第11話 『シークレットボス攻略』
アルマさん率いるパーティーに加入した私は、シークレットボス『クリスタルゴーレム』の潜む古代遺跡のような場所を訪れていた。
入り口はびっくり!
まさかの草原エリアのとある地面に、石の階段が隠されていたのだ。
「こんな所、よく見つけましたね?」
「これはおれっちが見つけたんだぜ?」
「……そ、そうなんですね」
【
奥に進むと段違いの強さの『クリスタルゴーレム』がおり、逃げ戻ってきたとのことだった。
「強いって、どう強いんですか?」
ゴーレムはチュートリアルにも出てこなかったので、私も対処法が全く分からない。
暗がりの遺跡を進み『クリスタルゴーレム』のいる奥の部屋に辿り着くまでに、聞ける情報は聞いておこうと思った。
「そうね……」
アルマさんが口を開く。
「ダメージを寄せ付けない圧倒的な防御力、そして強力な物理攻撃に加え、目だと思われる玉からはビームが放たれる遠距離攻撃……そしてスピードもかなり速いわ」
「それ……本当にヤバいですよッ!」
話を聞く限り、どうやら弱点らしい弱点は無さそうだった。
「ええ、本当に強いの。そして着いたわ、ここよ。……あれが『クリスタルゴーレム』よ」
アルマさんが指差す先には30メートル以上はある巨体で、キラキラとダイヤモンドでできた胴体が光りを放つゴーレムだった。
——ご、ごくっ……。
目には見えない圧力の凄さに、唾を飲み込む。
明らかにその存在は、今まで見てきたどのモンスターよりも異質すぎる力を放っていた。
「とりあえず指示は私が出すからね。キャベは攻撃を盾で防ぐこと……その間にゴンゴンは罠を準備して、ディルは炎の魔法で攻撃よ」
「おう!!」
「ガッテンでごんす」
「任せな!」
全員が一斉に武器を構え、戦闘の準備に入る。
「ルミナちゃんは使えるスキルで、タイミングを見て支援をお願い!」
「は、はい!」
私も魔法剣を手に握り、支援に徹するため一番後方へと移動した。
今回はパーティー戦の動き方の勉強だから、直接攻撃は控えなきゃ……。
私の役割はあくまでサポート……サポートだよ!!
自分にそう言い聞かせながら、気持ちを落ち着かせるため深呼吸を一回。
「準備は大丈夫かな、ルミナちゃん?」
「はい! ……いきましょう!」
男性陣三人も首を縦に振り、私たちは『クリスタルゴーレム』との戦闘を開始した。
***
まずは不意を突くかのように、キャベさんが近付くと、右手に持った剣で『クリスタルゴーレム』に攻撃する。
「チッ……。硬いな」
ダイヤモンドの巨体に剣は弾き返され、斬撃によるダメージは全く通っていなさそうだった。
ただ目的であるヘイトはしっかりと稼げたようで、ゴーレムはキャベさんの方に顔を向けながら、大きな胴体を起こした。
「いや、ないっすだぜ。ここでおれっちの炎魔法を詠唱!」
すかさずディルが魔法の詠唱に入る。
【
何語か分からない謎の呪文を2秒ほど唱えると、ディルはそのまま炎の玉を生成し、ゴーレムに放った。
「いっけぇぇ!!!」
紅く煌めく炎は一直線に放出され命中し、ゴーレムを燃やし尽くすかのように、業火の火柱を上げた。
「いい攻撃どん。おいどんの罠も完成したでごわすよ。『粘着罠』だから動きを止める効果があるでごわすよ」
ゴンゴンさんは、いつの間にかゴーレムの背後で罠を仕込んでいたらしい。
炎の魔法攻撃で数歩退くゴーレムの足に、見事『粘着罠』が作動していた。
「よし、これであいつはしばらく身動きが取れないわ! みんな一斉に攻撃よ!」
ここでアルマさんの掛け声が入り、男性三人が追い討ちの一斉攻撃を仕掛けた。
す、すごい……。
これがパーティー戦なんだ!
的確な指示とリズムの取れた無駄のない連携に、そこから繰り出される手数の多い攻撃。
……同じ初心者とは思えない動きに、感動すら覚える。
「さて、これでどこまで敵のHPを削り切れるかが勝負ね」
アルマさんはそう話しながら、ゴーレムの状態を確認し冷や汗をかいている。
かなりの追い討ちをかけれているはずだったが、ゴーレムの動きは鈍ることなく胴体を起こし、足元の罠を破壊した。
無言のゴーレムは、静かにこちらを見据えると大きな拳で直接攻撃を始めた。
キャベさんが私たちを守るため、盾で受け止めてくれるも、一撃だけで手が痺れてしまいそうなほどの反動を受けているように見える。
「グッ……グゥゥゥ……。攻撃が……重すぎるぞ!!!」
攻撃を受け止めきれず、キャベさんの盾が弾かれてしまい、ガラ空き状態のところにゴーレムの攻撃が繰り出される。
ま、まずいよこれッ!!
「ジョブスキル——《パラライズ・ショック》」
私はすかさずゴーレムに対して麻痺を付与し、キャベさんへの攻撃をすんでのところで止めた。
「ナイスサポートだよ、ルミナちゃん!」
「い、今のは付与術か? 助かったぞ!」
アルマさんとキャベさんに褒めてもらえ、少し嬉しくなる、
よしっ!
この調子で私もどんどんサポートしちゃうよ!
ゴーレムの麻痺時間は5秒。
麻痺が解けると同時に、続けてエクストラスキル《エンハンス・スロウフィールド》を使用する。
これでゴーレムのスピードは半減。
パーティーメンバーがダメージを与える隙が生まれた。
「ちぇ、悔しいけどナイスすぎるぜ、ルミナっち」
「おかげで、おいどんの『痺れ罠』の準備も整ったでごわす」
「ルミナちゃん、さすがだわ!」
「私の付与術はあと40秒程で効力がなくなります!」
「分かったわ。その後はゴンゴンの準備してくれた『痺れ罠』へ誘導しましょう」
『クリスタルゴーレム』を弱らせ、完全に一方的な攻撃を繰り返す。
いい感じだよね。
これなら回復職業がいなくても楽勝かも……!
私がこう思ったせいか、ここでフラグが立ってしまった。
『クリスタルゴーレム』の目にも見える、頭に埋め込まれた紅の宝玉が怪しげに光を放ち始める。
「ま、まずいわ!! 遠距離攻撃がく———」
アルマさんが言い終わるより先に、紅に光るビーム光線が一直線に放出された。
「やべ、避けれ——ガハッ!!」
最後まで盾で受け切るか悩んでいたキャベさんが、避けきれずに光線に当たってしまった。
「だ……大丈夫……。まだぎりぎり何とか……」
ギリギリ急所を避けれたからか、HP全損は免れたみたいだが、致命傷であることに変わりはなかった。
『クリスタルゴーレム』は、パーティー戦の要であるキャベさんを徹底的に潰しておきたいらしく、トドメを刺すために全身してきた。
私を含め、全員が回避行動を取ったせいでキャベさんとの距離が遠すぎる。
このままじゃ、キャベさんがやられちゃう……。
私は無我夢中で、キャベさんに振りかざされたゴーレムの巨大な右腕目掛けて、魔法剣を投げつけた。
私の予想では、右腕が完全に振り下ろされる前に魔法剣が命中し、上手く腕を弾けると考えていた。
ただ……予想は少し外れることとなった。
魔法剣は見事に右腕に命中したが、腕を弾くことなく、そのまま文字通り粉砕してしまった。
どうやら、魔法剣を投げたことで攻撃の判定が物理攻撃になっていたらしい。
「「「えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」」
みんなの驚いた声が響く中、私はまだゴーレムを見据えていた。
ゴーレムは右腕を失ったにも関わらず、今度は左腕でキャベさんを捉えていたからだ。
サポートに徹するのはここまで!
もう、ここで私が終わらせるしかないよね。
キャベさんを———みんなを守らなきゃ!!
ただ、距離が遠すぎる。
武器も投げてしまったからもう手元にはない。
せめて一瞬だけでも、ゴーレムの所まで移動できたらいいのにっ……。
パーティーメンバーを欠けさせないために、心の底からそう願った———その時。
私の目の前に、素早くポップが表示された。
———————————————————————
『新スキルを会得に成功しました』
『ユニークスキル《ムーブポイント》を使用しますか?』
☆《ムーブポイント》
⇒視認したポイントに一瞬で移動することができる。
【▶︎YES / NO】———————————————————————
本当、いつもギリギリで会得できるんだから……。
でも、これで届くよッ!!
「ユニークスキル——《ムーブポイント》!!」
『クリスタルゴーレム』の頭上を移動ポイントに設定し、スキルを使用すると瞬間移動した。
武器は投げちゃったからないけど……。
……でも、身体の全てがダイヤモンドで出来てるなら、きっと打撃……パンチには弱いはず!
私はそう考えて、右手に力を込めてそのままゴーレムに叩きつけた。
もちろんゴーレムも反射的に左腕で、私の攻撃を防ぐべく受け止める。
「うっ……うぅ、くぅ……!!」
正直これまでのこともあり、簡単に押し切れるかもと思っていた。
ただ、どうやら『クリスタルゴーレム』は討伐される危機を感知すると、かなり強力な防御スキルが発動する仕組みになっていたらしい。
私のパンチを完全に受け止めると、少しずつ押し返してきた。
「嘘でしょ……力強すぎるよ……」
このままじゃ、完全に押し返されちゃう。
でも……私、初めてで頑張れてたよね?
もしお兄ちゃんが見てくれてたら、褒めてもらえたかな?
私が一人諦めモードの中、アルマさんはゴーレムに駆け寄り、何の役にも立たない裁縫道具の針で攻撃をし始めた。
「押し切っちゃってルミナちゃん! 負けないで!」
少し苦手なディルも炎魔法で援護してくれる。
「ルミナっち、踏ん張りどころだぞ!」
直接戦闘が苦手なゴンゴンさんも、曲刀で応戦してくれた。
「おいどんたちが、最後の後押しをするでごわすよ」
そして……深傷を負いHP残量が少ししかないキャベさんも、盾を放棄し剣で攻撃に加わった。
「負けんなよ! 拳突き出して、トドメをさしてやれ!」
そう……アルマさんたちは誰一人として諦めていなかった。
そしてみんなは、私に想いを託してくれてるんだ。
私の馬鹿……。
ここで諦めるなんて絶対にダメッ。
私もお兄ちゃんみたいに——なるんだ!!!
———————————————————————
『ユニークスキル《ドラゴンフォース》を使用しますか?』
【▶︎YES / NO】———————————————————————
そうだ……これしかないよ!
「YESで! ——《ドラゴンフォース》発動!」
ステータスが一桁以外のものを、全て二倍にするスキル!
私の【STR:29,200】の攻撃見せてあげるっ!
倍増された私の拳は、勢いが加速し再びゴーレムを圧倒し始める。
頭上から攻撃を受けているゴーレムの踏ん張る足元は、地面がめり込みひび割れていた。
——あと、一押しッ!!!
「ルミナちゃん!」
「ルミナっち!」
「ルミナさん!」
「ルミナッ!」
「「「「いけぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」
みんなの想いを力に変えて、最後の力を………ッ!
「ルミナぁぁぁ……ぱぁぁぁんんんち!!!!」
———————————————————————
『オリジナルスキル《ルミナ・パンチ》を会得しました』
☆《ルミナ・パンチ》
⇒パーティー加入時のみ発動可能スキル。
⇒自分を含めたパーティーメンバーの数、攻撃している分野の数値を倍増させる。
⇒使用後HPとMPを除く全てのステータスが一時的に半減する。
『《ルミナ・パンチ》が発動されました』———————————————————————
《ルミナ・パンチ》が発動した私の拳の周りには、虹色に輝くオーラが纏われる。
私一人が放った拳は、パーティーメンバー全員の想いがこもったものに変わり、物理攻撃力が【STR:146,000】の拳となった。
先程までの苦戦が嘘のように『クリスタルゴーレム』の防御スキルを安易と破り、私の拳が触れると、そのまま左腕も頭も胴体さえも完全に粉々に砕け散った。
『シークレットボス『クリスタルゴーレム』の討伐に成功しました』
『この戦闘での獲得経験値はございません』
『シークレットボスのラストアタックボーナスにより、ステータスポイントを獲得しました』
『ステータスポイント獲得時に《グイデの恩恵》が発動しました』
『オリジナル付与スキル《モード:ゴーレムマスター》を会得しました』
『クリスタルの魔光石の塊×1を入手しました』
———————————————————————
【ステータス】
ルミナ[Level:23]
HP:560 MP:1120
▷STR:【14,600】▷VIT:【1】▷INT:【1】
▷DEX:【1】▷AGI:【1】▷CRI:【1】
【保有ステータスポイント】
▷【10,000】———————————————————————
———————————————————————
【新スキル詳細】
☆《ムーブポイント》【ユニークスキル】
⇒視認したポイントに一瞬で移動することができる。
⇒使用可能回数:5回/ 1日
☆《モード:ゴーレムマスター》【ルミナ専用スキル】
⇒自身にゴーレムの身体を一時的に付与させる。
⇒打撃攻撃に弱く2倍換算される。ただし斬撃によるダメージを1に、魔法攻撃によるダメージを0にすることができる。
⇒移動速度は最速で徒歩の速度となる。
⇒効果時間:10分or自分で解除
⇒再使用時間:1回 / 6時間
▷《ブリリアントクリスタル》
⇒ゴーレムマスター使用時の専用スキル
⇒効果時間内に受けたダメージを全て8倍にして反射させるスキル。
⇒効果時間:10秒
⇒再使用時間:2回 / モード発動中———————————————————————
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます