第2話 五歳ごろ

 田んぼばかりの田舎で家で暮らすことしかできないとなれば、まともに生きていける保証はない。ろくに生きていけないことが約束されている。それを想像しただけで、生きる意味を失っていた。

 五歳はとっくに自我がある。何も感じ取れない、考えられないと思われては困る。むしろ言葉がわからないからこそ、直感的に感じ取るのだ。

 この頃、引きこもってゲームをしていた記憶がある。やりたいこともなく、苦痛な時間をどうにかして埋めようとし出したのはこの頃からだろう。

 ゲームをするのが楽しかったかといわれれば、微妙なところだ。普通はゲームをしているのは楽しいことだと思うだろう。

 実はそんなことはなく、純粋に楽しい部分もあるが、苦痛な時間を紛らわせる、その役割の方が大きかった。

 未来はないと確信していたので、十五歳くらいで死にたいと半ば本気で思っていた。

 五歳なんてそんなものだ。

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