第2章 第1回イベント編

第15話 『第1回イベント告知』

 ——第1回イベント前日。


 お兄ちゃんにランキングトップ3位以内に入る話を持ちかけた私は、当日まで少しでも足掻くためにクエストを受けていた。


 今日は大親友のリサリサと一緒にいるんだよね。


「効率の良さそうなクエストはこれでお終いかな……。ルミナ、レベルいくつになったの?」

「お終いかぁ。レベル2つ上がって、今25だよ」

「レベル25ね……。最前線の人達は40超えばかりだからランキング入りは厳しそうだね」


 リサリサには、お兄ちゃんと約束を交わした話をしていたので、ランキング入りの難しさを教えてくれた。


 もちろん、お兄ちゃんに何をお願いするかまでは内緒にしてるんだけどね。


 リサリサは、あれからレベル上げをかなり頑張ったらしく、レベル38になったらしい。


 いいなぁ……。

 私もせめてそれくらいなら、


「ねえ聞いて聞いて! 私やっと【INT】が500になったの!」

「す、すごぃ!」

「でしょでしょー。他のステータスにも、少し振ってるんだけど【死霊術師ネクロマンサー】は魔法攻撃力の【INT】が大事だから、頑張って振り分けたんだよね」


 自慢げに話すリサリサは、すごく嬉しそうだった。


 やっぱりリサリサはベテランだしすごいなぁ。

 私の【INT】なんて1だし……。

 こんな弱々でイベント大丈夫なのかな。


 私は自分の【STR】値が異常であることに気付いておらず、少し不安になってしまっていた。


 そんな私の表情を見て、リサリサもフォローの言葉をかけてくれた。


「まぁ【付与術師エンチャンター】は【INT】に振る余裕ないから仕方ないよ……。もう少しレベル上がると、振れるようになるんだけどね」


 リサリサはそう言ってくれるけど、私が【INT】に振れる日って無さそうだよね。


 私は自分のステータスを眺めながら、そう感じていた。



———————————————————————

【ステータス】


 ルミナ[Level:25]


 HP:600 MP:1200


 ▷STR:【25,000】▷VIT:【1】▷INT:【1】

 ▷DEX:【1】▷AGI:【1】▷CRI:【1】


【保有ステータスポイント】

 ▷【0】———————————————————————



【STR】の数値ずっと上げ続けてるけど……。

 これって上限いくつなのかな。


「——聞いてる、ルミナ?」

「……あっ、ごめん。どうしたの?!」

「ほら、イベントの詳細が発表されてるよ!」


 リサリサに言われて、慌てて運営から届いていたイベント告知のポップを開いてみる。



 ———————————————————————

【第1回イベント告知】


『プレイヤーの皆様へ、明日開催予定の第1回イベントの告知を行います』


《イベント内容》

 ☆全プレイヤーによるバトルロイヤル

 ⇒みんなで獲得ポイントを奪い競おう!


 ☆モンスターも専用フィールドに配置

 ⇒モンスターからもポイントが獲得できるぞ!


 ☆制限時間内であれば何度でも復活できる

 ⇒HP全損時は10分間のペナルティ後に復活できるぞ!


 ☆倒されると保有ポイントは……

 ⇒倒された相手にポイントが移ってしまうぞ。

 ⇒攻撃を受けた相手が複数の場合は、最もダメージ量を多く与えられた相手にポイントが付与されるぞ。

 ⇒モンスターに倒された場合もポイントが付与されるぞ。


 ☆制限時間時間は6時間

 ⇒イベント中は時間加速が使用されるので、現実時間では60分間だぞ!


 ☆ランキング10位以内のプレイヤーについて

 ⇒イベント中は、常時頭の上に王冠マークが付くぞ!

 ⇒1位〜10位のマークは全て同じだぞ。


 ☆イベント中のアイテム使用について

 ⇒下記アイテムのみ配布され使用が可能だぞ!

 ⇒HPポーション×10

 ⇒MPポーション×10



(討伐獲得ポイント一覧)


 ▷プレイヤー:1ポイント

 ▷小型モンスター:1ポイント

 ▷中型モンスター:5ポイント

 ▷大型モンスター:10ポイント

 ▷超大型モンスター:100ポイント———————————————————————



 バトルロイヤル?

 要するに個人戦で、ポイント獲得の競い合いってことだよね?!


「ふーん。モンスターまで出てくるなんて、すっごい大乱闘になりそうね」


 隣でイベント内容の確認をしているリサリサが、独り言のように呟く。


 少し疑問に思ったことがあったので、聞いてみることにした。


「ねえ、リサリサ?」

「どうしたの?」

「この下にある獲得ポイントの表だと、モンスターを倒した方が貰えるってことだよね?」

「そうだね。モンスターの方が還元率は高いね」


 じゃあいつもみたいにモンスター倒すだけで、いいかも!

 これなら私にもチャンスあるよね。


 そんな風に楽観的に考えていたのを悟られたようで、リサリサから注意を受けてしまった。


「ルミナ、モンスターばかり狙うのは良くないよ。その間に他のプレイヤーに狙われたら終わりだから……」

「あっ……!」

「プレイヤーの数の方が圧倒的に多いから、油断してるとすぐに倒されちゃうよ」


 うぅ……。

 ……となると、やっぱりプレイヤーとの直接対決は、避けられないってことだよね。


 最初は様子見で身を潜めておくのも手かな……。


 色々と作戦を練ってみるけど、初めてのイベントで想像がつかなくて考えがまとまらない。


「いいなぁ。リサリサは……」


 私が『いいなぁ』と言ったのは、装備のことだった。


 中型モンスターからのレアドロップらしく、まさしく【死霊術師ネクロマンサー】らしいクールさと魔女っ子な雰囲気を兼ね備えた、かっこかわいい装備になっていた。


「えっへん。この装備いいでしょ? 性能もそこそこなんだよね」


 う、ううううらやましくなんて………。


 強がってみるものの、ものすごく羨ましい。

 私なんて、ずーっと初心者装備のままなんだから……。


「とりあえず、明日のイベントではお互いに10位以内には入れたらいいね。負けないからね、ルミナ!」

「お、お手柔らかに〜……」


 ——イベント開始まで、後12時間。


 小学生が遠足の前日に興奮と緊張で高鳴る鼓動を感じながらイベント当日を迎えるのであった。

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