第13話 『ルミナの決意』
レベル2250?!
お兄ちゃん……こんな時に冗談言ってるのかな?
桁が明らかにおかしいので、さすがの私も冗談かと勘繰ってしまう。
ただ、お兄ちゃんの声の張り具合はハッタリではなく、本当のことを話しているようにしか聞こえなかった。
「ち、ちちちちちちくしょぉぉぉぉぉ!!!! この俺様が負けてたまるかぁぁぁぁぁぁ!!!」
初心者狩りの兄貴は全力を込めた一撃で、刀を振り下ろしてきた。
お兄ちゃんは私を庇いながら応戦するように、一歩前に出る。
本来であれば、振り下ろされた刀を良く見て交わし、反撃に出るのが普通だ。
だが、お兄ちゃんのスピードが圧倒的に速すぎるため、刀が振り下ろされるよりも前に、兄貴の首元に回し蹴りがクリティカルヒットした。
兄貴は声を上げることもなく、見事に綺麗な弧を描き、数十メートル先に音もなく崩れ落ちた。
「これは俺の大事な妹のことを、おっぱい女呼ばわりした分な」
ひゃぁぁ……お兄ちゃんさすがぁ!
それより今の聞いた?!
大事な妹だってッ!!
お兄ちゃんの一言に嬉しくて、ついニヤニヤしてしまう。
「ルミナ怪我は——その様子じゃ大丈夫そうだな」
「ふぇ?! ……うん。お兄ちゃんが来てくれたから大丈夫だったよ」
私のだらしなく緩みきった笑顔を見て、お兄ちゃんも無事であることを悟ったらしい。
後方ではアルマさんたちが、不思議そうに私たちを見ており、タイミングを見ながら話しかけてきた。
「あ、あの……ナイトロードさんなんですか? ……というより深夜くんだよね?」
えっ?!
アルマさん、どうしてお兄ちゃんの本名知ってるの?!
「まぁ、そうだけど? 君たちは?」
「私たち、同じ大学で同じ講義を受けてるんだよ?」
「うーん……。リモートがほとんどだし、記憶に無いな」
「そ、そうだよね……」
お兄ちゃんは覚えてないって言ってるけど、同じ大学の人に会えて何だか楽しそう。
大学の話されても、私分からないもん……ぷんっ。
アルマさんばかり、お兄ちゃんと話してズルいので、私も会話に割り込むように入ったみた。
「あ、あのねお兄ちゃん。アルマさんたちは、私と一緒にパーティー組んでくれてたの」
「そうだったのか!」
「えぇ、ちょっと待って! 深夜くんがルミナちゃんのおおおお、お兄さん?!」
「あぁ、ルミナは俺の実の妹だよ」
「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」
これにはアルマさんだけでなく、キャべさん、ディル、ゴンゴンさんまで驚いていた。
アルマさんが私の肩をちょんちょんと触ると、耳元でコッソリと話し始めた。
「もしかして、ルミナちゃんが私のオーダーメイド作って欲しそうにしてた相手って……深夜く……じゃくて、ナイトロードさんなの?」
ちょっ!
そんな耳元ではっきりと言われたら、恥ずかしいよッ……。
私は顔が火照るのを感じながら、コクコクと静かに首を縦に振った。
「んふふふ。そうだったんだ! これは最高傑作に挑戦しなきゃだ。大学でも人気だから競争率高いけど、私はルミナちゃんのこと応援してるね」
アルマさんは、屈託のない笑顔でそう告げてくれた。
やっぱり、お兄ちゃん大学でも人気なんだ。
もし、お兄ちゃんに彼女さんができなら……嬉しいことなんだろうけど……私はいやだな。
アルマさんたちとフレンド登録を済ませて街に戻りログアウトするまでの間、ひたすらお兄ちゃんの競争率のことだけが、心に引っかかってしまっていた。
***
ログアウトした後、私は悶々とした気持ちのまま真っ直ぐお兄ちゃんの部屋に向かった。
———コンコンッ!
「お兄ちゃん……」
「ん、るみな? ……部屋入ってきても大丈夫だよ」
お兄ちゃんから返事をもらえたので、扉を開く。
いつもコッソリ覗いたりしてるんだけどね……。
「さっきぶり……ってのも変かな。ソファーに座っていいよ」
「お兄ちゃんの……」
「ん、何っ?」
「お兄ちゃんの隣がいい……」
「ほぇ? ……ま、まぁいいけど。じゃあベッドにおいで」
自分でもわがままを言ってる自覚はある。
でもお兄ちゃんが誰かに盗られたらどうしよう……と、たまらなく不安に感じてしまっていた。
今は少しでも、お兄ちゃんの近くにいたいよ……。
「えっと……さっきの初心者狩りの件なんだけど、ボスは未だ逃走中。多分この感じだと、捕まえるの厳しいだろうな」
「うん……」
「けど、大丈夫。また出てきても兄ちゃんが全部倒してみせるからさ」
「うん……」
距離がいつもより近い分、お互いに意識してしまっているせいか会話が一旦途切れてしまい、数秒間沈黙になってしまう。
ハッ……。
私さっきから『うん……』しか言ってない。
何か話さなきゃ。
お兄ちゃんを飽きさせちゃダメだよ……。
とりあえず聞こうと思っていたことを、口にすることにした。
「えっと、お兄ちゃんのフレンドさんで……【
「装備でも造って欲しいのか? 兄ちゃんもあいつに造ってもらったんだよな。腕はいいんだけど、頑固でシングルランカーにしか造らないんだよな」
シングルランカー?
ナニソレ……?
疑問に思ったので、尋ねてみる。
「シングルランカーってのは、イベントとかでランキング一桁に入ってるプレイヤーのことだよ」
「要するにすごい人たちってことね……」
初心者で名前すらほぼ知られていない私が、ランキングの上位に名前を連ねるのは難しい。
ただ、お兄ちゃんは閃いたように話を続けた。
「1つだけシングルランカーになる方法があるよ。ログアウトする前に通知が来てたんだよね!」
「通知……?」
「そう。第1回イベント開催の通知だよ。3日後に開催されるらしいけどね」
み、みっかご………。
準備期間もうないよ……?!
「まぁ最初のイベントだし、ルミナはトップ100までに入れたらすごいと思うよ」
ううん、それじゃダメッ!
お兄ちゃんに認めてもらうには、もっと上を目指さなきゃ。
そう考えた私は、ある提案をしてみることにした。
「あのね、お兄ちゃん。もし、私がイベントでランキングトップ3位以内に入れたら……何でもお願い聞いてくれる?」
「トップ3位以内? ……1位は兄ちゃんが取るから、2位か3位になるってことだぞ?」
お兄ちゃんは口で無理と言わなかったが、表情では明らかに無謀すぎると語っていた。
「うん。頑張って狙うから。だからその時は———」
「分かったよ。るみなが何をお願いしようとしてるのか分からないけど、その時は何でもお願い事を聞くよ」
「絶対に、約束だよっ?!」
私はお兄ちゃんと指切りげんまんをして、約束を交わした。
3位以内になれたら、お兄ちゃんとリアルでデートしてもらうんだもん!
妹としてじゃなくて、一人の女の子として見て欲しいから……頑張るよっ!
私は胸の中で固く決意を決めて、第1回イベントに臨むのであった。
———————————————————————
【USO攻略兼雑談掲示板】
701:彼女募集中の冒険者
『聞いたか? 初心者狩りのアジト壊滅したって』
702:ゴリザエモンの息子
『まじか?!』
703:さすらいの旅人さん
『500人規模だったらしいのに、さすがトップランカーさんたちですよね』
704:彼女募集中の冒険者
『だよな。さすがトップランカーたち』
705:魔法少女☆リコピン
『アジトを壊滅させたのは、私たちではないですわ』
706:ゴリザエモンの息子
『え、リコピンさん?! 本物か?』
707:さすらいの旅人さん
『【
708:魔法少女☆リコピン
『そのリコピンですわ』
709:ゴリザエモンの息子
『すげぇ! 有名人キタコレ』
710:彼女募集中の冒険者
『いや、ちょっと待てよ。それよりリコピンさんの発言気になる』
711:魔法少女☆リコピン
『文字通りの意味ですの。私たちトップランカーは、逃げたボスの跡取りを追っていただけですわ』
712:ゴリザエモンの息子
『え? じゃあどの集団が壊滅させたんだ?』
713:さすらいの旅人さん
『ま、まさか……』
714:いちごみるく
『ナイトロード様♡』
715:彼女募集中の冒険者
『1人で? さすがに無理でしょ』
716:魔法少女☆リコピン
『そのまさかですわ。ナイトロードさん1人で500人以上の軍団を壊滅させたの』
717:ゴリザエモンの息子
『まじかよ……化け物すぎ』
718:さすらいの旅人さん
『完全に規格外すぎますね……』
719:いちごみるく
『ナイトロード様♡ 素敵すぎます♡』
720:彼女募集中の冒険者
『いちごさん、ナイトロードのこと好きすぎ』
721:さすらいの旅人さん
『これはナイトロードさんが第1回イベントも優勝ですかね』
722:ゴリザエモンの息子
『2位はリコピンさんかな』
723:魔法少女☆リコピン
『私も優勝を目指しますけど、他にも強者はいますの』
724:いちごみるく
『ナイトロード様圧勝♡ 他のランカーさんは拮抗してますね』
725:魔法少女☆リコピン
『誰が討伐したのか分かりません……。ただ、草原エリアのシークレットボスが討伐されていたのです』
726:ゴリザエモンの息子
『シークレットボス?』
727:さすらいの旅人さん
『それって超絶難関の隠しコンテンツじゃないですか』
728:いちごみるく
『きっとナイトロード様♡』
729:魔法少女☆リコピン
『いえ、恐らく彼ではないですわ。別に強者が潜んでいますの』
730:彼女募集中の冒険者
『わいは応援ルミナ一択だわ』
———————————————————————
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます