第21話 『装備依頼とデートの約束』
「えっと……あなたがお兄ちゃんの……?」
「やっだぁ。ナイトちゃんったら、あたしのこと話してくれてたんじゃないのん?」
ナイトちゃん?
……ってお兄ちゃんのことだよね?!
お兄ちゃんから聞いていたクセの強いという言葉が、ようやく理解できた瞬間だった。
「えっと……すごく腕のいい【
「あらやだ、ナイトちゃんったらウフフ。ごめんなさいね、あたしナイトちゃんのファンだからつい」
「あはは……。そうなんですね」
「あたしはローズマリーよん。よ・ろ・し・く・ねん、うふっ♡」
「ルミナです。私の方こそよろしくお願いします」
返事の仕方に少し戸惑いを覚えつつ、これからお世話になる人なので丁寧に挨拶をしておいた。
どうやらこの誠実な態度が好感だったらしく、にこやかに微笑んでくれた。
「んじゃあ、早速で悪いけど商談に入りましょ。素材は持ち込みなのかしら?」
「はい! 一応この素材でお願いしたいと思ってるんですけど……」
所持素材アイテム一覧の中から、必要なものを選択してローズマリーさんに見せる。
———————————————————————
▷『黒竜王のコア×1』
▷『黒竜王の牙×2』
▷『クリスタルの魔光石の塊×1』———————————————————————
「な……なんなのこれ?!」
「えっと……これだとダメです……か?」
ローズマリーさんは私が見せた素材アイテムの見つめながら、真っ青な表情になってしまった。
どうしよう?
機嫌損ねちゃったのかな……。
少し不安になっていると、ローズマリーさんは急に両眼をカッと見開き、前のめりで話し始めた。
「そうじゃないわ。こんな高レアアイテムで造らせて貰えるなんて、最高よん! これならあたし史上最高の装備が造れそうだわ!!」
ローズマリーさん超大興奮ッ!
ただ、素材の数が少ないため造れるのは武器のみになるらしい。
「ちなみに、ルミナちゃんって【
「えっと……。実は……【STR】に全部です」
「へ?……」
うっ……。
やっぱりそういう反応だよね?
ただ、ローズマリーさんは初めこそ驚いた様子だったが、すぐににっこりと微笑んでくれた。
「なるほどね。じゃああなたに合うように【STR】特化の魔法剣を造るわね。最高傑作にしてみせるわよん」
私のステータスに合ったものを造ってもらえそうで、安心した気持ちになった。
ただ少し不安なのは、私の所持金で足りるかどうかだ。
一応400万ゴールドあるけど、多分大丈夫だよね?
段々と心配になってしまい、恐る恐る聞いてみることにした。
「ちなみにお値段ってどれくらいですか……?」
「そうねぇ。オリジナル装備だと相場は2,000万ゴールドくらいかしら。今回のはかなり高レアだから更に上乗せされて、もう少しかなりかかりそうだけど」
ひぃぃぃ……高すぎるっ!!
ぜ、全然足りないよっ!!
あまりの値段の高さに暗い表情になってしまっていると、ローズマリーさんは優しく伝えてくれる。
「大丈夫よ。今回はタダにしておいてあ・げ・る♡」
……タダ?
ふぇ?! 無料でいいってことだよね??
ものすごくありがたいお話だったが、さすがにそれだとローズマリーさんが商売にならないので、申し訳ない気持ちになった。
「ならあたしが持っている、使わないレアアイテムを買い取ってくれないかしら? ルミナちゃんなら使えると思うし」
ローズマリーさんは、そう話すと手慣れた手付きで何やら操作を始めた。
———————————————————————
『ローズマリーさんからトレード申請が届きました』
【装備名】
▷鬼神化の指輪(装飾品)
⇒【STR】を20%上昇させる。代わりに【VIT】を20%減少させる。
※ただしステータス値は【 1 】より低くならない。
『100万ゴールドで取引を行いますか?』
【▶︎YES / NO】———————————————————————
【STR】が20%も上昇するの!
【VIT】は減少しちゃうけど、最初から振ってない私はこれ以上減らないから、実質プラス効果だけ?!
「こ、これ本当にいいんですか?」
「【VIT】値減少の効果のおかげで、デスペナ怖さに誰も欲しがらないのよね。でもルミナちゃんなら良い装備品になると思って」
オリジナル装備も無料で造ってもらえて、こんなレアアイテムを100万ゴールドで買えるなんて。
もちろん断る理由はなかったので、ありがたく購入することにした。
「フフフ、ありがとうねん。武器の方は3時間くらいで出来ると思うから、完成したら呼ぶわねん♡」
最後にローズマリーさんとフレンド登録を済ませた私は、一旦ログアウトすることにした。
「——ほんっとナイトちゃんったら、事前に5,000万ゴールドもあたしに渡してくれちゃって。『可愛い妹の為に最高の逸品を造ってやって欲しい。ただし俺からお金を受け取ったことは伝えるな』なんて。ものすごく愛されてるのね、ルミナちゃん」
ログアウトした私の知らないところで、ローズマリーさんはそう呟いていたのだった。
***
「ふぅ……。3時間って言ってたし、先に宿題とか済ませちゃおっかな」
ログアウトを終え、飲み物を取りに自室からリビングへ移動すると、椅子に腰掛けコーヒーを堪能するお兄ちゃんの姿があった。
ティーカップ持ってるだけなのに、何であんなにかっこいいんだろ……。
離れた所でしばらくの間うっとりと見つめていると、お兄ちゃんが私の存在に気付いた。
「お! るみなお帰り。ローズマリーには会えたか?」
「う、うん。ちゃんと武器造ってくれるって!」
「良かった。あの人の装備は間違いなく最高だからな。補正値と特殊効果を付けてくれるんだよな」
「そうなんだ。すごくいい人だったし、楽しみだなぁ」
お兄ちゃんは再びカップを持ち上げて、コーヒーを口に含む。
そんな中、私の頭の中では例の約束のことをどう伝えるかばかりがよぎっていた。
ど、どどどうしよう。
そもそもお兄ちゃん約束のこと忘れちゃってるかもだし……。
ここは、はっきりと伝えるべき?
悩みに悩んだ結果、思い切ってストレートに伝えることにした。
「あ、あのねお兄ちゃん。約束のこと覚えてる……?」
「ん? ……あぁ、ちゃんと覚えてるぞ。兄ちゃん優しいからどんな内容でも大丈夫だぞ?」
お兄ちゃん、ちゃんと覚えててくれたっ!
それだけでものすごく幸せな気持ちになり、決心して想いを伝えることにした。
「あのね、お兄ちゃん。2月14日に私とデートしよっ!」
「あぁ、いい——でぇ、デートォォ?!」
「うん。私とデート……ダメかな?」
数秒間の沈黙……。
お兄ちゃんは固まったまま動かない。
「——よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
そして突然の大声とガッツポーズをしながら、席を立つお兄ちゃんに驚かされてしまった。
あのクールでいつも冷静な雰囲気のお兄ちゃんが、子供みたいに無邪気に喜んで両手でガッツポーズ?!
新たな一面を見れてしまい、ときめいてドキドキしてしまう。
ドキドキしちゃう……。
……けど、お兄ちゃんの前だし、今は赤くなるわけにいかないよぉ。
「よし、14日は朝から夜まで予定を空けておくよ。朝からデートで、夜はお楽しみだな」
夜はお楽しみ?
それってお兄ちゃん……私とそういうことを?
良からぬ妄想をしてしまい、赤くなりかけていた頬が一気に加速し、頭から湯気が立ちそうなほど火照ってしまう。
完全に意識してしまい、お兄ちゃんのことを直視できなくなってしまった。
はわわわわ……きゅー……。
でも、お兄ちゃんとなら私は……。
だってファーストキスも、お兄ちゃんのために取ってあるんだもんっ!
そう思い、チラッとお兄ちゃんの方に目配せした。
「ん? 夜も楽しみだな【USO】デート!」
「——#/_@&☆°!!!!」
うぇーん……そっちのお楽しみだったのね!
うぅ……ちょっとえっちなこと考えてた私……恥ずかしいっっ!!
「お兄ちゃんのばかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
勝手に早とちりしてしまった恥ずかしさと、少し期待してしまったので残念な気持ちが入り混じり、私の心の叫びが部屋いっぱいに響き渡ったのだった。
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