もあったし、紙に書いてこっそり渡したってよかった。つくづく私は行動力がないと思う。
その他のこと
親がお金のかかることを嫌うので、ピアノを習いたかったけど諦めた。発達期にできなかったのは大きかったと思う。
ピアノの代わりに漫画雑誌を毎月買っていた。ラクガキしたり、小説を書いて挿絵を描いたりしていた。
ぶつくさ言われるだろうなと思っていたら、予想通り「毎月金かかっとんじゃけーなー」と言われた。これを聞いて、ピアノを習いに行けないと確信した。
ついでに、いくらくらい使ってどんな反応をするか試すため、一月に何冊か雑誌を買ってみた。すると、二、三冊でだいたい千円〜千五百円くらいでとてもうるさく言われた。
ピアノの月謝は一回に約五千円、月に二回で一万円はくだらないと思うと、やっぱりピアノは断念せざるを得なかった。
街に行くと人が多い。家族連れで歩いている人も多い。仲のいい家族、とりわけ手を繋いで歩いている家族を目にすることがあった。
見た瞬間、この世の理不尽と不条理、不平等さを呪った。その場でガラス瓶を何本も叩き割りたかった。
人生は初めから決まっている。
それが現実だ。
小学校を卒業し、次なる試練が待ち受けていた。
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