五景

五景


yesterday

カンナの家

観鈴は黙って暗い部屋でテレビをみている

カンナが帰ってくる


カンナ ただいま。

観鈴 おかえり。どこ行ってたの。

カンナ いろんなところ。


観鈴、カンナの腕を握る


カンナ なによ。

観鈴 アンタの糸、ちょうだいよ。赤い糸。

カンナ なんで。

観鈴 わたしには何もない。死んでしまう。死にたくない。

カンナ 親のやつ、取ってきたらいいじゃん。私のは私のだから。

観鈴 もう全部使ってないの。このままじゃ、死んじゃう。

カンナ 生きていくよ。死ぬまで。

観鈴 私を憐れんでよ。同情してよ。なんでいじめるの。

カンナ 私は何もしていない。強いていうなら突き放している。でもいじめてはいない。被害妄想も大概にして。

観鈴 たった一人の肉親だよ。助け合いましょ。

カンナ 貴方は自分で不幸をつくっている。その不幸で自らを傷つけて、どうしようもなくなってから助け合う? ふざけるな。その前何をしていたの。私のことほったらかしで遊びまくって。遊べなくなって、自分の現実に気づいて焦ってバタバタ。くだらない。


カンナ退場


観鈴 助けてよ。見捨てないで。怖いの。死にたくないの。カンナ。カンナ。


観鈴泣く


観鈴 不幸だ。私、不幸だ。

カンナ それやめて。ほんとうざい。


カンナやってくる

カンナ観鈴を抱きしめて頭を撫でる


観鈴 辛いよ。苦しいよ。

カンナ うるせぇ。この馬鹿女。早く死ね。

観鈴 なんで。なんで。なんで。

カンナ うぜえんだよ。早く死ね。

観鈴 助けて助けて。助けてよ。

カンナ 死ね。早くくたばれ。

観鈴 いやだいやだいやだ。


観鈴、失神する


カンナ 救いようがないよ。ほんと。もう。


暗転

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