第22話 『新装備と白竜姫クエスト』
約束の3時間があっという間に経ち、私は再び【USO】にログインしていた。
「ルミナちゃん〜、お待たせしちゃったわね。最高の魔法剣が出来たわよん!」
ローズマリーさんが嬉しそうにそう話し、私に魔法剣を渡してくれる。
「わぁ……すごく綺麗っ! ありがとうございます」
その魔法剣は刀身がクリスタルで出来ており、陽光が反射すると七色の虹を作り出していた。
ただ、その輝く刀身とは正反対に、刃の部分と柄の部分は夜空のような漆黒となっている。
ちなみに一緒に備えられていた鞘も、黒とクリスタルを基調としており、息をのむほどに美しい逸品だった。
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『新装備を入手しました』
【装備詳細】
▷『黒竜乃煌剣(N)』
⇒特殊効果:【永劫不滅】(破壊されない)
⇒黒竜の力を宿した剣。非常に強い力を備えているが未完成品。
⇒装備時【STR】値+30%———————————————————————
すごく強くて良さそうな感じだけど……。
『未完成品』ってどういうこと?
私が疑問に思ったことを、ローズマリーさんもすぐに察してくれたらしい。
「実はその剣、もう1段階進化するみたいなのよ。でもドラゴン関係の素材が足りてないみたいだわ」
「そうなんですね。ドラゴンの素材……ってもしかして?!」
この状況で思い浮かぶのは、どう考えても第1回イベント報酬で入手した【白竜姫の住処へと至る鍵】の存在だった。
詳細をもう一度確認するために、アイテムボックスから鍵を取り出してみる。
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『【白竜姫の住処へと至る鍵】を使用しますか?』
※超絶高難易度クエストが発生します。
※使用後は専用エリアへと移動します。———————————————————————
これを使えば、超絶高難易度のクエストが発生しちゃうけど……ドラゴンの素材が手に入るかも?
私がアイテムを眺めていると、どこから出てきたのかお兄ちゃんがヒョイと覗き込んできた。
「確かに、このクエストの雰囲気だと素材ゲットの可能性あるな」
「お、おおおお兄ちゃんっ?! いつの間に!」
びっくりしすぎて、ものすごくかんでしまった。
「ルミナの新装備が気になって来てみたら、何やら面白いことになってるな。超絶高難易度って書いてるけど、きっと今のルミナなら大丈夫だろう」
お兄ちゃんはそう話し、優しく頭をなでなでしてくれた。
本当は挑戦するの少し不安だったんだよね……。
さらっと安心させてくれて、本当……お兄ちゃんってそういうところ素敵だなぁ。
「ありがとっ……お兄ちゃん! 私頑張ってくるね」
「うん! 行ってきな!」
親指を立てて、ニカっと歯を見せながらお兄ちゃんは私のことを見送ってくれた。
「ンフフ。素敵な兄妹愛ねぇ。素材が手に入ったら、またあたしのところにいらっしゃい」
「ローズマリーさんも本当にありがとうございます! 行ってきますっ」
ローズマリーさんにも手を振り【白竜姫の住処へと至る鍵】を使用すると、身体全体が眩しい光に包まれるのを確認しながら、私は静かに目を閉じた。
***
数秒間目を閉じた後、陽の光の暖かさを感じたのでソッと目を開いてみる。
「ここが……専用エリア?」
マップ画面を開いてみると『竜の国』という名前が付けられており、フィールドの地形は完全に画面から見切れてしまうほど広いことが分かる。
確認するように周囲を見渡すと、目の前には広大な緑の草に、隆起する数多の大きな岩山。
そして全てを包み込むかのような茜色に染まる夕焼けの空が広がっていた。
ただ茜色の中に一点、黒く大きな物体が高速で動いており、私の上空まで来ると更に加速して迫って来た。
「えっ……わわっ……。こっちにこないでぇぇぇ!!」
段々と近づくに連れ風圧に煽られ、目も開くことも困難になり、ただ飛ばされないように必死に踏ん張る。
やがて大きな物体は私の目の前まで降下すると、地響きを立てながら地面に着地してきた。
「一体、何が降りてきたの?!」
モンスター?
それともボス?!
目を開き確認すると、先程は逆光で黒く見えてものは、美しく白い輝きを放つ鱗を身体に纏った『白竜姫』だった。
『新たに竜王となる資格を持つ者ですね。私の名は白竜姫ホワイトパール。どうか貴女の力で偽りの王を名乗る邪竜王を倒して欲しいのです』
ふぇ?!
竜が喋ったぁ?!
実際は頭の中に響くような形で聞こえてきたのだが、まさか語りかけられると思っていなかったので驚いてしまった。
それより……。
「偽りの王を倒して欲しいって……その砂利王ってのと戦わなきゃなのかな?」
疑問に思っているとまるでタイミングを計ったかのように、クエスト発生の通知音とポップアップがなされた。
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【超絶高難易度クエスト】
▷《真の竜王たる資格者》
※推奨レベル8,000
⇒黒竜王の存在が無くなりし今、新たな竜の王を名乗る邪神竜が姿を現した。【竜王を継ぐ者】として、汚れた力を宿す邪竜王に鉄槌を下せ。
《討伐対象》
⇒邪竜王カオスロードドラゴン×1
《クリア報酬》
①ユニークシリーズ装備
②ユニーク素材アイテム
③SP10,000
《注意事項》
クエスト失敗時は、竜の国に立ち入る資格が消滅するため一度のみの挑戦となります。———————————————————————
あっ……。
砂利王じゃなくて、邪竜王だったのね!
それよりクエストの推奨レベル8,000?!
絶対にむりむりむりーーっ!!!
とてもじゃないけど、私のレベル25では太刀打ちできそうもない。
『大丈夫ですよ。最終局面では、私が貴女に力を授けますから。さぁ背に乗って!』
半ば無理やり背中に乗せられると、白竜姫は空高く飛び上がりそのまま『竜王の神殿』と呼ばれる場所まで高速で移動した。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 止めてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
綺麗な夕焼けを見渡す余裕もなく、私の叫び声だけが虚しく響き渡っていた。
***
移動先である『竜王の神殿』には既に毒々しい濃い紫色に染まっている、巨大な竜の姿が確認できた。
教えてもらったわけではないが、私にはそれが邪竜王であると本能的に理解できた。
なんていうか……。
頭はドラゴンなのに、体はものすごく筋肉質で武闘家みたい。
その姿からも分かるように、普通のドラゴンとは少し違っているようだった。
邪竜王が私を見つけると、鼻で笑うかのように唸り声を上げた。
『グァァァァァァァァァ? オマエがオレサマのアイテか? コレはケッサクだな』
完全に馬鹿にされてるなぁ……私。
『黒竜乃煌剣(N)』を右手に装備し、邪竜王に刃を振り向ける。
「あなたが嘘つきのドラゴンさんだね。悪いけどお仕置きしちゃうんだから!」
『タカダカヒトフゼイがオシオキだと? グッハッハッハッ……ならばオレサマのシンのチカラをミセテやるぞ!』
邪竜王はそう告げ両腕を広げながら天に向けて咆哮すると、頭上に名前とHPゲージが展開された。
HPゲージは通常のボスモンスターの10倍以上の長さをしているにも関わらず、ゲージの数は全部で6本。
——それは明らかに、異次元なレベルであることを示していた。
ゴクッ……。
さすがは超絶高難易度だね。
でもここは……先手必勝。
大ダメージで一気に攻めちゃうんだから!
私の代名詞でもある《ルミナ・スラッシュⅡ》を使用し、周囲に暴風を巻き起こしながら七色に煌めく斬撃を二発撃ち込んでいく。
「装備もかなり整ってきてるし、今の私の攻撃力ならゲージ2本くらいは簡単に………えっ?!」
《ルミナ・スラッシュⅡ》による斬撃は、間違いなく邪竜王のお腹辺りに命中したはずだったが、HPゲージは5ミリ削れたかどうかというレベルだった。
「冗談……でしょ?」
『ナンだ? イマのカユいのはコウゲキでもシタノカ? コウゲキとは、コウイウモノだとオソワラナカッタのか?』
邪竜王はそう言い放つと、口を開き紫色に光る不気味なエネルギーを溜め始めた。
一眼見て明らかにレベルが違いすぎると理解できる迫力差に、なす術なく動く事が出来ない。
「あ……あぁぅ……」
『グァァァァァァァァァ!!!!』
紫色に輝く閃光が放出され、周囲の草原を一直線上に焼け野原へと変化させながら迫ってきた。
「うぐぐぐ………ぅぅ………こんな、ところ……で……きゃっ……」
魔法剣で受け止めようとするも、力は全く及ばず。
《不滅乃要塞》で溜め込んでいたHPがゴッソリと削られてしまったが、何とか耐え凌ぐことができた。
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【HP:16580 / 600】———————————————————————
そんな……一気に3万も減らされたの?!
私の攻撃は全然ダメージ入らないのに……。
異次元レベルの強さを体感し焦りを隠せない私に対して、邪竜王は余裕の表情でニタリと笑いを見せるのであった。
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【ステータス】
ルミナ[Level:25]
HP:16,580/600 (《不滅乃要塞》により蓄積中)
MP:1,200/1,200
▷STR:【30,000】
⇒実数値:【45,000】
▷VIT:【1】▷INT:【1】
▷DEX:【1】▷AGI:【1】▷CRI:【1】
【保有ステータスポイント】
▷【0】———————————————————————
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【装備一覧】
武器(右)⇒【黒竜乃煌剣(N)】(STR+30%)
武器(左)⇒なし
頭⇒なし
腕⇒なし
胴⇒【旅人の白服(N)】特殊効果なし
腰⇒なし
足⇒【旅人の靴(N)】特殊効果なし
装飾品①
⇒【SPの指輪】
装飾品②
⇒【鬼神化乃指輪】(STR+20%、VIT−20%)———————————————————————
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